第5話 木原進【Walker】4
『ナイスチーム! 次、敵タンク絶対俺のこと狙ってくるからよく見ててね』
よく通るさわやかな声だった。
味方を鼓舞し、士気を高めるようにボイスチャットを入れるアカリはサポートの鑑と言っていいだろう。
キルした敵タンクの屍がデスポーンするまでの三秒間、屈伸煽りと死体撃ちをしていること以外は。
『いいぜぇ完全にキレてるだろこれ。こんだけ煽ってやれば心折れてパフォーマンスが悪くなるに違いないぜだははは!』
キルされた側は自分がどのように敵に倒されたのかが確認できるようになっており、リプレイ映像を見せられる。
俗に言うキルカメラ機能というものだ。
つまりこのバットマナーも相手には筒抜けである。
「このサポ治安悪すぎ!」
だが心理戦の布石は完璧だった。
(さっきのゲームの時から対立していたのはわかってたけど、これで完全にマークされた。あのタンクはチャンスがあれば間違いなくこのサポートを狙ってくる)
ベイトとして完璧な仕事だ。
そこからの展開は予想の通りで、直情的になった敵のタンクのスタンドプレーが目立ち始める。
それを誘発させるのがサポート2を務めるアカリのポジショニングだった。
サポートロールは自衛能力の少ないものが多く、火力もDPSと比べて一回り少ない。
そのため、前線から一歩引いた後衛でタンクやDPSに守られるようにしながらヒールをするのが基本的な役割だ。
だが、アカリは味方タンクと一緒に戦うように立ちまわる。
タンクの盾の隙間を狙って後方の敵にダメージを入れたり、過度に接触して形成が不利になると衝撃波を当てて敵のタンクを下がらせる。
特に壁に張り付きながら移動できるスキルは敵の
「この人すげえ。回復はずっとしてくれてるのはもちろんだけど、自分もファイトに参加する事でワンピックが狙いやすくなってる」
さらに味方タンクより、あえて前に出て敵タンクの攻撃を誘発し、釣られたタンクを味方陣地の真ん中に叩き込みフォーカスで落としきる。
結果、敵のタンクはチームを守るという、基本的な役割を果たすことができなくなりチームは瓦解を続けている。
Sup2:
Sup2:
Sup2:
さらにアカリは敵タンクがキルされるたびに暴言チャットを連投し続け、敵タンクのヘイトを買いまくっている。
完璧な負のスパイラルが完成していた。
第一ラウンドは敵に一度もエリアに触れさせることは無く、完勝を収めたのだった。
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