廃ゲーマーの俺は、異世界に転生させられるらしい

夜盗

序章  俺、転生することにするよ。

第1話 【転生らしい】



「――て――おき――さい――起きて下さい!」



 目が覚めると、そこは全く知らない場所だった。

 何も見えない····というのは違う。

 何もない····?


(えっと、俺の名前は三浦優里みうらゆうり、引きこもりのゲーマーで····)


 まあいい。自分の名前は覚えてる。歳もわかる。だが一体ここはどこだ····?

 気持ちの整理もつかない中、俺を起こしたであろう何かが話し始める。


「ようやく気付きましたか····貴方は先程、不幸にも亡くなったのです····」


「は·····?急にそんな事言われても……ていうかそんなわけない、だって俺は確か、ついさっきまで·····」


 あれ?言われてみれば確かに少し前までの出来事を思い出せない。

 混乱している俺を気にも留めず、女性?は話を続ける。

 声質的に女性であっているはずだ。


「2032年12月24 日、あなたはゲームソフトを買うため外出し···その帰りに凍った路面の上で足を滑らせ、地面に強く頭を打ちつけてしまい亡くなったのです」

 

 そうだ、思い出した。俺は今日発売したFPS [War of World] 通称WoWの新作を初回特典版で買うために出かけたんだ·····それでその帰りに死んだってわけか。


 そう、俺は自他ともに認めるFPS廃人で、このWoWシリーズの総プレイ時間は30000時間を超えている。

 そんなWoWの新作をプレイすることのないままくたばってしまったのは悔やしいが、起きてしまったことは仕方がない。

 俺はそういうところを割り切れる紳士的な男だ………


 それよりも今考えるべき問題は、

 ここがどこで、目の前にいる彼女が誰で、

 これから俺はどうなるのかってことだ。


「あなたは?

 それにここはどこですか?」


「私はあなた達の世界を見守る女神です。

 ここは貴方の思想空間とでも言いましょうか。

 いわば貴方の心の中です」


「――……なるほど。それでこれから俺はどうなるんですか?」


「はい。あなたはこれから生まれ変わり、新しい人生を歩むことになります。

 その選択肢として、今まであなたが生きてきた世界で別の人間として生まれ変わるか、今の身体はそのままに、あなたの住んでいた世界とは違う異世界で生きるか選択することができます」


 なるほど·····前者は通常の転生だとして、後者はいわゆる異世界転生?転移?というやつだろうか····?

 漫画やアニメではよく聞くような話だが、とても興味を唆られる。


「後者の異世界とやらが気になるのでそっちで」

「かしこまりました。では転生時の特典として、なんでも1つ好きな物を授けましょう。それは伝説の武器でも構いませんし、超人的な能力であっても問題ありません」


「ふむ――……では俺が今までプレイしてきたゲームのデータを持って行きたいです―――」


 それからしばらく女神様?と俺が授かる能力について相談し、異世界へ転生するにあたって必要な説明を受けた。

 半分くらいしか頭に入ってないが。


「―――かしこまりました。

 それではこれからあなたを異世界へ転生させます。

 あなたの新しい人生に女神の加護を」


こうして俺は異世界に飛ばされたのであった

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