第24話 ハズレ階層探索

 仕事を終えたヘッテピさんも交えて、改めて探索会議を始める。

 

 キルシュはここ数年で、レベル上げを兼ねて普通の階層とハズレ階層とで、レアドロップ率を測定していたそうだ。

 

 結果、ハズレ階層のほうがレアドロップ率が高いと判明した。


「ほお。それは興味深いな」


「パーティによっては、ハズレを回ってレアを掘る組と、攻略組とを分けているみたいだよ」


「ふむ。ギソの目的は、戦力の分裂なのかもしれねえな」


「でも、結果的に合流するじゃん。パーティがパワーアップするから、あんまり意味なくね?」


「そこなんだよなあ。ギソが結局なにをやりてえのか、さっぱりなのは」


 ボクたちは、そこで考えがごちゃごちゃになってしまう。

 

「探索してみたら、わかるんじゃないかな?」


 提案すると、キルシュもうなずく。


「そうだね。結局、調べてみないと何もわからないよね」

 

 というわけで、翌日から五層には行かずに、四層でひとまず鍛えようとなった。ちゃんとした戦利品の整理も、四層でアイテムを掘ってからとなる。


 翌日から、四層を駆けずり回った。


 四層は、壁や床、天井が水晶でできている宮殿である。

 一層が城の下水風、二層が自然が残る洞窟だった。


 部屋だらけの道だった三層とは違い、四層は道が開けている。実に歩きやすいが、敵も多かった。

  

 レベルが低いながら、ニンジャも普通に徘徊している。誰に、仕えているんだろう? きっとギソだろうと思うけど。


「【コボルトニンジャ】だって!」


「手間がかかるわね! ホントに犬のように、すばしっこいわ!」


 ソーニャさんの【ウインドカッター】が、ニンジャに当たらない。ボクの【ブレイズ】も、同様である。


「雷はどうかしら? 【ライオット・フィールド】!」


 手首に巻いたアンチョコを、ソーニャさんが開く。呪文を詠唱すると、空気中に静電気が発生した。

 敵にとっては、軽く目潰しになる。

 

 コボルトニンジャの動きが、雷撃によって止まった。


「今よ!」


「【マナセイバー】からのエンチャント、風属性!」


 ボクは、風属性魔法を剣に付与した。自分を軸にして、剣を振り回す。


 嵐となって、ニンジャを切り刻んでいく。


 止まっている相手なら、いいカカシだ。


「これで、どうだ?」


 アイテムが入った宝箱を、ニンジャがドロップする。


「罠があるか、判定してみるわ……OKよ」


 ソーニャさんが、罠がかかっていないことを確認した。


 セーコさんが、慎重に箱を開ける。


「やっぱり、三層のボスよりドロップがいいね」


「四層が稼ぎ場っていうよりさ、五、六層がクソなんだよね」


 五層も六層も、敵が強くトラップが多い。その割に、実入りが少ないのだという。

 その点、四層は道も広くて宝箱もあちこちに点在している。運がよければ、いいアイテムを拾えるはずだとか。

 また、ダンジョンのアイテムは一度開けても数日すれば中身が復活する。さすがに中のアイテムの種類は、変わってしまうが。

 

「すごいね。宝の山だよ」


「といっても、攻略には役に立たないんだよね」


 そんな感じで、ひとまず四層でアイテムを揃えて、五と六はさっさと終わらせる。で、七層でまたアイテムを揃えることに。


 レベル上げと、アイテムが揃うまで、一ヶ月をかけた。

 特に、ボクたちはすっかり強くなっていて、なかなかレベルも上がらなくなっている。


 キルシュやヴィクについていって、七層で鍛えてもらう、いわゆる「パワーレベリング」の案もあった。


 しかし、それでは本質的な強さは手に入らない。セーコさんによると、ボクたちは戦闘経験から応用を利かせた戦闘術が得意だという。そのため、ロクな戦闘経験をせずにステータスだけ上げても、活かせないだろうとのこと。


 ボクも、セーコさんに同意して、ボチボチと地道にレベルを上げている。

 

「ほおお。毎回稼がせてもらっているが、今回はヤバいな」

 

 ヘッテピさんが、大きくうなった。

 もうすっかり、ヘッテピさんは王都の名物鍛冶屋となっている。だが今回のアイテム群は、さらに興味を引くものだったみたい。


「この皮ヨロイなんて、魔獣の皮が使われている。鉄の全身プロテクターよりいいぜ。鉄より頑丈で、布より軽い」


 この装備は、ボクがもらうことになった。


「でしょ? さすが魔法戦士だよね。レアドロップ率がヤバいんだよ~」


 そうはいっても、キルシュは決して、ボクたちを頼ってレア堀りなんてしない。

 その辺りのマナーは、わきまえていた。

 さすが、パワーレベリングを推奨しないパーティだけある。


「お次は、短剣か。果物ナイフサイズだが、クリティカル率が高い。コイツはセーコ行きだな」


 セーコさんが、短剣を装備した。


「なにより、この杖だって。なんだいこりゃあ? 潜在能力が、バカげてる。これを装備しているだけで、魔力が三割増だってよ」


 魔力を増幅する効果が高いらしい。


 だが、ソーニャさんは不満げ。


「でも、ゴツすぎるわ。見た目がヘビみたいで、気に食わないのよね。魔力増幅効果だけ、抽出してちょうだい」


 ヘッテピさんに頼んで、ソーニャさんは杖を処分した。もったいないけど、ファミリアのお家と化しているペンダントに、壊した杖の効果を注ぎ込む。

 

 大幅なレベルアップを終えて、ボクたちは五層へと進むことにした。

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