第18話 オプティマス・ブリッジ
アルキは、杏子達に聞こえないところで一華に連絡を入れる
「一華、「とある兎角」の事件現場一帯を、封鎖してくれ!出来るだけ人が寄りつかないように。もともとあの事件以来「汚染」されているから、寄り付けないはずだが、おそらく、かなり危険だと思う。それと四ノ宮警部に匿名で情報を流して欲しい!流す情報は「田口修二」の後輩について……教師になる前の、大学関係で親交のあった人物!……」
「……」
「……ああ……そうだ……なるべく人払いを……「ターキー」を使うことになるから……ああ……よろしく」
アルキ達は急ぎ現場に向かう、場所は全長2キロ以上にも及ぶ巨大な橋「オプティマスブリッジ」。
母親の話を聞くと、
「オプティマスブリッジ」へ辿り着くには、歩きと電車を使い最大でも2時間もすれば到着するだろう
だとすれば、もうすでに何らかの行動を起こしていると考えるアルキは、愛車に二人を乗せて猛スピードで現場に向かう
「アルキ……「あの橋」……わたしあれから行ってないの……」
「ツラかったら無理しなくていいんだぞ」
「……ううん……わたしは
「そうか……とにかく杏子は俺から離れるな」
「うん!」
「アルキ先生、「犯人」は
「そうだな……始めは「復讐」だったはずだ!探求科に「復讐」するために「学校の七不思議」で「共振」の実験をしていたし、
「じゃあなぜ学校ではなく「オプティマスブリッジ」に?」
「「オプティマスブリッジ」には
「――なっ!?そんな!」
「これは「犯人」の考えというよりも、別の「何者」かによる「知恵」が入っていると思う……「兎角」のことを知り尽くしている「何者」かの……なぜなら、
「アルキのせいじゃないよ!」
「そうです!アルキ先生は僕達を守ろうとしただけです!」
「……ありがとう」
アルキが一華へ連絡した通り「オプティマスブリッジ」は完全に封鎖されている
だが全長2キロ以上の橋の中央には、小さな人影が二つ。一人は制服を着た
誰かを待つように佇む二つの影に、誰も近付くことは出来ない
なぜなら「オプティマスブリッジ」は「巨大な
封鎖した機動隊員も、橋の入り口から前に進むことは出来ない。飛び交う太いワイヤーが侵入者を襲う
人間がこの「オプティマスブリッジ」を渡ることなど不可能なのだ
「――!何これ……こんなのいつ崩壊してもおかしくないじゃない!」
「――信じられない……アルキ先生……これはもしかして「共振」ですか?」
橋の入り口に到着して車から降りた
「……とてつもない能力だ……これほどまで「兎角」のチカラを使いこなすとは!「
約1キロ先に佇む二つの影は、こっちへ来いというようにじっとアルキ達を見つめる
手足の震える
「梅!大丈夫!?」
「あ……杏子ぅ……ごめん……ごめんなさい……知らなかったの、わたしのせいで……うう……杏子のお父さんとお母さんが……知らなかった……」
「何言ってんの!梅のせいな訳、ないじゃない!」
「「じゃあオマエのせいか?
「――!」
スピーカーから
「
杏子の心の揺らぎが「兎角」の発動を促すが、アルキは優しく側に立ち、
「「
「こんなところ通れるわけがない!辿り着く前に死んでしまう!」
「「
「「――!」」
「ダメ〜!来ちゃダメ〜!死んじゃうよ!杏子!」
「……行くわ!」
「俺も一緒に行く。
アルキはそう言うと
「――!こ……これ……お姫様抱っこ!」
「「……
「俺がコイツらの……探求科の副顧問だからに決まってるだろ!俺の生徒は……俺が守る!」
オプティマスブリッジが
ワイヤーの振り子が伸縮し、かすめるだけでも致命傷になる程の勢いで、アルキ達に襲いくる
「す……凄いアルキ……わたしを抱いたままなのに……ううん、抱いてなくてもこんな動き普通じゃない」
「杏子!ここから隆起が凄まじい!しっかり掴まってろよ!怖かったら目を閉じてろ」
「――う、うん!」
だが
アルキに抱かれて安心しているからなのか、それとも何か別の理由でなのかも分からない
ただ今はこの人だったら大丈夫としか思えない
「あの人がアルキ先生?……杏子が言っていた……」
「「どうして……どうして……どうしてぇ!」」
ついに、隆起して波打つオプティマスブリッジは、「共振」による振動に耐えられず崩壊していく
床版は裂け剥き出しになった鉄筋が巨大な爪のように襲いくる
制御の効かなくなった猛獣の「巨大な爪」と、「鋼鉄の蛇の
アルキは、粉々に砕け舞い散る
「
「――!わかった!梅、こっち〜!」
「――!杏子〜!」
極限状態の
「余剰次元」により、辺りを飛び散る鉄屑が、この次元から消えていく
襲いくる無数の「巨大な爪」や「鋼鉄の蛇の鞭」も、次々とランダムに消えていってしまう
いつどのタイミングで、自分達の身体も「消え去る」のか、予測不能な「余剰次元」の恐怖にも杏子の「無限重力」は発動しない
「梅!……お願い、手を取って……」
「でも、わたしと一緒だと、みんな消えちゃう……それに杏子と触れ合ったら、何が起こるか……」
「大丈夫だから、自分を信じて!わたし達を信じて!もし、何かあっても、アルキがわたし達を守ってくれるから!」
「……杏子」
その時の、杏子の表情には不安や恐怖は無かった。危機迫る瞬間だというのに、これだけ落ち着いていられたのは、アルキのおかげだろう。
その瞬間に足場は全て消え去る。四人は、高さ90メートルの「オプティマスブリッジ」の上から落下していく
落下する四人……杏子の右手には梅が、しっかりとその手を掴んでいる。アルキの右手には、手を伸ばして掴まえていた、もう一人の人物。
「余剰次元」も「共振」も無くなり崩落していく「オプティマスブリッジ」の瓦礫が、四人の真上から降り注ぐ。落下する恐怖と、襲いくる瓦礫の恐怖は、助けた二人の意識を奪う
「……アルキ……わたし達……死ぬの?」
「大丈夫だ!よく頑張ったな!この状況で意識を保てるお前は凄いぞ!この二人は気絶してるんだから」
「へへ……アルキならなんとかしそうだから……」
「ああ、まかせとけ!」
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