『花/幽霊/白墨』

お題『花/幽霊/白墨』

制作時間:20分程度


 目が覚める。


 ここは…墓地?


 こんなところに放置されるとは、悪趣味な悪戯をされたものだ。


 私が腰を上げると、違和感を覚える。

浮くような、ふわっとした優しい感覚。

心地よいのは一瞬で、すぐに重力に引き戻される。


 立ち上がると最初に目に入るのは、私の苗字が彫られた墓と、供えられた花束。


 悪趣味にも程があるだろう。


 私は怒りの赴くままに石を投げる。


 明後日の方向に飛んでいった石を眺めて、私は少し反省する。

でも、こんな悪戯を仕掛けた奴が悪いからな、誰かに当たってても恨むなよ。


 そんな言い訳を心の中でしながら少し周りを見ると、私の苗字が彫られた墓にはよく道路で落書きするのに使っていたチョークや、大好きなサイダーの缶が供えられている。


 サイダーを飲みながら私は考える。

どうやったら悪戯をした奴らは出てくるのか?


 そうだ。


 明らかにやばいことをやれば止めに来るに違いない。


 私の苗字が彫られた墓に、チョークで落書きをする。


 これで天国に行けなくなったらやだなぁ、そんなことを考えながら誰に向けるかもわからない悪口を書き綴る。


 やがて日が暮れ、チョークは短くなってもう書ける状態ではなくなってしまった。

ネタバラシもまだだし、今日は一旦眠ろう。


 明日にはきっと、迎えが来てるはずだから。

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