第46話 ドラゴン娘の知らない所で入れ替わる。

「またオラがビリかー!」


«あはは。»


「悔しいー!」


撮影会(1時間、俺オンリー)の後、今度はメグにお屋敷のバラ園に案内されてそこに置いてあるテーブルセットでティータイムをすることになり、現在のトランプ遊びに至るわけだ。


「ヨーコちゃんは本当にトランプ弱いんだから。」


「スピード、ババ抜き、大富豪、神経衰弱、全部で負けた!」


「この中で最年少のアリアにすら勝てないんだものね。」


「確かにアリアさんは小さいのにお強いですよね。」


「えへへ…」


「くふぅぅ、食べなきゃやってらんないべ。モグッ。モグッ。」


「おいおい。ケーキの大食い勝負してるわけじゃないんだぞ?慌てて食べすぎだろ。」


「はしたないよ?ヨーコちゃん?」


「アリアの方が綺麗に食べてるわよね。」


「礼儀正しいし。まるで同い年と居るみたいです。」


「そっそんなことないです…」


「お姉様であるアンナさんの教育がしっかりなされているからなのでしょうね。」


「お褒め頂いて恐縮です…」


「きっとワタクシのお母様も同じ事を言うと思いますわ。」


「領主様の奥様のハニー・クラウン様ですよね…?」


「ええ。お母様はとある用事でお出掛けになっていますが。ディナーまでにはお帰りになられると仰っていましたから。ディナーの時には会えますわ。」


「領主様だけでなく奥様も…」


「緊張してくるね…」


「私は店を経営する者、恥ずかしくない振る舞いをしなくちゃ…」


「その格好でか?」


「ほえっ…?あっ!?私だけ服を着替えてない!?」


アンナは今頃になって、まだ自分だけがコスプレ(猫耳メイド)を着ていることに気づいたようだ。


「気づいてなかったのか?てっきり気に入って着てるもんだと?」


「オラもそう思ってた。」


「私も。」


「ニヤついてるし…あんた達、絶対にわざとでしょう…?」


「だってお姉ちゃん可愛いんだもん。」


「なぁ。」


「そうだよな。」


「あんた達、家に帰ったら覚えてなさいよ…」


「フフフッ。着替えにお部屋に戻りますか?」


「すみません…そうさせてもらいます…」


アンナは着替えにメグの部屋に戻った。


「あっあの…私はお花を摘みに行きたいんです…よろしいですか…?」


「そうでしたか。それならメイドに案内させますわ。そこのあなた。お願いするわね。」


「かしこまりました。行きましょう。」


「すみません。」


「花を摘みに行きたいってアリアはともかくアンナにもそんな乙女チックな所あったんだな。」


「リュウカお姉さんってば…?」


「なっ何だ…?その反応は…?」


「知らないのか。この場合のお花を摘みに行きたいはトイレに行きたいって意味だぞ?」


「えっ?そうなのか?」


「淑女の嗜みだよ…?」


「悪かったな、淑女じゃなくて…?」


アリアはお花を摘みに行ったらしい…


「なぁ?2人が戻って来るまでその辺を散歩してきていいべか?食後の運動したいからさ?」


「構いませんよ。」


「そんじゃ行ってくる。二人が戻って来たら呼んでくれ。」


「はーいよ。」


そしてヨーコも散歩に行って、テーブルには俺とメグだけになった。


(アンナは強いし、アリアはメイドさんと一緒だし、ヨーコは近くを散歩してるだけ、泥棒三姉妹と入れ替わったりしないよな…多分…?)


「リュウカ様のお連れの方々は本当に面白い方ばかりですね。」


「えっ!あっうん。そうだな。個性豊かなメンバーだよ。」


「ワタクシこれほど楽しい日はございませんわ。」


「大袈裟だな。学校とかで友達ぐらいいるだろう?」


「居ますけど。皆さん、ワタクシが領主の娘だからとどこか気を遣っていて…あまりこんな風に遊んだりした事がありませんの。」


「そうなのか、領主の娘には娘なりの苦労があるってやつなんだな。」


「だからワタクシは嬉しいのです。リュウカ様やヨーコ様がワタクシを普通の女の子として接してくれていることが。」


「そうかい。そりゃよかった。俺は君を普通に可愛い女の子って思ってるからな。」


「リュウカ様…」


「何だ…?」


メグが顔を赤くして胸に抱きついた。


「頬に口づけをしては駄目ですか♡」


「どっどっどうしてだ…?」


「じゃあ、リュウカ様がしてください♡」


「話噛み合ってないぞ!?それに執事やメイド達だって見て…?」


«見てません。»


全員、後ろを向いていた。


「あんたらグルなんかーい!」


「リュウカ様♡」


「なっなっなっ!?」


「なーんて。ここまでにしておきますわ。」


「ほえっ…?」


「嫌嫌な状態でしても意味はありませんから。」


「べつに嫌ってわけじゃないが…」


「それに抜け駆けしたら。あの三人に申し訳ないですし。」


「あの三人って…?」


「フフフッ。何でもありません。その代わりにアンナさん達がお戻りになられるまでこうやって抱きついてますわ。」


「それはいいけど…」

(この子って本当に大胆だな…?アリアの時みたいになるのかってドキドキしたぞ…?でっでも俺はロリコンじゃないからな…)


「ただいま戻りました。」

「ただいま!」


アリアとアンナが一緒に戻ってきた。


「一緒に戻ってきたんだな?」


「ちょうどよく廊下で会ったのよ。」

「そうなの!」


「アリア、メイドさんは?」


「ほかに仕事を頼まれたんだって走って行ったよ。ねっ?お姉ちゃん?」


「えっええ。そうなの。」


「そうか、メイドって大変なんだな?」


「それよりヨーコは?」


「あっそうだった!ヨーコー!二人が戻って来たぞー!」


「ほーい…」


するとヨーコは額に汗をかいて戻って来た。


「あんた、まさか走ってきたの?」


「庭が広くて、ついな…」


「相変わらずの馬鹿ね…?」


「フフフッ。本当に面白い方ですね。」


「それって褒めてるんだよな…?」


「あはは。ヨーコらしい。なっ。アリア。」


「そうだね!」


それからしばらく雑談をして、日が暮れたのでディナーの時間になるまでメグの部屋に戻ることになった。


(入れ替わり成功。ここからが本番よ。)


そして誰かが心の中で呟いた。


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