立場

学生作家志望

偏見

学生のうちに彼女なんで出来ないと本気で思ってた。でも、別にそれを理由にあの子に恋をするのをやめられはしない。


当たり前だろ?好きなものは好きなんだから仕方ない。だけどやっぱり陰キャの僕にはあまりにハードルが高すぎるんだ。


その子はクラスでもトップクラスに可愛いし、なおかつとんでもない陽キャの明るい子。悩みなんて一つもないように見えた。


そんなあの子に対して、ネガティブですぐに病んじゃう僕………


こんな僕なんかが成功、するわけないよね。



しかしその数日後、とある出来事をきっかけにあの子と僕は付き合うことになった。初めて彼女が出来たという興奮はあったが、それ以上に初めての彼女があの子で良かったという嬉しさと安堵があった。


そこからの日々は、ドミノのようにうっかり倒れる不安すらない、状況の変わらない無限の楽しさがある毎日だった。


「明日も明後日も昨日と今日と同じくらい楽しい日になるんだろうな。」そんなワクワクや期待感で胸がいっぱいになって………



そんな幸せの絶頂みたいな僕の頭と心の中にある日、鋭く尖った石が突然投げ入れられた。


ついこの前まで仲良かった友達との関係がなぜかどんどん悪化していったのだ。3日連続で嫌がらせのようなよくわからないメッセージが100件以上も送られてきた。溜まった通知を見て僕はその子だけを通知オフにしてみたりする。


でもやっぱり変なメッセージは止まなくて、ついに僕はその人の名前が画面の中に出てくるのでさえも嫌になってしまった。


ただ僕は彼女が出来たというだけで、別にみんなと仲良くしたくないわけではない。彼女だけを優先しようなんてこれっぽっちも思っていないんだ。


僕はあの子の笑顔が好きになっただけ。みんなの笑顔を嫌いになったことなんてないのに。


なぜか「別れろ」だとか「釣り合ってない」なんて付き合ってることを否定されているような嫌な気分に、どんどん追い込まれていった。


僕だって少し前までは彼女なんて居なくて、彼女が居る人のことを羨んでいた。でもそんなことでその人との関わり方を変えるようなことは、僕はしなかった。


何が良くて何がダメなのか、何が嫌で何が気持ちいいのか、そんなものはその時の立場でいくらでも変わってくる。


友達が多い人のことを羨んだりするけど、その人の悩みを知ることも理解することもまだ僕はしていないし出来ていない。出来るわけがない。


天才の気持ちは理解できない。でも、どんな天才でも凡人の気持ちは理解できないんだ。


能力や才能があろうともなかろうとも、その人の気持ちはその人にしか味わえないもので真に独自なのだ。


そういう人の「気持ち」というのは確かに理解することは難しいが、それを少しでも分かち合うためにゆっくりとお互いの気持ちに寄り添うのがベストではないだろうか。


だんだんとネガティブな気持ちが強くなっていく、僕の弱さもきっと誰にも理解されないだろう。寄り添ってくれる人なら今までたくさんいたけど。



僕の気持ちがどんよりと沈んでいってしまうのを、自分で止めることは到底出来なかった。わかってるはずなのにわかってないような、自分のことでさえも。



「本当にもう無理。」



僕の明るい日々を作ってくれた隣にいる彼女が僕にそう言った。暗い目、暗い顔、泣きそうな声、僕の悩みなんてその瞬間に全て彼方へ吹き飛んだ。


「どう、、したの?」



明るくて、僕より絶対ネガティブじゃないと思ってたその子はもしかしたら僕以上にメンタルが弱くて守ってあげなきゃいけない子なんじゃないかってそんな気がした。



ああ、やっぱそうだよ。



毎日一緒にいても、楽しくても、僕はなんにもわかってなかったんだな。



「話………聞くよ?」



寄り添っていかないと、ダメだよね。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

立場 学生作家志望 @kokoa555

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ