指先にジギタリス

星 雪花

指先にジギタリスの花絡ませて恋とは何か君に問いたい

花びらが舞い散る初春はつはるるるるるる、ピアニッシモのように口笛


葉桜になったらおいで

萌えいづる さみどり色の恋をしようよ


夕空は、いちめん茜色になり

夏来なつきにけらし蚊取り線香


僕たちの失敗だったね

夏の日に触れあうようにキスをしたのは


くもりぞらみたいな孤独を呑みこんで

ぼくはぼくでしかいられない罪


「夏だね」と君がささやく

吐息までラムネ瓶から青く染まって


エアコンをつけない君はゆっくりと均されていく僕の温度に


「命って燃えるんだね」と言う君の線香花火のような傷痕きずあと


気づいたら終わりがきていたそんな日もあるよね今夜は月が綺麗ね


砂糖菓子だけが食べたい真夜中に甘く囁く恋なんて嘘


孤立したスタッカートになれなくて

君の矛盾を愛してしまう


口づける直前、君は名も知らぬスケープゴートと消えて 潮騒


叢雨のように過ぎゆく悲しみに意味などないよと君は笑って


足元が崩れ落ちていくような気がして最後の目薬をさす


これはもう死んでしまった恋だから

ハッピーエンドになんてなれない


曇天を突き刺すにはまだ足りなくて 

東京タワーの上の半月


君と見た夜空を覚えていたいから

星のあいまに栞をはさむ


何もかも消えてしまった夜に見る蛇と銃口みたいな星座


絶望に名前をつけて君だけが知ってる遠い星の言葉で


さようならなんて言えずに

ぼくたちの世界がゆっくり壊れるワルツ












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