第6話 ドラゴン娘、女の子を送ってあげる。(前編)
熊から助けた赤い瞳で金髪の女の子、アリアから採った木の実を貰って、木の丸太に座り一緒に食べた。
「美味しかった。少し体力が回復した気がする。」
「この木の実はね。回復ポーションの原料に使えるんだよ。」
「おぉ、ポーションか。異世界だし、やっぱりそういう概念もあるんだな。」
「いせかい…?」
「あっいや、何でもない。でも本当に貰ってよかったのか?怪我してまで採った木の実だろう?」
「助けてもらったお礼がしたかったから。」
「本当に良い子だな、妹に欲しいぐらいだ。」
「えへへ。」
「そういえば、アリアは一人で森に来たのか?親とかは?」
「パパとママは去年、お店に強盗が入ってきて殺されちゃったんだ…」
「そうなのか…悪いこと聞いちゃったな…」
「いいんだよ…」
「じゃあ、今は一人なのか?」
「ううん、私より5つ年上のお姉ちゃんがいるよ。」
「よかった。お姉さんが居たんだな。」
「あっ!熊に襲われて逃げてたから忘れてたけど、そろそろ日が暮れちゃう、家に帰らなくちゃ!」
「帰り道、わかるのか?この森、結構広かったぞ?」
「どっどうしよう…?わからない…?いつもこんな遠くまで来たりしないから…」
「ありゃりゃ。」
「うぐっ、うぐっ、うわぁぁん!お家に帰れないよ!」
「泣くな。泣くな。俺が家まで送って行ってやるから。」
「ほえっ…?お姉さんは出口わかるの…?」
「ちょっと待ってな。」
(女神様!この子を送ってあげたいんですけど、何かいい方法はありませんか?)
《ありますよ。まだ使い方を教えていないコマンド、案内音声つきマップを押してください。》
(これですね。)
するとマップが出てきた。
(おぉ、本当にマップだ。)
《行きたい場所を下のボードに指で書いてください。そしたら現在地から行きたい場所まで音声で案内してくれるので。》
(わかりました。)
「何してるの…?リュウカお姉さん…?」
「君の家があるのは何の村か町だ?」
「トーチって町だけど…?」
「トーチだな。」
俺はボードに聞いた町の名前を書いた。すると…
『チース!ウチは音声案内役のマップルン!入力してくれたトーチの町まで案内を始める、Yo!』
(なんか濃いやつが出てきた。ちゃんと案内してくれるんだよな…?)
『安心なよ、Yo!うちは案内のプロだぜ、Hey!』
(あはは、本当に大丈夫かな…?)
《彼女の話し方はこんな感じですが、仕事は真面目にやる方なので。信じてやってください?》
(わっわかりました…?)
『目的地に着くまで仲良くやろうぜ、Yeah!』
(よろしく頼むな…?)
「リュウカお姉さん…?」
「まっ待たせてごめんな。家まで送るから行こうか?」
「あっうん…?」
俺らは歩き出した。
(それで目的地まではどのくらいかかるんだ、まっマップルン?)
『徒歩だと約30kmだ、Yo!』
(約30kmか、なるほど。って30km!嘘だよな!?)
『嘘なんかついてないぜ!ちゃんとした数字だよ!』
(まっまじか…?)
「あっあのね、一つ言ってないことがあったんだけど、私、護身用のためにお姉ちゃんから一時的に足腰が強化されるポーションを持たされてるんだ。それを飲んで走ってたから、かなり遠くまで来てると思うの…」
「だろうな…?こんな距離を普通の子供じゃ走れないだろう…?」
「知ってたの?」
「まっまぁな。」
「絶対に日が暮れちゃうよね…お姉ちゃんを心配させちゃうな…」
「仕方ない、あれを使うか。」
「あれって…?」
(女神様!完全なドラゴンになってもいいですか!この子を背中に乗せて飛べば、30kmなんてすぐですよね!)
《よろしいですよ。人助けのためですもんね。でもドラゴンのまま町には行かないでくださいね?敵だと思われてしまう可能性がありますから。》
(わかりました。気をつけます。)
俺は女の子から距離を取った。
「どっどうして離れるの?」
「今から驚く事が起こるから!気をしっかり持ってくれ!」
「驚く事…?」
「いくぞ、ドラゴンモード!オンッ!ぐおおっ。」
「わっわっわっ!」
「ウガアアッ!」
「ギャァァッ!!でかい怪物!!ぶわわわっ…」
「ありゃりゃ、やっぱりこうなったか…」
アリアは完全なドラゴン姿の俺を見て、あまりの驚きと恐怖で泡を吹いて目をグルグル回しちゃった。
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