ごくごく普通の邪教の聖女

メメント・モリ太郎

第1話、旅立ちの日に

 船乗りの男との真実の愛に目覚めた母は孤児院に私を預けて姿を消した。その後、裕福な教団の経営する孤児院で何不自由無く育ち私は立派に教団の信者となりました。


 偏った教育でしたが読み書き計算もそこそこ出来るようになりケガの手当てや護身術や泳ぎも覚え晴れて教団の聖女の1人になれました。やれば出来る。


 教団にも教義にも町にも文句は無いのだけどたまには肉が食べたいので孤児院を出られる年齢になったので冒険者になろう。毎日塩を作る生活も安全で悪く無いけどね、私の食欲と好奇心には敵わない。


「貴女の心のままに」 

 神官長様も改教しなけりゃ自由にして良いと言っていたし。冒険者になって肉を食べるのだ!


 という事で登録に来ました。何でも雑用係の冒険者組合の建物に来ました。何でも教団からの資金が入っていて、職員も孤児院の出身者が多数いるとか。


「登録に来ましたルカです」

 受付さんも孤児院出身の知っている女性で名前はメイさんですね。

「ダゴン教団の聖女の資格を持っています」

 登録はスルスルと終わり仕事を勧められた。一応、私は聖女だもんね。

「お勧めは大型船の乗務員、飲める水を何とか出来るなら給料良いし大事にされるよ」

 「海水から飲める水とそれ以外を分けるの呪文は日常的に使っていたけど、肉から遠くなるから遠慮します」

「仕方ないか。じゃあルカちゃんは首都の方を目指すの?」

「メイさん。出来れば、塩とか魚を買い付けに来る商人がいればそれに付いて大きな町に行こうかと」

「それが良さそうね、今は居ないから孤児院の手伝いをして待ってて、数日から1週間くらいで来るでしょう」

「皆にあいさつして出てきたけど、すぐに出戻りかあ」


 格好悪い旅立ちの日でした。


***

来訪ありがとうございます。

1話1000文字前後でコメディタッチのクトゥルフ神話風味のラヴクラフト・コメディです。

よろしくお願いします。


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