第2話 記憶の影

香織と涼介は、能古島の事件関係者の心のケアを続けていた。被害者の妹、佐々木真由美は姉を失った悲しみから立ち直れずにおり、加害者の父親である田中誠は息子の罪に苦しんでいた。彼らの苦しみを少しでも和らげるために、香織と涼介は懸命に取り組んでいた。


ある日、香織は真由美と再び会うことになった。真由美は、姉の死後、自分の生活が全く変わってしまったと話していた。


「香織さん、毎日が辛いんです。姉がいなくなってから、何も手につかなくて…」と真由美は涙を流しながら言った。


「真由美さん、無理をしないでください。大切なのは、自分の気持ちに正直になることです。泣きたいときは泣いて、少しずつでいいんです」と香織は優しく答えた。


一方、涼介は田中誠と会っていた。誠は息子の健二が起こした事件に対して、どう向き合えばいいのか分からずに苦しんでいた。


「涼介さん、息子の罪をどうやって受け入れればいいんでしょうか。彼はもう二度と戻ってこない。でも、私たち家族はどうすればいいんですか?」と誠は問いかけた。


「誠さん、まずはご自身の気持ちを整理することが大切です。息子さんの罪は許されるものではありませんが、彼が償いをするためにはあなたのサポートが必要です」と涼介は真剣な表情で答えた。


その日の夕方、香織と涼介は島の診療所を訪れた。そこには、事件関係者のカウンセリングを行うために派遣された精神科医、黒川翔太が待っていた。黒川は温かい笑顔で二人を迎え入れた。


「三田村さん、藤田さん、初めまして。私は黒川翔太です。今日は、事件関係者の心のケアを行うために来ました」と黒川は自己紹介をした。


「黒川先生、ありがとうございます。真由美さんと誠さんのカウンセリングをお願いできますか?」と香織は依頼した。


「もちろんです。できる限りのことをします」と黒川は力強く答えた。


真由美は、黒川の診察室に入り、カウンセリングを受けることになった。黒川は彼女に優しく語りかけ、少しずつ心を開かせるよう努めた。


「真由美さん、あなたの感じている悲しみや怒り、すべてが自然なことです。無理に抑え込む必要はありません」と黒川は静かに言った。


「でも、姉のいない生活がこんなに辛いなんて思いませんでした。どうやって前に進めばいいのか分からないんです」と真由美は涙を流した。


「一歩一歩でいいんです。自分のペースで、少しずつ前に進むことが大切です。私はあなたの支えになります」と黒川は励ました。


一方、誠もまた黒川のカウンセリングを受けることになった。彼は息子の罪に対する罪悪感と向き合いながら、自分自身を見つめ直していた。


「誠さん、あなたが感じている苦しみは、息子さんの罪を認識する上で大切なプロセスです。しかし、それと同時に、自分自身を許すことも必要です」と黒川は誠に語りかけた。


「息子の行動が私の育て方に問題があったのかと考えてしまいます。彼をもっと違う道に導けたのではないかと…」と誠は悔しさをにじませた。


「後悔は誰にでもありますが、重要なのは今後どうするかです。あなたが息子さんを支え、彼が更生するための手助けをすることが、今できる最善の方法です」と黒川は力強く答えた。


香織と涼介は、黒川のカウンセリングが効果を発揮し始めていることに安心しながらも、まだまだ続く課題に向き合う決意を新たにした。能古島の静かな風景の中で、彼らは新たな希望の光を見つけようとしていた。


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香織と涼介は、それぞれの家族が抱える問題に直面しながら、彼らの再生を手助けする決意を新たにし続けた。能古島の静かな風景の中で、彼らは新たな希望の光を見つけようとしていた。

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