横取り恋愛‼️初恋の人である黒髪ポニテの清楚同級生が彼氏持ちだけど、相手の男が二股していたのでNTRることに決めました

ジェネビーバー

第1話 二股現場を目撃してしまった話

「二股じゃねぇか!!」


 照りつける夏の日差しに歯向かうように俺こと稲瀬咲いなせ さくは思わず声を荒げてしまった。


 高校に入り初めての夏休み。長期休みも8月初週に差し掛かり、俺は隣町へと少し遠出をしていた。

理由は人気マンガの最新刊が発売されたのだが、近所の本屋で売り切れだったので、大型書店がある隣町へと訪れていたわけだ。


 ここまでなら平穏そのもの。お目当ての本をゲットして、駅へと向かおうとした途中。

偶然にも俺の瞳はとある同級生の後ろ姿を映してしまったのだ。


「あいつ……堀道だよな?」


 目を細めて数メートル先に映るクラスメイトの姿を改めて確認する。


 堀道 獅音ほりみち れおん


 学校の同じクラスに所属する同級生の一人。

顔立ちは二重にツリ目。

外国人みたいな高い鼻。

大き過ぎず小さなすぎない口。


それらを構成するパーツはバランスよく整っており、黒髪のマッシュルヘアと合わさり見事な爽やか系イケメンを作り上げている。


加えて身長は190cmで軽音部に所属しているという、モテ男tier表SSSみたいな要素てんこ盛りな男だ。


 これ以上語るまでも無いがクラスどころか学年の人気者である。


俺みたいな夏休みに一人でマンガ探ししている陰キャとは対極な存在。クラスの同級生という以外は接点がない。


 つまり、知り合いですらないのでスルーして帰宅するつもりだった。

……が、しかし、今の光景を目の当たりにして、放置はできなかった。


 彼女が居るはずの堀道が別の女子と手を繋ぎながら歩いていたのだから。


「二股じゃねぇか!!」


 こうして冒頭へと戻る。

いくら興味のないクラスメイトとはいえ、浮気現場を目撃すれば誰でも驚愕するに決まっているだろう。


「やっぱり、隣に居る女子は三ヶ島みかしまさん……じゃないよな」


 改めて堀道の隣を歩く女子を観察する。セミロングの髪を光沢あるバターブロンドに染めており、爪の先はネイルを施し、メイクも濃い目ときた。つまりはギャルである。


 ちなみに、堀道の彼女である三ヶ島さんは黒髪にポニーテールの清楚女子なので別人であるのは確かだ。見間違いなわけあるまい。


「いやいや、待て待て!? きっと、あれだ。妹や親戚とかの可能性も考えられる」


 そう自分に言い聞かせるが、堀道と女子はそのままホテルへと向かっていく。しかも、ただのホテルではない。看板には一泊いくらではなく、休憩一時間あたりの料金が書かれたホテル。


 そう、ラブホテルである。


「二股確定!!」


 俺は咄嗟にスマートフォンを構えてラブホテルに入る堀道と女子の姿を激写する。横顔がバッチリ見えるアングルなので言い逃れは不可能だろう。


 それと、ダメ押しで俺の着けている日付が表示されたスマートウォッチも同時に映しておいたので証拠としては十分なはず。


「許せねぇ……」


 次に訪れたのは沸々とした怒りの感情だった。痛むくらいに拳を握りしめてしまうほどの激情である。


 これが、イケメンの二股程度だったら憤怒をここまで出さなかっただろう。

だけど、堀道の彼女は三ヶ島さんなのだ。絶対に許せない理由である。


 なぜなら、三ヶ島さんは俺の初恋の人なのだから。


「三ヶ島さんは部活で頑張っているのに、お前は別の女と遊びやがって!!」


 三ヶ島さんは同じクラスに居る同級生だ。部活は陸上部に所属しており、凄く走るのが早いというわけではないが、部活は休まず、努力をし続ける真面目な娘だ。そんな彼女のひたむきさに俺は惹かれた。


 だが、残念ながら俺の恋は実らずに終わった。例の堀道と7月に付き合い始めたらしいのである。


 そりゃあ、事実を知った時は悔しかったさ。だけど、俺が奥手で出遅れたのがいけないし、三ケ島さんが幸せならそれで良いと思っていた。


 なのに、肝心のヤツは三ヶ島さんを放っておいて女遊び。苛立ちとやるせなさを覚えるのも無理はない。


「二股の事実を知ったら、三ヶ島さんは傷つくだろうな」


 先ほどの写真を眺めながら歯を食いしばってしまう。仮に写真をバラまいたとしても、クラスの人気者である堀道は適当な言い訳を用意して、しらを切るだろう。


 いや、二股を堂々と行っている人間が、それだけで終わるはずがない。最悪、堀道が自身のイメージを保つ為に別れた理由をでっち上げて、三ヶ島さんを悪役に仕立て上げるかもしれない。


 それこそ、人気者でクラス内の発言力が高い堀道なら容易くできてしまうだろう。

そうなれば、三ヶ島さんは学校での居場所を失ってしまうかもしれない。


「それだけは……それだけは、阻止しないと」


 俯瞰してみれば、俺の感情なんてストーカーの第一歩にしかすぎない。だが、相手の男が別の女と寝ている時点で三ヶ島さんが辿る道は辛いものでしかないのも事実だ。


「だったら、俺が寝取ってやる!!」


 目には目を、歯には歯を、外道には外道だ。


 絶対的な理解なんて得られない。俺が行おうとしているのは一方的な愛憎でしかない。


 それでも、構わない。

君が笑っていてくれるなら、俺は悪にでもなってやる。


 万全な準備を整えて、堀道が絶対的な立場を失うタイミングで証拠写真を叩きつける。そして、傷つくはずである三ヶ島さんの側に居て、痛みを少しでも和らげてあげられるなら、それで良い。


「そうとなれば、すぐさま実行に移さないと」


 まず知るべきなのは三ヶ島さんの内情だ。堀道との関係を知り、付け入る隙間があるかを確認しないと。


 さっそく、交友関係の広い友人に連絡を取り陸上部のスケジュールを確認すると、どうやら今日は他校との練習試合をしているらしい。


「時刻は16時。この時間なら試合も終わっているはずだし、今から向かえば、三ヶ島さんに会えるかもしれない」


 そうと決まれば善ならぬ悪は急げだ。俺は心に残る良心を捨て去り、走り出す。



そうして、駆け抜け、駅を乗り継ぎ数分後。


「見つけた……」


 学校の最寄り駅へと到着すると、ターゲットである彼女の姿を視認する。


 三ヶ島陽歩みかしま ひなみ


数メートル先に佇む初恋の人は何も知らず、綺麗な黒髪のポニーテールをなびかせるのであった。

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