第3話 奇妙な事件の始まり

エリザベスは公務のために城に戻り、香織はアレクシスとその仲間たちと共に宝物庫へ向かった。宝物庫は厳重な警備が施されている場所で、王国の歴史的な遺物や宝物が保管されている。


「ここが宝物庫です。事件が発生したのは三日前の夜です。」


アレクシスは宝物庫の扉を開けながら説明した。香織はその言葉を聞きながら、慎重に中に入った。


「この場所がどうやって破られたのか、まずはその手がかりを探しましょう。」


香織は宝物庫の中を見渡しながら、細かいところまで観察を始めた。棚には数々の宝物が並び、その中には空のケースもあった。


「ここにあったのは何ですか?」


香織は空のケースを指差しながら尋ねた。アレクシスは少し考え込んでから答えた。


「それは『勇者の盾』と呼ばれる遺物です。魔王討伐の象徴として保管されていました。」


香織は頷きながら、さらに調査を進めた。彼女は床や壁、そして周囲の物に注意を払いながら手がかりを探した。


「ここに微かな傷があります。この傷は何かが強引に開けられた痕跡かもしれません。」


彼女は壁の一部を指差しながら言った。アレクシスと仲間たちはその傷を見つめながら驚いた表情を浮かべた。


「そんな痕が……。誰がこんなことを?」


セリスが疑念を抱きながら言った。香織はさらに細かく調査を続け、魔法の結界がどのように破られたのかを推測し始めた。


「この結界は非常に強力なものです。普通の人間には破ることはできません。ですが……」


香織は考え込みながら続けた。


「この傷と周囲の魔法の残留物を見てください。ここには非常に強力な魔法が使われた痕跡があります。結界を破ったのは相当な力を持つ者です。」


レオナは少し緊張しながら言った。


「それなら、誰かが魔法を使って結界を破ったということですか?」


香織は頷いた。


「その可能性が高いです。しかし、その人物が誰か、そしてなぜこの盾を盗んだのかを明らかにする必要があります。」


彼女はさらに宝物庫の中を調べ、微細な手がかりを見つけることに集中した。すると、床に小さな光る石の破片が落ちているのを見つけた。


「これは……魔法の触媒の一部かもしれません。この石が結界を破るために使われた可能性があります。」


香織はその石の破片を慎重に拾い上げ、詳しく調べた。


「この石は非常に高価なものです。普通の人間が手に入れることは難しい。誰かが計画的にこの盗難を行ったのかもしれません。」


ダリウスは驚いた表情で香織に言った。


「あなたは本当に鋭いですね、香織さん。これだけの手がかりを短時間で見つけるなんて。」


香織は微笑みながら答えた。


「これが探偵の仕事です。まだ手がかりは少ないですが、確実に真相に近づいています。」


その時、アレクシスが香織に向かって言った。


「香織さん、あなたの推理は素晴らしい。しかし、この事件を解決するためには、もっと多くの情報が必要です。私たちも全力で協力します。」


香織は頷きながら言った。


「ありがとうございます。皆さんの協力があれば、この事件を解決することができるでしょう。」


彼女たちは宝物庫を出て、次の手がかりを探すために王宮内の調査を続けることにした。


「次は、事件の当夜に宝物庫の周辺で何か不審なことがなかったか、目撃者を探してみましょう。」


香織の指示に従い、アレクシスとその仲間たちは王宮内で聞き込みを始めた。彼らの協力によって、香織の調査はさらに進展し、真相に近づいていく。


こうして、香織の異世界での本格的な調査が始まった。彼女の鋭い観察力と推理力が、この世界でどのように発揮されるのか、期待が高まる。

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