遺跡の街、アルティアに到着!
一週間の旅を経て、冒険者の町とか遺跡の町と呼ばれるアルティアという町に到着した。
途中にあった国境では、冒険者ギルドの馬車の御者が、全ての手続きをして人数確認しただけで、呆気ないくらいに素早く終わってので、吃驚した程だ。
「嬢ちゃん、必ず冒険者ギルドの紹介した宿屋に泊まるんだぞ?」
「最初の依頼は街中か、東門の方面だからな?」
「東のモンスターは弱めだが、だからといって森の奥に入ったらだめだぞ?」
保護者かな?
ババンババンバン…なお笑いのラストの合いの手みたい。
「もー!分ってますよー!金貨だってちゃんと両替しましたし、大丈夫です」
私が言えば、おじ…お兄さん達は笑った。
最初、食事を買うのにうっかり金貨を出してしまって、注意をされたのだ。
金貨にした方が嵩張らないとはいえ、庶民の店で払うのはご法度である。
いや、強ければ問題ない。
でも、か弱い女性が使っていれば、カモにされてしまう。
ついでに、お釣りも店側が持っていない場合もあるし、何もそのお金を狙うのが店の人だけではないのだ。
結局、安全策として途中の冒険者ギルドに大金は預けて、持ち歩ける程度の金額を両替して貰った。
本当なら両替商とかの出番で、手数料分引かれるのだが、冒険者ギルドが銀行と両替商の役割をしてくれて、手数料も取られない。
すごいぜ冒険者ギルド。
新しい町の大きな冒険者ギルドに到着して、私は旅の道連れの人々と別れの挨拶をした。
そして、紹介状を持って、冒険者ギルドの受付に提出して、依頼を選ぶ。
「ふむふむ。やっぱり最初は地道に薬草採取が良さそう」
依頼の貼ってある掲示板から、画鋲で止めてある紙を抜き取って、受付に戻って依頼を受けた。
勿論、お勧めの宿も聞いて、依頼の前に寄る事にする。
「黄金の野うさぎ亭」というのがその宿屋で、母娘で経営する、女性冒険者にお勧めの宿だという事だ。
一階は食事処となっているので、そこには男女問わず人が入るのだが、煮込み料理が美味しいと評判のお店らしい。
「こんにちはー。冒険者ギルドに紹介されて来たんですが、連泊でお願いします!」
「あらーいらっしゃい」
「いらっしゃいませー!」
おっとりとした美人なお母さんに、元気の良い娘の組み合わせだ。
宿帳を出されて、そこに名前を書き込む。
「一週間のお泊りなら、サービスで簡単な朝食をつけますよ」
優しく微笑む美人女将はリサさんという。
娘はリヤちゃん。
「じゃあ、一ヶ月で!」
私の元気な返答に、まあ、とリサさんはころころ笑った。
「それならお弁当もつけちゃうわ」
「うれしいです!」
私は一か月分の宿賃を前払いすると、リヤちゃんに部屋に案内してもらった。
二階の角部屋だ。
窓を開けると、木々と町並みと、近めに町の外壁が見える。
ここは初心者のよくいく東門の近くで、治安も悪くない。
「帰ってきたらお湯を運ぶから、身体を拭いたらそこのトイレに流してね」
「うん、ありがとう、リヤちゃん」
笑顔でお礼を言うと、リヤちゃんはニコッと笑顔を見せた。
私も釣られて笑顔になる。
「はい、これ部屋の鍵だよ。出かけるときは窓もきちんと閉めて行ってね。泥棒避けはしてるけど、用心はしないといけないからね!」
「はーい」
小学生くらいの女の子が注意をしてくれるのはとっても可愛い。
私は笑顔で返事を返して、戸締りをすると大きな鞄を宿屋に残し、依頼を達成すべく東の門から森へと向かった。
門にいる衛兵さん達も良い人たちで、口々に気をつけるんだぞー!と声をかけてくれた。
うーむ。正ヒロインマジックか?
まあいい。
薬草の見た目はきちんとギルドの方で添えてくれて、採取した薬草を入れる袋も貰っている。
私は指示に従って、似たような葉っぱを捜して、引っこ抜く。
ふふふ。
こういう地味な作業、意外と好き。
「あ、でも同じ所で取りすぎたらいけないのかな……聞いてくれば良かった」
立ち上がって森の中を覗くと、ぽいんぽいんとたまにスライムが跳ねている。
いわゆる最弱のモンスターだけど。
私もまだ最弱のニンゲンだ。
ふむ。
もう少し成長したら、スライム先輩の胸を借りよう。
胸がどこかわからんけど。
私は少し離れたところで、また薬草採取に勤しんだ。
パンパンになった薬草袋を持って、東門へと戻る。
衛兵のおじさん達とお互いにお疲れさまーと言い合って、冒険者ギルドに薬草袋を提出。
依頼は過剰達成になった。
薬草の質も良くて、量も多いから、複数達成した扱いになったのだ。
これで一日分の宿代は稼げた事になる。
でも、逆にだよ。
一日薬草採取したとして、三日分くらい?
夕食食べたら二日分?
薬草採取だけじゃ暮らしていくのがやっとです。
やっぱり戦わねばならぬ。
その為には授業を受けなくては。
あ、そーだ。
聞きたかったことあったんだった。
「あの、その水晶玉って、個人の情報が見れるんですよね?自分の情報を自分で確認する魔法ってありますか?」
「ありますよ。鑑定魔法の初期魔法に。他人のは見れないのですけど、一銀貨になります」
「買います!あと他に便利なのありますか?」
「そうですねぇ。女性なら
「買います!」
宿代より高い!でも仕方ない!乙女の嗜み!
「あ、あと明日の授業参加したいです!」
「はい、分かりました。じゃあこれ、魔法書です。読んだら消えるので」
おお、ファンタジー!
茶色の小さな本を渡されて、読むと中の文字がうにょって浮かび上がって消えた。
それと共に手の中にあった本も消える。
何これすごい!
続けてもう一つも覚える。
うにょって消えた。
「これも、迷宮から見つかるんですか?」
「そうですね。でもこの茶色のは劣化版で、魔法協会で買える物なので魔道具に近いかもしれません。冒険者ギルドのこれも魔法協会から買って置いてる物です。あ、手数料とかは取ってませんよ?便利なサービスみたいなものです」
「分かりました。お世話になりました。また明日きますね!」
宿屋に帰って、早速魔法を試す。
「
おお……ゲームのUIみたいだ。
ふむふむ。
ああ、魔法の基礎は学園でやってたから、四大元素の魔法に光魔法が使えるのね。
薬草採取スキルがある!
野営準備スキル、ってこれ、旅してきた時に手伝ったのもスキルとしてカウントされるんだ。
まあ、手順を覚えたから、やってみろって言われたら出来るもんね。
えー何か楽しい。
覚えた事が目に見えるって、楽しいじゃん。
学校の授業もこれ取り入れたらいいのに。
勉強も、どんな授業だって絶対楽しくなるよ。
コンコン、とノックされて、リヤちゃんの声がする。
「お湯持ってきましたよー」
「重かったよね、ありがとう」
受け取ると、リヤちゃんははにかむ。
可愛いなあ。
まずは魔法で身体を綺麗にしてから、
はああ……。
極楽じゃ。
ああ、でもたっぷりのお湯に浸かりたい。
いつか、お金持ちになったら大きなお風呂作るのでもいいし、何処かで温泉見つけたら入るでもいいし。
その日は夕食を食べることなく、足湯を満喫して私は眠りに就いたのである。
スヤスヤ。
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