16:終幕!天下一武闘杯!

「といっても、お前も積みだろ。前回の試合で、存分に殴り合って流血してるお前はすでに【血流操動ブラッドマリオネット】の術中にいるっ!」


 右手を俺に向け、神力を高めるシアン。

 ならば俺も、すぐさまそれを封じるべく神力を練り上げる! 


「無駄だぜシアン! 俺の『凍て刺す慟哭』で、お前の神力は無効化される! 宣言するが、俺はそんな『丸裸のお前を容赦なくボコボコにする』! 覚悟しな!」


 本当は、慟哭を放ったらすぐに『暗雲球ブラックホール』でケリをつけたいところだが、大技を二連続で放つのは、今の俺には無理だ!

 今だって実は、あまり神力を練り上げられないでいる……。さっきバーバラを助けるために使ったばかりなもんだから、ちょっと厳しいんだよなーっ!


「ククク……。本当か? そんなデタラメな技、いったいどれくらい連続で使える?」


「……げげっ!」


 バレてーら!!!

 慟哭の連続使用ができないの、看破されてる!

 俺自身も今気づいたってのに!


「はははー! 挑発に乗って舞台に上がった時点で俺の勝ちは決まったんだよっ! 『血流操動ブラッドマリオネット』!」


「うおおおっ! 南無参! 『凍て刺す――』!?」


 奴の神力の波動! ガンバれ俺! ガンバって打ち消せっ! 

 やればできるうおおおおおおお――っ!!!




 ――にやりと、口角があがる。

 シアンのな――!

 や、やっべえー! 食らっちまった! 『血流操動ブラッドマリオネット』!


「ほら、やっぱり出せない……。当たり前だ。俺の凄まじい神力を消滅させるなんざ至難の業だ。それを何発も撃たせてたまるかっ!」


「う、うおおおっ! ま、まじで動けねえ! いや、意に反して動く! こ、これは……! ま、まさかあ!!!」


 体がまったく、俺の命令を聞いちゃくれない! 頭で動け動けと念じるばかりの現状、俺は、意に反して……ゆっくりと、ふ、服を、脱ぎ始めたあああーーーーっ!!


「だーっははは! 野郎のストリップなんざ見たくもないからよーっ! お前はすぐ降参するなら開放するぜー!」


「きゃー! ソーマ! やめてー! きゃー!」


「おおーーっと! ここでなんとソーマ選手も【血流操動ブラッドマリオネット】の餌食となってしまったー! ところでどうしてマリー・ベルはニヤニヤしているのかー!?」


 アナウンス席の二人も身を乗り出して大絶叫。会場も阿鼻叫喚だ。

 はらり。くっそー! 止めらんねえ!


「ほう、魔王の極悪な部分が今まさに披露されるわけね。ふふふ、お手並み拝見といきましょうか」


「ケケケー! 脱ーげ! 脱ーげ! ソーマよ、日ごろのわれに対する不敬のバチがあたるんじやー! やれー! 【血流操動ブラッドマリオネット】!」


 ローラン姫もニケも後でシバくとして!

 こ、このままじゃマジで公然猥褻だ! な、なんとか……はああああっ! 神力全開ッ!


「うおおおおーっ!」


「むう、なかなか抗うやつ。だが、お前の体内を流れる血を操ってるのだぞ。そんなの、神力といえど、血流を押さえつけるも同義! やめんか! 死ぬぞ!」


 シアンも負けじと神力を増幅させて俺にプレッシャーをかけて来る。

 て、抵抗できてはいるが、やはり徐々に……脱がされる!


 だ、だが……!

 未だに手を出してこないあたり、『血流操動ブラッドマリオネット』の使用中は、本人も動けなくなるみたいだな! バーバラの時も余裕かましているわけじゃなく、それが精一杯だったってわけだ!


 だよなぁ! 他人に影響を与えるほどの『拡大解釈』。そう簡単に確立させることはできねえ! 

 本当にその解釈を信じ切るために、何かしらのデメリットを払うことで、より具体的に解釈を広げられるわけだ。

 こいつの場合なら、『自分も動けなくなる』が『相手の血をも操れる』って具合か?


 解釈に対するデメリットの構築。

 ――『縛り』の付与による具体性の増加!


「……へへへ、お前、すげぇよ。『拡大解釈』は『縛り』を付与することでより具体性を増す。マジで勉強になった。今度、試してみるわ」


「なんだと……? 何を言ってる? お前が喋っていい言葉は『降参』だけだ。じゃないと全裸になるんだぞ? なりたいのか? 羞恥心皆無か?」


「なりたいワケねー! ……けどな、今大会、参加者はみんな、自身の異名コードネームを最大限に発揮できるように模索し、修練し、磨き続けてきた。本当に、尊敬に値する。そして、ありがとう――! お前らみんな、俺の力の礎となる!」


 暗中摸索してたどり着いた、今この状況を打開する答え!

 この大会で培った経験値が、俺に「できる」と確信させる!


「スースの【封神演義】……相手の神力を封印し、己で使えるようになる力は、俺によく似てると思わないか──?」


「は? ……ま、まさか……貴様!」


「そう! さっき俺は、お前の【血流操動ブラッドマリオネット】を消し飛ばしたが……似たような技なら、似たようにできない道理はねえよなあ?」


「そ、そんな……デタラメな解釈かあってたまるか! そんなバカげた解釈……『縛り』もなしに……!?」


「あるんだなこれが! なぜなら俺は、魔王!」


 俺はこれをできると確信した! だからできる! 縛りなど不要!


「いくぜ! これが俺の新技『魔王ラーニング』!  【血流操動ブラッドマリオネット】!」


「うぐっ!? バカな、う、動かな……!?」


「おっと! 意識が削がれて、神力が弱まったな? おかげで、俺は自由に動けるぜえーっ!」


「し、しまった! く、くそ! 降参だ! まいった! お前の勝ちだ!」


 奴の異名コードネームを完全にコピーした。しかも、これは意外っ! 俺、動けちゃう!

 どうやら、奴自身が自分に課した『縛り』まで反映されないみたいだな。

 おいおい、自分で考案しときながら、最高の技だな! 『魔王ラーニング』!


 そして……シアンはなんか言ってるが……。

 言葉の意味がちょっとわからんな。


「何いってんだお前? ……もしかして、知らなかったのか?」


「……ふえ?」


 降参だなんて、敵前逃亡。

 出来るわけ無いだろ。

 なぜなら俺は、魔王だぞ?


「魔王からは逃げられない!」


「う、うわあああああああ!!!」


 最初に言ったはずだぜ! 『丸裸のお前を容赦なくボコボコにする』とな!

 女の子を辱めた報いを受けなっ!




「──勝者! ソーマ選手! 優勝だー!!!」


 うっひょー! やったぜー!

 俺は、意気揚々と両手を高く上げて、勝ち名乗りを上げた。

 やっべー! 超きもちー!

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