第1章 最南端の村 編
第3話 【魔物らしい】
「ひとまず最低限必要なものはこれで整ったかな」
装備は整ったが少し問題も見つかった。食料に関しての問題だ。
飲料用の水、様々な調味料や調理法の載った本なんかはストレージから取り出せるのだが····なぜか魚や肉、そして野菜などはアイテム欄に存在しない。
これも“生物“を入れられない収納箱と同じような原理なのだろうか?
どういう原理なのかは未だわからないが、今一つだけ確かなことは、食料をどうにかして手に入れなければならないってことだ。
「遠くに見えた街に行ってみるか?いや····この世界の事情を全く知らないまま行くのは危ないような気もするな」
『カサカサ』
そんなことを考えていると、すぐ横の茂みから何か音が聞こえたような気がする。
「ギャオ"ゥッ!!」
「ほへっ!?」
突然何かが飛びついてきた。
反射的に避けたがあれは一体なんだ····?
目の前に現れたのは、犬····?いや、狼のような、黒いオーラを纏った化け物だった。
すぐに腰に携えていたGlock17を手に取りしっかりと握る。そしてその化け物に照準を合わせ·····撃つ!
『パンッ!パンッ!パンッ!』
「キャィンッ!!」
『パンパンパンッ!』
計6発の射撃で化け物は地面に倒れた。しかし、命中していたのは2発のみ。1発は前足、もう1発が運良く脳天に直撃したようだ。
「はぁ····はぁ····」
重要なことを忘れていた。ゲームのデータからアイテムを取り出す能力を手に入れただけで、決して自分自身が強くなっている訳では無いということを。
そして·····生き残るためとはいえ、生まれて初めてこの手で動物を殺めてしまった。その罪悪感と目の前の光景からか、とてつもない吐き気と寒気が押し寄せてくる。
その日は何も食べずに飲料水だけ飲み、狼の死体を収納箱にしまってから寝袋で眠った―――
異世界に来てからニ日目の朝、今は昨日倒した狼の解体をしている。
頂いた命は無駄にしてはいけないと自分に言い聞かせ、食べることにしたのだ。
「ふぅ·····こんなものかな?」
動物の解体なんて今まで一度もしたことはなかったが、まぁそれなりには上手くできたと思う。
(サバイバル系統の本を読みながら解体しただけだけど····)
ストレージからガスコンロ、ボンベ、フライパンを取り出す。ガスコンロを地面に置き、フライパンを乗せ、ガスコンロに火を点ける。
まずはそのままをと、一口大にカットした狼の肉をフライパンの中に入れる。
4,5分程焼いてから、一つ食べてみる。
「なるほど·····硬い、臭い、不味い」
しばらく美味しい物は食べられそうにない·····
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