生配信をすっぽかしそうになった、たわわ系Vtuberを助けたら、なんか懐かれたので一緒に暮らします。下心? あります!
アサガキタ
第1話 私、人気Vチューバーです!
◇ショコランティーナ目線◇
「いや、おかしいだろ? 実家ってのはね私んちでもあるんだよ! なに、うるさくて寝れないって? いやいや、配信は夜が勝負だからね? あと朝配信! 編集とか夜しか集中出来んし! 朝は朝で忙しい訳よ! 私の話なんて何にも聞かないで『迷惑系配信者は出てけ』よ! これだからリアル兄貴は心がミジンコで困るわぁ」
いやしかし、困った。私は栗色のショートツインテールを左右に揺らして現実逃避した。
今夜21時から生配信を告知してる。ノートPCとかマイクとか最低限生配信に必要な物は持ち出したものの、肝心のネット環境がない。
ビジネスホテルとかに問い合わせたものの、配信したいと言った途端、お断りされた。丁重に。
世の配信者共は何をやらかしてきたんだ、全く。こちとらインナーなVチューバー。世間に迷惑をかけるようなことは……そんなにはしない。
ほんのちょっとうるさいだけ。とはいえ、どこでもいいというわけにはいかない。ネカフェはネット環境はあるだろうけど、完全に身バレするだろうし……
とりあえずの危機は今夜の生配信だけど、いつまでもノートPCじゃきつい。
編集とかしなきゃだし。不本意だけどミジンコ兄貴に謝るか?
いや、流石にそんなことしたら女が廃るってもんよ!
何せあちきったら売れっ子Vチューバー。財力に物を言わせてこの際どっかに部屋借りるか?
いや待てよ、この間発注したMVで今月分のお給料吹っ飛ばないか? きっと請求書ヤバいだろぉ……
公園のベンチ。とっぷりと日が沈んだ誰もいない公園で私は途方に暮れながらこんな世の中へ腹いせに小石を蹴った。いや、世の中関係ないか。
「いてっ!」
あ……っ!
ついてないなぁ、勢いよく転がった小石が公園の入口を飛び越して帰宅を急ぐサラリーマンらしい男性のスネに直撃した。
やっちまったなぁ、おい。これもミジンコ系兄貴が悪いんだからなぁ!
ったくよ! とはいえ、この状況はどう控えめにみても私が悪い。
通報とかされたら、中の人身ばれしかねない。明日のネットニュースを賑わしかねない。
そう、私は人気Vチューバーなんだから。こんなことで事務所に迷惑掛けれない。いや、こんなことが明るみに出たら後輩共にネタにされつくす。
ここは低姿勢で平に謝って、最悪スパチャ――じゃない、諭吉さんをひとり召喚して水に流して貰おう。
私は小走りで冴えない風――もとい、仕事に疲れた感じで足を擦るサラリーマンに駆け寄った。
「ごめんなさいショコ! 悪気はないショコ! 許してほしいショコ!」
「――語尾がショコ?」
あ……やっちまった!
ついだ、ついいつもの設定――もとい! えっといつもの語尾を連呼してしまった! なにせ私は永遠の17歳ショコラの国からやってきたショコラ国第一皇女の来栖・ショコランティーナという設定――じゃない!
そういう肩書? しかし、しかし、今は中の人。
つまりガワじゃない、えっとほら、中の人ダイレクトアタック状態なんだから、民草――じゃない、国民じゃない、えっと一般の方々にはいわゆる『お忍び』状態なんだから庶民の振りをしないとなのだ。
「えっと、そのちょ、ショコっとムシャクシャしてまして、その……蹴っちゃいました、ごめんなさい!」
ぺこりん! とばかりに頭をさげた。
サラリーマン風とはいえ怖いお兄さんかも知れない。
ここはあくまでも低姿勢で。そうじゃなくても、なんかの間違いで骨折なんかしてたら、マジもんでシャレになんない。
Vチューバーとはいえ社会常識はある感じの私なのだ。スネに小石が直撃。国民の痛みは皇女である私の痛みでもあるのです。
場所が場所だ。いわゆる弁慶の泣き所。
サラリーマンのお兄さんはしばらくしゃがみ込んだが「だ、大丈夫です」と両手でしゃがんだまま、大丈夫をアピールしてくれる。
流石に「それはよかったショコ! 私、用事があるから行くショコよ!」とは言えねぇ……健気な国民を置いては行けない。
「あの、病院とか行きますか? もし、骨とか折れてたら……」
何とか立ち上がったサラリーマンのお兄さんに声をかけた。苦い顔をしてる。いや、これってそこそこ痛いんだろ、やっぱし。
「いや、その、大丈夫です、はい。その、えっと急がないとなんで、病院とかは、いいです。その青タンが出来る程度だと、はい」
「その……歩けますか? お急ぎならせめて、タクシーでも」
「いえ、その家すぐそこなんで――あっ、その今のは駄洒落とかじゃないです」
照れくさそうに笑うその顔は思ってたより、年齢が若い。30代前半くらいか?
あっ、もしかしたら奥さんに私といるの見られたらマズイとか?
それある!
でもでも、怪我させたのは私だし、ここはちゃんと奥さんに話せばわかる筈!
「その、家まで送ります。奥さまにはちゃんと経緯をご説明しますので」
そう言うとサラリーマン風のお兄さんが固まった。
固まりながら照れ臭そうに「ごめん、結婚してないんで」と謝られた。何やってんだ、私は。それなら、別に私といても、誰に咎められる訳でもない。
ひとまず、自宅が近いというなら送るのが人としての道だろ。
「あの、ご迷惑じゃなければ送らせてください」
「えっと、その大丈夫ですよ、ホントに」
「でも、もし後で何かあったら大変なんで、その連絡先をお伝えしたいです! だからご自宅まで」
このままでは押し問答になると思ったお兄さんは諦めたように、了承してくれた。これが私とお兄さんの出会いとなるわけだ。
□□□作者より□□□
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