第20話 ダッチワイフを捨てる

リアルタイムとしては、引っ越し自体は終わったものの、荷解きはほぼ手つかずで、部屋は段ボールタワーが乱立している状況である。。

コンクリートジャングルならぬ段ボールジャングルである。


さて今回は引っ越し直前の記録。


あぁ、あったなぁ、こんなの。。。

思い出したくもなかった。。

部屋にダッチワイフがある現実を受け入れたくなかった。。。

向き合いたくなかった。。。


何年前だろう。

ちょっとしたお小遣いが入り、面白半分にアマゾン経由で買ってしまったダッチワイフ。

タイプとしては首下から腿までのシリコン製。

面白半分とはいえ、当時も今も何故買ってしまったのかわからない。

荷物を受け取った時、想像以上の重さと大きさでびっくりしてしまった。

開封してみて、溢れ出る無駄感に途方に暮れた。

とにかく重い。大きい。無意味に存在感がある。

結局、初日の夜に物置に移したきりとなっていた。


彼女にこれはとてもお見せ出来ないため、何としても廃棄する必要がある。

しかし一度に捨てようとしても、重量的に憚れた。

解体しかない。。。

最初、シリコンの身体にナイフの刃を入れていたが、想像していたよりもうまく切れずにいた。

と同時に、殺人犯が死体を処理するときはこんな風なんだな勝手に想像していた。

思ったよりも解体が進まず、腿の1つを分離するだけで30分位にかかってしまった。

多分、殺人って殺すことよりもそのあとの方が大変だと思う。

これは間違いない。

手持ちのナイフではあまりに効率が悪かったので途中からハサミに切り替えた。

この変更はかなり正解で、解体効率はかなりあがった。

焼肉屋さんでハサミを使う場合がある。

今まで料理にハサミを使うことには違和感しかなかったが、この効率の良さを考えると、なるほどと納得できた。

途中、刃が手に当たり少しだけだが手を切ってしまった。

滲み出る血。

それがシリコン製の身体に移り、死体っぽさがよりリアルになった。

完全に事件現場だよ。。。

大体2時間以内にはシリコン部分と骨格にあたる金属部分を分離することができ、またシリコン部分も何個かに分けることができた。

そして、結果的にはダッチワイフを無事手離せた。

肉体的にも精神的にも疲れ果てた。

今改めて考えると、ダッチワイフだけに私の1人目のお嫁さんはシリコン製のようだ。

となると、今の彼女は2人目のお嫁さんになるわけか。

なるほど、私はバツイチで再婚なのか。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る