【34】知りたい、アカゲのプライベート

「冬ちゃんってさ、人間味ないよなぁ」


「悪口すか」


 みなととアカゲが相対す。ここは浦山要塞技術工学研究所。


「いろいろ質問したいんだけど」


「いいですよ」


 不思議な雰囲気の2人だ。


「好きな食べ物とかある?」


「特には」


「嫌いな食べ物は?」


「それも特には」


「……」

「人間味ないよね」


「悪口すか」


 不思議な雰囲気の2人だ。


「音楽とか聴いたりする?」


「あ!」


「お……?」


「聴きますよ!ノリノリの、ディスコミュージックとかね」


「おお、人間っぽい」


「悪口ですよね」


 アカゲの好きな音楽のジャンルが少し分かった。


「上には、大学とかあるの?」


「あったハズです。博士号とってたと思うんで、Ph.D.っていうんですが……」


「へえ、友達とかいた?」


「うーん、そこら辺の記憶がサッパリで……。あ、でも多分皆英語で話してましたね」


「本格的だなぁ」


 どうやら、かなり優秀な大学の出らしいアカゲ。みなとも納得だ。


「記憶失くしてる割には意外と覚えてんだね」


「訊かれて初めて思い出すような出来事がふんわりあるんで、こういった質問攻めはかなり有効かもしれませんね」


「うーん確かに」

「上に戻ったら何したい?」


「あー、どうなんすかね。何したいんだろうな」


「結婚?(ウチと)」


「それは無いですね……」


 アカゲは顎に手を当てて、短い髭を触る。


「とりあえず、何か面白いモノがあればチャレンジしてみようかなと」

「上界のテクノロジーも気になりますし」


「……なんか、冬ちゃんらしいな。つまらん」


「悪口だ」


 ……あのさ、とみなとが問いかける。


「灰の娘の復讐を、冬ちゃんは手伝うの?」


「手伝いますよ」


「どうして?」


「バディなんでね」


 みなとは苦い顔をした。


「そういうのはいいから、理屈が知りたい」


 その言葉を受け、アカゲは少し考える。


「……どうやらオレには、ツキを支える力があるみたいです。電機義眼の超過稼働はオレの声だけ認証するし、なぜだか分かりませんが」

「これでオレが手伝わずにツキが命を落とすようなことがあれば、オレでも多分、苦しむでしょうね」


「だから手伝うの?」


「いいや、バディだからですよ」


「ふうん」

「───何となく、分かった」


「流石です」

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