【一章完結!】クラスのギャルに『わたしのママになって!』と言われてVTuberのデザインを始めたら、いつの間にか俺も一緒にVTuberになって人気が爆発した件。
28話 伝説の始まり、Alter'd収益化記念配信
28話 伝説の始まり、Alter'd収益化記念配信
その日の配信は、こんなタイトルで始まった。
『【祝! 収益化&初四人配信!】Alter’d全員集合オフ!
みんな個性が強すぎて最初は雑談配信しかできないよ!!』
「はろ──!! 昨日の授業で『
『おいきさまwww』『こんなめでたい配信の第一声がそれかよw』
『配信二日目の十五禁ゲーでセンシティブ耐性あると知っているがこれは流石に草』
『どこが灰色だよ、ピンクだろw』
たまにする初手とんでも発言で安定の場を温めるほたる。
その上で、今日はいつもと違う。彼女を中心に初めて並ぶ少年少女にほたるが回す。
「というわけで──本日は壮観、初の全員集合だよ! じゃあみんな、テンポ良く自己紹介をお願いします!」
「はい。せめて直訳するとしてもピローワードだろ。暁原カガリです」
「悪意のある意訳は程々にしなさい。夜紡あおいです」
「古文の先生に謝れ。昼神ユキヤです」
「テンポ良ッ! みんなこの日の配信最初の挨拶がそれでいいの!?」
『圧 倒 的 お ま い う』『ツッコミが三倍いるからほたるも生き生きしとる』
『そしてツッコミに第一声を使う三人も三人よw』
『三人とも再登場待ってた!』
『早速オフができるの本当に同じ学校に通ってる感あっていいね』
『揃ったらどうなるのか楽しみー』
各々が最初の配信でインパクトを残したからか、視聴者からの反応も上々だ。
それを踏まえた上で……ほたるが予め考えておいた質問を振る。
「うん、みんな大人気でリーダーは嬉しいよ。やっぱりみんな顔合わせ配信が面白かったからねー。……だからさ、聞きたいんだけど」
にっこり笑顔で、なんの衒いもない口調で。
「三人は──誰の顔合わせ配信が一番面白かったと思う?」
「「「俺(僕)(私)だが?」」」
そして戦いが始まった。
「は? 誰がどう見ても僕なんだけど? ゲームの腕前を一番見せつけてたのは僕だったよね? ネジ巻くやつの初見パーフェクト見てないの?」
「ゲームの……腕前……?」
「おい」
「そんなのやってたかしら、私の認識ではただあなたがあざとい声を出していた様子しか記憶にないのだけれど……ほら視聴者さんも『可愛い』しか言ってないじゃない、ここまで言及されてないってことはそういうことよね」
「今すぐ全員アーカイブ見てこいやこら!!」
「逆に私は文句のつけようがない完璧な初配信だったわよね。私とほたるの息の合った完璧なプレイを目に焼き付けたでしょう?」
「完璧……そうですね、完璧なプレイでしたね」
「ええ、完璧でした。何的にとは言いませんけど完璧なプレイだったと思いますよ」
「何か含みがあるような口調だけれど?」
「いやいや。大恩ある先輩にいい加減現実を知らしめたいだなんてそんなそんな」
「ええカガリの言う通りです。口ではこう言いつつも、流石に無理のある主張で若干肩が震えていることをバラそうだなんてまさかまさか」
「この後輩ども生意気すぎない!?」
「全く二人とも甘いね。その点俺はしっかり見せ場も作ってほたるとの絆も知らしめた、スカウトされたのも俺が最初だし……最古参の『格』ってやつを見せちゃった、かな」
「「で、かぼすって何?」」
「ハァ──!! みかん科の常緑広葉樹で日本では大分県で特産されており、果汁の酸味と独特の風味から主にポン酢や薬味、風味付けとして使われる果物ですが何かー!?」
「なんでちゃんと調べてんだよ」
「もういっそかぼすガチ勢になろうとしてない?」
お分かりかと思うが、ここまでの会話全てノンストップである。
それを聞いた上で、ほたるが笑い疲れた声で一言。
「はいみなさんもうお察しですね──Alter’dはこういう奴らです!」
『愉快な高校生集団ってことねw』『すごい説得力だ!』
『なんでこんなノンストップでトーク展開できんだ』『キッショなんで喋れんだよw』
『四人揃ったらどうなる?→二人の時の六倍うるさくなる』『妥当すぎて草』
こうして、しっかりと最早チャンネル名物になりつつある怒涛のトークに馴染むことで四人の存在感を知らしめたのち、次のコーナー。
「初顔合わせの諸々を含めて──四人で視聴者さんからの質問に答えていくよ!」
四人が揃った上での改めて、SNSで募集した質問回答コーナーだ。
幸いにも、ほたるの初配信の時と比して更に注目度が上がった分たくさん集まってくれ、その中から抜粋したものをほたるが読み上げていく。
「まずは多かった質問から──『こんな逸材たちをどうやって連れてきたんですか!?』だって。逸材だって言われてるね! 誰のことかな~?」
「「「俺(僕)(私)だが?」」」
「それはもういいから!」
綺麗に天丼ネタを決めてコメント欄が『草』『w』で溢れてから、ほたるが続ける。
「これに関しては本当にわたしもびっくりなんだけど、最初本格的にVでの配信やりたいって思ってたのはわたしだけなんだよね。で、そのために必要な人材……曲作る人とかアバター描いてくれる人とか探した結果この四人が集まったんだけど」
集まった時点でほたるが思ったのだ。……こいつら配信適性ありすぎじゃね? と。
その辺りの事情は各々の顔合わせ配信で小出しにしていたので軽くまとめつつ、ここではもう少し深い話──すなわち『どうやって口説いて引き入れたか』になる。
これは実際初めて四人が揃ったあの日にほたるが語った、三者三様のものがある。
「じゃあ一番とんでもな理由持ってる人──ユキヤかな。ユキヤはね、元々作曲メインで活動してて結果も出してたんだけど……最近ちょっとあの、すんらぷ気味で」
「スランプね。雰囲気みたいな読みミスをそこでする人初めて見た」
「その気分転換というか新しいことやってみたら、って感じ。何よりわたしの聞いた感じ、ユキヤはなんていうか……ちょっと作る曲も含めて硬くなってる印象があったから、いっそのこと配信ではっちゃけちゃえばその硬さも取れるんじゃない!? って」
『確かになかなかぶっ飛んだ理由だw』『でも効果ありそうじゃない?』
『実際オリ曲すっごい良かったし、スランプ気味だったってのにびっくりかも』
「お、オリ曲褒めてくれる人がいる……あ、ユキヤ照れてる? もー、わたしがいくら声可愛いって言っても仏頂面なのに曲の評価には素直なんだからーこのこのー」
「はいうっざいさっさと次行ってくれませんかー!」
『かわいい』『かわいい』『そういうとこだぞユキヤ』
顔合わせ配信で固まったキャラクター性を早速見せつつ、次の人へ。
「あおいちゃん先輩も似たような感じかな? これまで漫画以外の表現をしたことがなかったから、幅を広げるためにどうかって誘ってね」
「ええ。……お恥ずかしながら数ヶ月前に初連載が打ち切りを喰らってね。次を描く前に──漫画以外にも触れてみたらどうかって編集さんとも話し合って決めたわ。VTuberは間違いなく今のエンタメの最前線だし、絶対得るものはあるだろうって」
『なるほど』『いい編集さんじゃん』『実際そういうVも居るしね』
『打ち切り辛かっただろうけどちゃんと切り替えて新しいことやれるのはすごい』
「ありがとう視聴者さん。……どうかしらユキヤ、これが先輩の人徳よ」
「何!? 絶対最後に僕を攻撃する流れなの!?」
『草』『お姉さま方にいじられるユキヤには需要がある』
『あおい先輩とユキヤが微笑ましい範囲で若干相性悪めなのも解釈一致』
早くも関係を見抜くなんとも鋭い視聴者もいた。
「それでカガリなんだけど……」
この間コメントを見ていた燎はそれにも驚きつつ、自分の番が回ってくる。
ほたるはしばし考えた後……にやりと笑って。
「ママはね~わたしのこと大好きだから、わたしが『ママおねがーい♪』って誘ったら絶対断らないと思ったから普通に頼んだよ。結果はみんなもご覧の通り!」
「何!? 顔合わせ配信の流れ続いてんの!? まだ火炎放射器燃料残ってんの!?」
『はいてぇてぇ』『ほたるのてぇてぇ火炎放射器にも需要がある』
『ママおねがーい、の部分の声普通に超可愛いのなんなのw』
『そっかーお願いされて断れなかったんだーにやにや』
「コメ欄のみんなほたるに調教されすぎてる! 戻ってきて! そりゃほたるに誘われたからってのも理由としてあったけど──一番はシンプルに自分もやってみたいからって思ったからなので!」
これは本心だ。
燎の目標は、自分の特別な何かを見つけること。ここ二ヶ月強は絵を頑張ってきたが……それ一本に決めるほどまだ何も見ていない。だから配信も、と。
今までの三日坊主ではない、どっちも本気でやる。空っぽだった自分の中身を今から埋めるために。後は……やっぱり目の前にある面白そうな機会を逃すべきではないとも。
その辺りのことを考えて燎も決めたのだが……そんなことわざわざ配信では言えず。
結局曖昧な言い方になってしまい──結果としてその辺りのことを散々ほたると視聴者にいじられ、標的が移った雪哉からは何故か感謝された。
そんな取れ高的なハプニングがありつつも、質問は順調に消化されていく。
メンバーの学校での様子や各々の創作歴等々。様々な部分に興味を持ってもらえたのは大変嬉しく──そして。
最後に、こんな質問がやってきた。
『これからどんな活動をしていきたいですか?』
「これね! ここまでの配信でもたまに言ってたんだけど、今日は全員お披露目の日だしたくさん来てくれてるから……ちょっとだけ真面目な話していい?」
声のトーンを抑えての問いに、視聴者からも快く『いいよ!』『聞きたい!』等のコメントが返ってくる。
それに感謝の言葉を返したのち、他の三人も見守る中、ほたるはいつも通りの明るい……けれどしっかりと芯を宿した声で。
「わたしの、活動の目的はね──」
そこから、この配信が多くの人の印象に残ることになる、伝説の始まりとなる。
配信の流れが変わった一言を──こう、告げた。
「──『冒険』をしたいんだ」
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