11:開幕! 天下一武闘杯!
「この町を治めているのはルマンド子爵だったかしら? さっそく、交渉に行くわよ!」
つい身を乗り出してしまった俺の反応を見て、これはイケると思ったのか、その後のローラン姫の早かった。
まっすぐに領主の屋敷へと赴くと、マリー・ベルと共に身分を明かし、懇切丁寧に出迎えられた。
なるほど、うまいもんだ。武闘大会の話を切り出すと、ルマンド卿もすぐに話を食い気味に聞き込んでいた。
「武闘大会! なんともそそられるイベントではありませんか! 実はこの私も、昔は武芸を嗜んでおりましてな」
などという割には、すっかりお腹ぽよんのおっさんにしか見えないけどな。
「とはいえ、妾の考えでは、おそらく
「ふーむ。それを言われると、
「いえ。今回は思い切って……
なるほど! と膝を打つルマンド卿と同じ心境だよ。
やるなあ、姫様。素直に感心したぜ。
「──と、いうわけで、この町で武闘大会を開催していただけるかしら? ルマンド様?」
「ははあ、いやはや、なんとも面白い話ですな! この私も、ぜひとも一枚噛ませて頂きますとも!」
そして、あっさり承諾させてしまった。
俺もニケも、ただ話を聞いていただけ。マリー・ベルだって名乗っただけで、その後はローラン姫の独擅場だった。
「では、ルマンド様は賞金と賞品の準備を。それから、期日は今日より二週間後。というわけで、片道5日以内にある町村にも通達してくださる?」
「近隣の町村も巻き込んでの一大イベントですな! これは数多くの参加者が募りますぞ!」
「そうね。あとは、妾たちも準備がありますので、支度金9,999,999Gほどいただけるかしら?」
思わず吹き出した。
「所持金のカンスト値要求すな!」
ツッコミで頭を叩こうとするのをどうにか抑えた自分を褒めたい。
「わかりました。ではこの満杯の巾着袋をどうぞ」
「満杯の巾着袋ってなに!」
見たことないくらいにぱっつんぱっつんの巾着袋をメイドが用意してきたのを、ローラン姫は平然と受け取るのだった。
かくして、武闘大会の開催が思いついたその日にもう確定した。期日は二週間後か……。
「よし。じゃあ当面の金も手に入ったことだし……まずは、アレだな」
マリー・ベルの当たり前と言わんばかりの提案に、ローラン姫もまた、当然といった様子で頷いた。
「そうね。アレといきましょう」
「アレってなんじゃ?」
「さあ……?」
ニケと同様に首をかしげ、彼女らが進むままに俺たちはついていく。
しかし、次第に、見覚えのある道に差し掛かると、俺もようやく、合点がいった。
ああ、そゆこと。まあそりゃそうだわな。
わかったところで、俺が代表して、その店のドアを開け放つ。
「へえ! こりゃおどろいた! 食い逃げ犯が金払いにきやがった!」
「この度は……まことに……」
「すまない。悪気はなかったんだ。この通り!」
「今からでも、別に殴ってくれても構わないわよ?」
「なんなんこいつ……」
──そして、二週間後。
天気は快晴。
会場には、満員御礼!
「さーあお集まりの皆様ぁ! 心の準備はよろしいでしょうか! 天下一武闘杯! 今ここに、開幕でえーす!」
「今回の出場条件はずばり!
ローラン姫の提案通り、参加条件は
そしてこの大会の狙い通り、腕試しをしたい若者たちがわんさか集まった。
「チャンピオンには優勝杯と賞金を授与いたします! 上位入賞者の方々にも応じて賞金がありますので、皆様大いに戦い抜いてくださあーーいっ!」
そしてもう一つ。
今大会の呼び水というか、カンフル剤というか。大きな声のアナウンサーの隣には、マリー・ベルの姿があった。
「解説はあの我が国が誇る四天王【
「よ、よろしくお願いすま、します……」
ははっ、大勢の前で緊張してら。
「さあ! マリー・ベルの解説が賭けのオッズを左右しそうですね! そちらのマネーゲームも大いに楽しそうです! 観客も一攫千金のチャンス!? どしどし賭けましょーうっ!」
個人的には、賭け事はあまり好きじゃないんだけど、この盛り上がりをみれば、俺が少数派なのがよくわかる。
ま、俺は呑気に試合を観戦しながら、そんな人々の一喜一憂の表情も楽しむことにしよう。
「それではさっそく第一試合! クロン町のギルドに所属!
おお、無敗選手か。
こりゃ対戦相手によっては、オッズが偏るぞ。
「対するはこちらはなんと
……え!?
いや俺!? 俺出るの!?
聞いてないけど!?
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