2-12 おまけ 魔族編 どうやらセプティナは一行を見失ったようです
そして数日後。
「……魔力が突然途切れたと思ったら……そういうことだったのね」
カース・デーモンのセプティナは、ヴァンパイア・ナウルの居た古城に降り立った。
その赤いつばさを畳み、美しく妖艶な笑みを浮かべていた。
「あなた達はここで待機していて。万が一ってことがあるから」
「はい、セプティナ様」
更に後ろには、数十体の眷属たちが徒党を組んでいる。
彼らは以前ゼログが始末したヴァンパイア・ロードの残党だ。
悪魔やヴァンパイアに属する魔族はプライドの高い種族だ。その為、人間に投降し、従うことは絶対にありえない。その為、彼女が今は彼らを率いている。
「……まだ、魔力が少し残っているわね。……あの裏切り者はここで殺されたのかしらね。……軍隊が来た跡がないってことは、相当な冒険者を相手にしたのかしら」
そう言いながら古城の中を探索する。
あちこちに街の住民の遺体と思しき跡が残っており、痛ましい惨劇が起きたことが見て取れる。
だがセプティナはあまり関心を持たずにぽつりとつぶやく。
「……あの娘に渡したペンダントの気配はここでなくなっているわね……」
そうして、玉座の前にたどり着き、粉々になったペンダントを手にしてつぶやいた。
「戦いの中で壊れた? ……ううん、あの裏切り者が壊したようね……。ま、その気持ちは分かるけど」
魔族の中でもカース・デーモンはとりわけ特殊な種族である。
上下関係に対してうるさいのは勿論だが、そもそも主君が死んだ後にも関わらず「裏切り者の始末」と言う名目で逃亡者を始末するような意味のない行為は、通常魔族は行わない。
彼女たちの本質は、苦痛にあえぐものの姿を見ることだ。
そのため理由をつけて魔族を拷問したり、虐殺したりすること、それ自体を目的にして好んで行うという嗜虐的な性格をしている。
元々彼女は単独で裏切り者の始末に向かっていたのも、そもそも他の魔族は裏切り者に興味などなく、拷問をしたがる彼女が独断で行っていたからでもある。
……彼女らの拷問は凄惨を極めるため、もしカース・デーモンが自身と同じ主君に仕えていたと知っていたら、ヴァンパイア・ナイルはあの場では逃げ出さなかったかもしれない。その為、ヴァンパイアがカース・デーモンに捕まる前に始末されたことは、彼にとっては礼を言うに値する行為だったということだ。
「これで足取りは一時不明、か……」
そう言いながら少し考え込む様子を見せた。
そして、ぽつりとつぶやく。
「けど、僅かだけどあの子の魔力の残り香があるわ。……北にある、砂漠の国に向かったわけか……どこかの街で張ってれば、いつか見つかるわね」
そう考えたセプティナは、待機していた一団にそう告げた。
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