記録:文字を打つ軟体動物

文字を打つ軟体動物

『宇宙』

お題『宇宙』

執筆時間:10分程度


「ぼくの夢は、宇宙に行くことです!」

〜〜

 あぁ、疲れた。

採掘した鉱石を台車に載せ、俺は基地へと足を進める。

この服は動きづらいが、これでも安全性を削り機能面に踏み出したチャレンジングな代物だそうだ。


 安全第一、生還を目標に。


 そんな時代はもう去り、宇宙に簡単に踏み出せるようになった人類は、やがて人の命を軽く扱うようになった。


 効率第一、成果を十分に。


 そうして俺の収入は賄われているわけだが、それはそれとして納得できないものはある。


 俺は夢を叶えるため、煙草も酒もやってこなかった。

自分を磨き続けた。

全ては宇宙に踏み出すためだった。


 今じゃなんだ、一般家庭でも宇宙旅行に行けるそうじゃないか。

夢を叶えるための努力は無駄になり、俺は堕落の一途を辿るばかり。

基地での煙草や酒は許可されていて、俺もすっかりハマってしまった。


 こんなことになると、簡単に夢が叶ってしまうと知っていれば、不良でもリア充にでもなってやったのに。


 嗚呼、あの頃が懐かしい。

夢を見て、一直線に進んでいたあの頃が。

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