第115話 ドラゴン娘、お題を与える。
クレアが子分になりたいとお願いしてきた次の日。
「ほっほっ本当にこの衣装って店の制服なのか…?」
「そうだよ!」
「男っぽいうちにはこんな可愛いの、絶対に似合わないって…」
「そんなことないわ。スタイル良くて顔が綺麗なだけあって似合ってるじゃない。」
「だよな。俺も似合ってると思った。」
「あんまりジロジロ見ないでくれ…恥ずかしいぞ…」
なぜクレアが店の2番目の制服になりつつあるゴスロリ衣装を着ているかというと!そう、俺がクレアに子分として認める試練として出したお題はこのゴスロリ衣装を着て店を手伝うこと!
「本当にこの衣装を着て1日店の手伝いをやり切ったら子分にしてくれるんだよな…?」
「ああ。してやるよ。俺の子分になるにはその衣装で店の手伝いが出来なきゃ認められないからね。」
「わっわかった、やってやるよ!」
「うん。」
(ヨーコ以上に可愛い衣装を着るのに抵抗があるクレアだ、きっと恥ずかしくなって子分なんかやめるって言ってくれるはず、悪い気もするが許してくれな?)
そして店が始まり、クレアのゴスロリ衣装で1日店の手伝いの試練が始まった。
「えっ!クレア様って女の子だったんですか!」
「そっそうです…」
「きゃー!美少年風の女の子とか最高ですね!」
「益々、ファンになっちゃいました!」
「どっどうも…」
「その衣装も似合ってますね!」
「後で一緒に写真撮ってくれませんか!」
「構いませんが…?」
「やったぁー!」
「ずるいー!私もー!」
「私だって!」
クレアは女性客に囲まれて大人気だった。
「彼女、凄い人気ね。」
「あの美少年風な顔つきなら当然だろうな。」
その様子を路地の隅から隠れてクレアの兄であるグレルが少し涙目になりながら見ていた。
「よかったなぁ、クレア。」
「兄貴も涙脆でやんすよね。」
「うっうるせぇ。」
だが、リュウカも人気では負けてない。
「私はリュウカさん一筋ですよ!」
「何を〜!私の方だって一筋です〜!」
「私の方が!」
「私ですってば!」
「メアーさんもミレイさんも落ち着いてください?」
「あんたも相変わらずの人気じゃない。」
「まっまぁな。」
「それでどうするの?あの子がお題を達成出来たら、約束通り子分にするの?」
「そっそうなるな…?」
「あの子本気よ、多分、達成するんじゃないかしら?」
「まだわかんないって…」
「とか言って本当は子分にしてもいいとか思ってるんじゃないの?」
「何でわかるんだよ…?」
「ふっふ。あんたの考えてることなんてお見通しなのよ。」
「そうかい…」
アンナの予想は当たり、クレアは1日手伝いを乗り切った。
「お疲れ様。」
「ありがとうございます…」
クレアは疲れた表情でオレンジュースを飲んだ。
「姉貴、うち、やり切ったよ、子分にしてくれるだろう…?」
「約束だからな、子分にするよ。」
「うっしゃー!」
「そんなに喜ばれるとは。」
「当たり前だろ!嬉しくて踊り出したい気分だ!」
「おめでとう。」
「はい!困ったらいつでも言ってください!また店を手伝いますから!」
「ありがとうね。これは今日のお手伝いしてくれたお礼よ。」
クレアはお手伝い代をもらった。
「頂いていいんですか?うちは姉貴からのお題をしただけなのに?」
「あれだけ働いてくれて、タダ働きには出来ないもの。受け取って。」
「そうっすか。じゃあ。」
「この後、俺、服屋に行こうと思ってるんだけど、ついてくるか?」
「もちろんだ!姉貴!」
リュウカに美少年風の女の子クレアという子分が出来た。ちょうどその頃、冒険者ギルドではギルマスのアスカ・マスカレイドが部屋で使い魔の蝙蝠と話していた。
「キルキルキル、いよいよあの計画を実行に移すのですね?」
「ああ、1ヶ月後の王都の武術大会にリュウカ・マジが出る、この千載一遇のチャンス、活かさなければな?」
「ですがよいのですか?もしリュウカ・マジを味方に出来ず人間側についた時は非常に厄介なことになりますが?」
「必ず我らの味方にさせるさ、秘策があるからな。」
「秘策ですか?」
ギルマスは秘策を話した。
「なるほどそれは名案ですね。彼女とコンタクトさせる者は誰に?」
「サリーだ。」
「サリー様を信頼しすぎではありませんか?あの方は人間側に傾きそうな方ですよ?」
「忘れたのか、サリーは人間に裏切られた過去があることを、あいつは心の奥では人間を憎んでいる、人間側につくことは決してありえん」
「ですが?」
「いいから、サリーとホッカ国にいる全ての半人同盟の同志達に伝えろ、1ヶ月後の王都の武術大会に集合、"国盗り"計画を実行に移すとな?」
「かっかしこまりました。」
圧に怯えて蝙蝠が慌てて窓から飛び立つと、眼鏡を外して鋭い目つきになった。
「王都の領土さえ奪い取れれば、この国は我ら半人同盟のモノになる、そうすればあの方がこの国の王になられるのだ。待っていてください。」
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