鏡の森のアリス

くまんばち

第1話「殿さまバッタ」

 少女のアリスは退屈していた。彼女は草の上に寝転がり、雲が流れるのをぼんやりと眺めていた。そのとき、アリスの目の前を白いバッタが車輪のように回りながら通り過ぎた。白いバッタは時計を取り出し、何かをつぶやきながら急いでいる。

「もう時間がない! どうしよう…」


 すると、森から時計が飛び出して言った。

「ここにいるよ! 時間ならあるさ、ポッポー」

 白いバッタが草むらの中に消えると、アリスもその後を追いかけた。


 白いバッタを追いかけているうちに、ばったりと殿さまバッタが引く馬車に出くわした。殿さまバッタはまるで王様のように振る舞っている。

「おや、お嬢さん。バタバタし、とーるね?」

 殿さまバッタが言った。


「白いバッタを追いかけているんです。彼がどこに行くのか知りたくて」


「ふむ、それなら私の馬車に乗って行くといい。車バッタはいつも不思議な場所に行くものだから」


 アリスは馬車に乗ろうとしたが、彼女の体は大きすぎて馬車に収まらない。困ったアリスはどうしたらいいか考えた。

 そのとき、アリスの目に小さな瓶が映った。瓶には『飲んでみーる』と書かれたラベルが貼ってあった。アリスは思い切って瓶の中身を舐めてみた。すると、たちまちアリスの体が小さくなった。今度は馬車にすっぽりと収まることができた。

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