第49話 ドラゴン娘、犯人の変装を見破る。(前編)

警部さんにヨーコが話した内容を伝えると、警部さんは逃げていないのであればダイヤはどこかに隠されているはずだと広間にいた部下達に隈なく探させた。しかし盗まれたダイヤは見つかる気配はまったくなかった。


「どうだ!ダイヤは見つからないか!」


「まだ見つかりません!」


「うーむ。」


「どんな手段を使ったかはわからないが泥棒三姉妹はすでにダイヤを持って逃げたのであろう…奴らを甘く見た我の失態だ…家宝を盗まれ、ご先祖様に顔向けが出来ん…」


「お父様…」


「泥棒三姉妹は変装の名人で、広間に居た者、大体を変装してないか確かめたが、変装している者は居なかった。特に怪しい者も居ないし。これは捜査が難航しそうだ…」


「皆、相当、頭を抱えてるみたいだべ?」


「俺もいくら頭を捻ってみても、どうやってダイヤを盗んだのか、泥棒三姉妹はまだこの広間にいるのか、全然、わからん!」


「それはオラもだべ、アンナはどうだ?」


「わっ私?私もかな…?」


「アンナ…?」


「客人である皆さんをもてなすはずが、こんな事態になってしまって申し訳ありませんわ…」


メグは頭を下げた。


「メグが謝ることじゃないさ!」


「そっそうですよ!頭をお上げください!」


「おめえさん達は何も悪くねぇって。」


「皆さん…」


「ねえ?」


「ひゃ!何…?アリア…?」


「どうしたべ?」


「トイレに行ってきちゃ駄目かな?さっきから我慢してて漏れそうなんだ。」


「そうなの…?」


「何だ。そんなことか。」


「トイレ…?」


「あらま!大変ですわね!いいですわよ!ワタクシから警部さんに伝えておきますから!」


「ありがとう。」


「一人じゃ危ないでしょうから。私も一緒に着いて行きますよ。」


「それがいいですわね。お願いできますか。」


「はい。」


「あなたは確か、アリアをお手洗いに案内してくれた方ですよね…?」


「そうです。私、あまり強くはありませんが武道嗜んでいますのでご安心ください。」


「そっそうですか…」


「では行きましょう。」


「行ってくるね。」


「慌てて漏らすんじゃないぞ。」


「はーい。」


「ちょっと待ったぁぁ!!」


«えっ?»


大声の呼び止めに広間に居た皆が一斉にリュウカの方を向いた。


「一体、どうしたんだね!リュウカ君!」


慌てて警部が駆け寄ってきた。


「何だべ…?」


「リュウカ…?」


「リュウカ様…?」


「アリア、おまえ、本物のアリアじゃないな!」


«えっ!?»


「なっ何を言ってるの?私は正真正銘のアリア本人だよ?」


「そっそうだべ…?オラにはいつものアリアにしか思えなかったぞ…?」


「ワタクシもそう思いますわ…?」


「ほっほら!」


「ヨーコ、メグ、思い出してみろよ?お屋敷の庭でトランプした後、アリアは何て言ってお手洗いに行った?」


«何て言って…?はっ!!»


「えっ…?何なの…?二人ともその表情は…?」


「思い出したみたいだな、アリアあの時、こう言ったんだ!」


"あっあの…私はお花を摘みに行きたいんです…よろしいですか…?"


「さらにこうも言ってた!トイレの事をお花を摘みに行くって言うのは淑女の嗜みだって!つまり本物のアリアだったらまんまトイレに行くなんて言わないんだよ!」


「確かにそうだな!」


「リュウカ様の仰る通りですわ!」


「トイレって言っちゃったのは間違っちゃっただけで…?」


「アリアの事だ!もし間違って言ってたとしても恥ずかしがるはずだ!」


「ぐっ…私は本物だって。お姉ちゃんも何か言ってよ…?最愛の妹が変な疑いかけられてるんだよ…?」


「私も正直…アリアが本物かどうか疑ってた…確証はなかったけど…」


「わっ私は本物だってば!」


「向きになる所がさらに怪しいな?」


「ヨーコちゃんもお姉ちゃんもリュウカお姉さんも皆!怒るよ!」


「なっなんか今の本物っぽかったな…?」


「よく考えてみたら…アリアは普段、家ではトイレって言ってるわ…?お花を摘みに行きたいはよその家に行ったりする時に使ってる…言い間違う可能性も十分、あるかも…?」


「えっ!お前ら!」


「うぐっうぐっ…」


「なっ泣いてる!」


「私、漏らしちゃいそうだったから、慌てて言い間違えただけだったのに…こんな沢山の人の前で指摘されるなんて…うぐっうぐっ…」


「なっ…」


「わるかったべ。泣くな。少しでも疑ったオラ達が悪かったよ。」


「ええ。本当だわ。大事な妹を信じきれなくてごめんね…?」


「ワタクシも少しでも疑ったことを許してください…?」


「皆、わかってくれたんだね…よかった…」


「リュウカ君、どうやら君の早とちりだったようだね。こんな小さい女の子が泥棒三姉妹の一人なわけないじゃないか。」


「だよな。」

「そうだな。」

「あんな小さい子がね。」


「ちょちょっと!皆さん!」


「さぁ。アリア。お手洗いに連れて行ってもらいなさい?」


「うん。」


「では行きましょうか。」


「はい。ニヤリッ。」


アリアはリュウカに北叟笑んだ。


「あっあいつ!」

(やっぱり偽物なんだ!あいつの演技に騙されて誰も信じちゃくれない!これじゃこっちがオオカミ少年みたいじゃんか!何とかしないと逃げられるかもしれない!考えろ!考えるんだ!皆にあいつが偽物だってわかってもらう方法!ぐぬぬぬ…あれっ…?そういえばこの状況って…?)


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