あなたとだけはステイホームで

澄瀬 凛

あなたとだけはステイホームで

 いつの頃からか、彼は友人や恋人と遠出どころか、外出をすることがなくなっていた。

 幼稚園、小学校、中学校、高校。大学。

 それぞれでの学校行事。

 遠足、運動会、参観日、プール授業、学校祭。

 事あるごとに、彼の身の回りでは事件が起き、彼の身を案じた両親が即座に彼のもとに駆けつけ、起きた事件を、解決してくれた。


 両親共々、名探偵。

 彼にもその血筋は、確かに受け継がれている。

 だが彼は、両親の様に起きた事件を推理で解決に導ける訳ではない。

 ただ名探偵ならではの、物騒な事件を引きつける体質のみを、彼はそれだけを、受け継いでしまったのだ。

 その、探偵が事件を呼び寄せるという一種の法則によって生じる我が子の微妙な立場と人間関係の変化と問題までは、両親も完璧に解決できる、という訳ではない。

 もういっそのことグレて不良にでもなろうかと思ったこともあったが、変に他人の恨みでもかい、あるいは犯罪にでも手を染めて、探偵から一転、なにかしらの事件の犯人やら被害者やらにでもなってしまったら、それこそ目も当てられない。


 そして彼は今日もまた、自室で幼馴染みの彼女が買い物から帰ってくるのを静かに待っている。買い物くらい一緒に行きたいと申し出ても、あっさり断られる。

 そして、こう言われるのだ。


 あなたと一緒に外出なんてしたら、きっと、いや絶対、碌なことにはならならないから。

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