第17話 ドラゴン娘になって約1週間。
「スゥゥ…スゥゥ…」
「起きなさい、リュウカ!いつまで寝てるのよ!」
「ふわぁぁ、おはよう…」
「全くおはようじゃないわ。なんで毎回、私が起こしに来なきゃならないのよ?」
「朝から元気だな…」
「せっかく作った朝ご飯が冷めちゃうでしょう、着替えたら早く来なさいよ?」
「はーい。」
元高1の男子だった俺が美少女、ドラゴン娘に転生して異世界で暮らし始めて約1週間が過ぎた。それぐらいにもなるとこのドラゴン娘というか女の体にも慣れてきて、服を着替えるのも抵抗がほとんどないくらい、自分の体として慣れた。ちなみに今日の服は町の服屋で買ったフリフリの白いワンピース。絶世の美少女だから何を着せても似合うのだ。だから服を着るのは好きになった。
「はぁぁ。今日も世界一可愛い。」
人が近くに居なくて少しでも時間があったら必ず鏡で自分の姿を眺めることにしている。だってこんな絶世の美少女、たとえ今の自分の姿だろうと見ないなんてもったいないだろう、そしてこんな事もやったりする。
「龍我くん、好き。大好きよ。くぅぅ、たまらん。前世で言われたかったぁ。」
これは傍から見たら完全なナルシストだろう。だから一人の時にしかやらないぞ。
「リュウカお姉ちゃん、おはよう。」
「おはよう。アリアは今日も学校か?」
「そうだよ。今日は魔術のテストがあるんだ。だからちょっぴり憂鬱なの。」
「テストか、気持ちはわかるぞ。」
(魔術のテストはしたことはないがな…?)
流石に異世界の小学校だ、魔術も授業にあるらしい。まぁ、魔術と言ってもアリアぐらいの歳だと、泡を出すとかそんな感じらしいが。しかし上級生になると炎とか氷とか高度な術を習うらしい、本格的だ。
「しっかりしてね?冒険者になりたいなら初級魔術ぐらいはマスターしなくちゃ。」
「あれっ?アリアはポーション職人にはならないのか?」
「アリアは冒険者になるのが夢らしいの。」
「そっか、いい夢じゃんか。」
「えへへ。冒険者になってお姉ちゃんのポーション作りに役立つ素材を世界中から手に入れてくるのが夢なんだ。」
「考えすら立派じゃないか、とても9歳とは思えんな。」
「当たり前じゃない、私の妹なのよ。」
「その発言、シスコンみたいだよ。お姉ちゃん。」
「あっアリア。」
「仲の良い姉妹だな。」
アリアとアンナは本当に仲の良い姉妹だ。両親が殺され2人だけの家族ということもあるだろうが、見ていて癒される。
「リュウカ?私はアリアを学校まで送ったら、森に素材を取りに行ってくるから店番頼むわよ?」
「わかってるよ。アンナこそ、森の野生動物や魔物とかに襲われないように気をつけるんだぞ?」
「だから心配いらないって言ってるでしょう?いざとなったら肉体強化のポーションを飲んで返り討ちにしてやるわよ。」
「相変わらず自信たっぷりだよな。」
でもそれもそのはずだ。実はあのクズ男のルズ達を追っ払った件の後、アンナから本気を出せばあの三人ぐらい一人でも片付けられたと言われた。それがただの強がりじゃなかったと知ったのはその次の日、血や牙が素材になるからと魔物化した狼を二匹狩ってきたのだ。アリアいわく何でも魔物化した狼は体を鍛えた大人でも二人かがりでやっと倒せるほどの強さらしい。それを一人で二匹も狩れるんだから、アンナの実力は本物だ。
「じゃあ、行ってくるわね?」
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい。」
俺は二人を見送ると、エプロンを着て従業員としての仕事を始める。まずは開店時間までに店の掃除とアンナが前もって作ったポーションを商品名順に棚に並べる。
「これでいいな。」
ポーションの種類は定番の回復系と強化系を含めて全部で20種類、俺は何とか全て覚えた。というか鬼教官のアンナに覚えさせられたよ。だから一人で店番を任されてるわけだ。
「後は店先にオープンの看板を立てるだけだと。」
「あっ!リュウカちゃんだ!」
「今日も可愛い!」
「マジで天使だ!」
「皆さん朝早くから並んでくださってありがとうございます!精一杯、頑張って接客しますね!」
«可愛い〜!»
まだ開店前だというのに美少女、ドラゴン娘の俺目当てで客の長者の列が出来る、さらにアンナのポーションが質がいいのもあるだろう。
「お買い上げありがとうございました!」
「また来ます…」
「お待ちしてます!」
なので店を開けば売っているポーションは即完売なのだ。
「ふぅ、何事もなく終わったぜ。」
店にオープンの看板を戻して掃除を済ませたら、今日の仕事は終了。後は二人が帰ってくるのを待つだけ。ご飯作ったりしないのかって?しないぞ、一度作ったけど自分でも食えないほどマズイもの作ったからな、料理は絶対に作らなくていいってなったんだ。
「そろそろ、アリアが帰って来る頃かな?」
「ただいま!」
「おう、お帰り。魔術のテストはどうだった?」
「何とか失敗しないで合格点もらえたよ。」
「やったじゃんか。やれば出来るんだよ、アリアは。」
「えへへ。」
「ただいま。」
「お姉ちゃんお帰り。」
「お帰り。目的の素材は採って来れたのか?」
「当たり前じゃない。店は問題なく営業出来た?」
「ああ、ポーション完売したぞ。」
「やったね!」
「あんたが従業員になってからというもの本当に大繁盛ね…?ありがたいけど複雑な気分…」
「大丈夫だって、ちゃんとポーションの良さも評価されてるぞ!変なもの売ってたら誰も買いに来ないから!」
「そうだよ!自信持ってお姉ちゃん!」
「そうよね。ありがとう二人とも。」
「アンナって普段がクールな分、笑った顔はすごく可愛いよな。」
「なっなっ何よ、急に!」
「お姉ちゃんってば慌てちゃって、嬉しいんだ?」
「もう、アリアったら!」
「あはは。」
二人といると楽しい。こんな楽しい日々がいつまでも続くと思っていた、だけど3日後、事件が起きる…
「アリアが学校帰りに連れ去られた!?」
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