記憶喪失な俺、カノジョが二人、どっちが本命ですか?
さい
第1話 記憶喪失
「静波くん」
夢を見た。
黒髪ロングの、清楚という言葉がよく似合う美少女とキスをする夢を。
ベッドに倒れ込んで、エッチをはじめる夢を。
「静波」
夢を見た。
金髪ショートの、濃艶という言葉がよく似合う少女とキスをする夢を。
ベッドに倒れ込んで、エッチをはじめる夢を。
「はっ」
目を覚ますと、俺はベッドにいた。
天井は白。
「光太郎」
ふと、右から女性の声がした。
右を見ると、そこには、椅子に座る一人の女性がいた。
女性は目から涙を流していた。
俺は、自分を指差して。
「光太郎って俺?」
そう言った。
○
「えーっとね、光太郎くんは激しい衝突によって記憶が飛んでしまっているみたいだね。まあ、一時的なもの、そのうち記憶が戻ると思うよー」
なんてことを、医師が言っていた。
どうやら、俺は記憶喪失になってしまったらしい。
原因は、頭の強打。
一日ほど、意識を失っていたようだ。
俺の名前は静波光太郎。
灰原高校に通う、高校二年生。
部活には所属していない、いわば、帰宅部のようだ。
「俺ってどんな人だった?」
車の助手席に乗り、運転をしている女性にそう言った。
彼女は俺のお母さんらしく、さっき、泣いて俺の名前を言った人だ。
「そうだねえ、優しくて、頼り甲斐のある人だった」
「へえ、なるほど。頑張ってみる」
窓から外を見た。
はあ、何がどーなってんだよ。
記憶喪失とか……。
いてッ。
俺は包帯の上から頭を抑えた。
「光太郎、大丈夫?」
「あっ、うん……」
ん?
脳内に黒髪ロングと金髪ショートの女の子が映し出された。
さっき、夢の中で出会った女の子だ。
なんだ、誰だ……?
わからないが、俺の記憶なのか?
「な、なあ、お母さん。俺って彼女とかいたの?」
すると、お母さんは笑い出した。
「何言ってるの、光太郎に彼女? いるはずないじゃん」
「はは……そーっすよねー」
「けど、わかんないなー」
「えっ?」
「光太郎ね、時々何を考えてるのかわからないの」
お母さんは真剣な表情になっていた。
「もしかしたら、彼女もいたのかもしれない。秘密主義な子でね」
俺には秘密があるのか。
「まっ、あまり深く考えないで、どうせすぐに記憶戻るしさ!」
「う、うん」
○
次の日、俺は自分のクラスである二年B組の自分の席に座っていると、一人の男の子が話しかけてきた。
「おっすー、光太郎!」
めちゃくちゃ馴れ馴れしい。
ん、てことは、友達……。
「おっ、おう……ひょっとして、友達?」
「ひょっとしなくても友達だ、つーか、親友。なんだよ、それ?」
どうやら、彼は俺の親友のようだ。
「いや、それが──」
俺は、自分が記憶喪失であり、何も覚えていないことを伝えると、男の子は驚いた。
「は!? なんだよそれ、まじ!?」
「まじだよ、君の名前もわからない」
「まじかー、悲しいなー。けど、記憶喪失ならしょーがねーし、一時的なものだもんな。俺は要結城」
ダメだ。
名前を聞いても思い出せない。
「結城って呼んでくれ」
「わかった、ありがとう」
そうだ。
結城は親友なのだ。
俺のことを深く知っているはずだ。
あの二人の女の子の正体も。
「なあ、結城。俺って彼女とかいるのか?」
すると、結城は、ぷーっと吐き出すように笑いだし、お腹を抑えて。
「お前、何言ってんだよ。お前が彼女? いるはずねーじゃん!」
「はは、ですよねー」
いないのか。
なら、なんなんだ、あの二人の女の子は。
「お前は童貞だ、しかも、キスもしたこともねえな!!」
「なるほど……そういう結城は」
「俺か? もちろん、ドーテイだ」
どこか誇らしげにそう言う彼を可哀想だと思ってしまった。
「俺は好きな人と初めてをするんだ」
「お、おう……」
ただの妄想だったのか?
○
昼休み、図書室にて。
「遅い……」
一人の制服姿な黒髪ロングの女子高生が、本を置いてそうつぶやいた。
「静波くん……何してるのかな」
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