僕、芝田太郎、小説家。

骨身

25歳

僕の名前は、芝田太郎。

25歳。

職業は、小説家である。

いや、本当はニートである。

この前会社の後輩に資料作りの責任を無理やり擦り付けられ、退社させられた、可哀想な人である。

その後僕はずっとやりたかった小説家になった。といっても、雑然とした僕のくだらない文字をつらつらと並べているだけである。

今日も僕は、パソコンを目の前にし、思ったことを書き綴る。


……何も思いつかない。


何も思いつかないので書くことがない。

なので、僕の半生をここに綴ろう。


僕は、芝田 七恵(漢字は変えている)と芝田 中三郎(もちろんこちらも漢字を変えている)の間に生まれた、子供である。

兄妹はいない。

と言うより、同じ読みの漢字を考えるのが大変である。

僕がほんとに兄妹の名前を書きだしたら、そのうち「芝田 目合吏(しばためあり)」とかいう、とんでもキラキラネームが生まれてしまう。

それだけは阻止したい。

なので、省かせてもらう。

生まれた土地は、大分である。

大分の、別府というところで僕は生まれた。

生まれた時の僕は、既に仕事をサボっていた。

泣かなかったのである。

看護師は大層慌てたそうだ。

泣かないから、心肺停止か、死産かと思われたそう。

しかし、僕は健康そのものであった。

体重は平均より少し上であった。身長は少し小さかった。

だからか僕は今も少し背が小さい。


看護師を騒がせた僕は、その後も普通に成長した。親に聞いても、本当に平均どおりの子供だったそうだ。

最初に発した言葉はちゃんと「ママ」だったし、次に話した言葉も「パパ」だった。

(ぶっちゃけ、こんな僕に面白い小説なんてかけるのだろうか。)

小学校に入学後、僕は友達がなかなかできなかった。できなかったというより、人見知りだった。友達よりも、本の中の世界に興味があったのだ。中でも好きだったのは、「冷蔵庫の中の友達」である。冷蔵庫の中にいる食べ物たちと友達になる話だ。

もしかすると僕は、友達に憧れていたのかもしれない。

小学二年生になり、友達ができた。

小学三年生になると、クラス中の人が友達になった。

そして、小学四年生でほぼみんなに嫌われた。

何があったのかは細かく覚えていないが、給食のカレーを全て階段にぶちまけたような気がする。

小学五年生になると、みんなが許してくれた。

小学六年生で、僕は好きな子ができた。

中一でその子は引っ越した。

噂によると社長の令嬢だった。その子は中学生になると急に自信を持ちだし、掃除中に「ちょっと男子ー!」という、あの手の女の子になってしまったのである。それが原因でいじめられ、引っ越した。そういうムーブはぶっちゃけ小学四年生で捨ててくれ、と僕も思った。

中学2年生になると、周りが異性と付き合いだした。僕は興味がなかった。

この時から既に恋愛に興味がなかったため、僕は今も恋人がいないのだろう………。

悲しい話だが、仕方ないものは仕方ない。

続けよう。

中三で、クラスはわかれた。

一人の子が男子に罵倒され、不登校になったのだ。治安の悪い学校だなあと思いながら僕は息を潜めていた。

高校生になった時、小説家になりたいと思った。家にある本は既に1000を超えていたと思う。

今まで僕の半生を振り返っていたが、ここで小説家になりたいと思った理由を明かしていいだろうか。

僕がこの文を作っているから、いいだろう。


僕は、他の人より身長に比べて体重が軽い。

身長は156cmでとまった。

体重は39kgである。

みんな、わかっただろうか。

軽いのである。

高校の時、みんなに骸骨と言われた。

ガリガリだ、ご飯は食べてるのか、虐待されてるのか、育ち盛りなのに、たくさんの言葉をかけられた。

ガリガリだね、食べてる、されてない、むしろ愛されてる、それはそう、たくさんの言葉を飲んだ。

ある日、気づいた。

小説、文学。

ここなら、何を書いてもいい、自分から自分のことを明かさないなら、顔も、身長も体重も関係ない。

それに、人より軽く、浮ついている僕は、


何か命をかけてやりたい!


そんな気持ちが、いつからか漠然とあったのだ。

僕は、小説を書きたい。

僕のこの軽い、39kgを、極限まで煮つめて、凝縮して、選んで、そして、作品を作るのだ。

僕のことなんて見なくていい。

僕の作品を見てほしい。

僕の、39kgから生まれる、それ以上の重さの何かを、受け取ってほしい。

君が、男なのか女なのか、若いのか、年老いているのか、誰かの親なのか、小学生なのか、中学生なのか、大学生なのか、社会人なのか

いや、そもそも人なのか?

もしかしたら、宇宙人かもしれない。

それでも、それでもぼくは。


ぼくの39kgを、うけとめてくれ。


きっと、僕の39kgは、僕が死んだあとに注目されるのだ。

それも一興ではないかと、はにかんだ。


そして、Enterキーをうつ。

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