プロローグ

PM 8:00 魔術院


 ここは魔術院。私たち魔術師の総本山のようなものだ。

 私は今、とある所に用事があり、院内を歩いている。しばらく進むと、黒いスーツの魔術師達が集まるエリアについた。

 そうここは、執行者達のフロアになる。多くの執行者達が、違反行為を行った魔術師の処断命令が降るまでは、このフロアで待機している。まるで、ヤクザの事務所みたいだ。

 そんな所に、私はある人物に会いに、足を運んでいる。その人物は、奥のデスクで足を乗せて休んでいたのだ。


「セシリアさん。行儀が悪いですよ。主任なのだから、そのようなことは控えてくれないと」


「あら? 美羽じゃない。何のようかしら?」


 この人は、執行者の全体をまとめる主任、セシリアさんだ。

 A級魔術師エリートでありながら、S級魔具を扱えれるほどの実力を持つ魔術師だ。その実力と魔具から、通称『雷電』と呼び恐れられている。

 と言うのは、魔術師達の間での呼称だが、本来の彼女は人望が厚い人物だ。

 そのため、執行者の主任でありながら、魔術師内でも絶大な人気を誇る人物であり、何しろ議長であるリリィとも繋がりがある。そのような人物を、リリィのような人間を見てるわけがないのだからだ。

 そんなこんなで、私はセシリアさんにある事件について依頼をしていた。それの進行を聞く為に、私はここに来ていたのだ。

 

「例の件、状況はどうです?」


「状況としては、芳しくないわね。突き止めても、すぐに返り討ちに会ってしまってる。でも、どこにいるかは把握してるわ」


「なるほど。では、そこに派遣させるのですね?」


 私の問いに、セシリアさんは首を横に振るう。


「今回は、私が行くわ。場所も関係しているしね」


「まさか、札幌にいるんですか?」


「最後の追跡情報では、奴らは札幌に向かったそうよ。もちろん、アルにも動いてもらうつもりだし」


 セシリアさんの情報によると、例の一団は札幌に潜伏しているらしい。その情報を元に、キサラギさんに依頼するつもりのようだ。

 それともう一つ、気になったことがある。


「そういえば、美生はどうしたんです? しばらく、魔術院の中では見かけませんが、任務に出てますか?」


「いえ、彼女は休暇中よ。理由は知らないけどね」


「理由は知らないって、そんな理由で休暇させてるんですか?」


 私は呆れながら、セシリアさんに質問する。だが、セシリアさんが知らないのは事実のようだ。


「それがわからないのよ。この事件が起きてからずっとこっちにはいないわけ」


「だいたい理由はわかりました。それで? セシリアさんは、いつ出立するんですか?」


「これからよ。奴らを捕えるのは今しかないわ。あなたも行くんでしょ?」


 セシリアさんがそういうと、私も札幌に向かう。セシリアさんと私は先に向かい、後からリリィとイロハも向かう予定だ。

 その時に私は日本支部に向かい、セシリアさんはキサラギさんの事務所に出向く予定だ。


「えぇ。それを伝えるためにここに来ましたが、その必要はないようですね。では、行きましょうか。もう飛行機も用意してます」


「さすが、早いわね。酒も用意してるんでしょう?」


「相変わらず、酒がお好きですね。ご安心ください。それなりの物は、ご用意しておりますので」


 私の返事に、セシリアさんは喜んでる。セシリアさんもキサラギさんと同じくらいの酒豪だ。だけど、キサラギさんとは違いセシリアさんにはちゃんと酒癖がある。まぁ、その酒癖についてははっきり言って悪い方だが。

 時間を見る。そろそろ、迎えが来るようだ。


「クサナギ秘書官。アーデンフェルト主任。お迎えにあがりました」


「ご苦労様。では、行きましょうか」


 セシリアさんの後を追うように、私も出発する。評議会が用意したプライベートジェットで、新千歳空港まで向かう。

 そして、私たちは札幌に向かうのだった。

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