ナニモノ

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ハジメ

高校3年の夏、僕は学校を辞めた。

全日制商業科。9割以上の出席率。部活動の高成績。授業で受けろと言われた資格はほぼ全て取得し、問題など何一つ起こしたことは無かった。

何故?

僕は小学生の頃からずっと1つの夢があった。自分の名前で、何かの作品を残したい。大雑把だが、大きな“作品”なら別に何でも良い。

ただ、自分の物を残したいというだけの、夢物語を永遠に語っていた。

僕は進路を考えるとき、絶対にこの学校に入学したい。という場所があった。

専門学校。

特に何も考えず、ただそこで勉強したい。と思っていた。

高校3年の梅雨、僕は既にそこで進学が決定した。


話を戻して、高校3年の夏。

頭の中でスッと、何のやる気も起きなくなった。

未だに、原因は分からない。

ただ唐突に、学校に行きたくない、外に出たくない、起きたくない。

そんな言葉が頭に溢れた。

 同時期、僕にはもう一つ悩みがあった。

 2回目のコロナワクチンをしてから、毎日のように心臓が痛く動きにくい。最初は低気圧のせいかな?とか、運動不足かな?とか色々と理由を考えた。

 しかし、椅子に座っているだけでも心臓が痛い。寝ているだけでも心臓が痛い。

 病院に行っても特に異常はなく、この心臓の痛みは誰も理解してくれなかった。

 “悪知恵“ 「これを理由に学校を休もう」

そう思った。

 なんだかんだで、学校はすんなりと休むことができた。親の優しさに感謝。

 何日か経って僕は、やる気が出たとき、学校にまた行けるようになった。

 少し疲れていただけなのかな、と思うことにした。

 

 しかしその後、僕はまた学校に、というよりかは教室に行くことができなくなった。

 自覚症状:吐き気、目眩、恐怖心、唐突な涙、過呼吸

 登校し、教室の扉の前に立つと座り込む。立ち上がれない。

 教室の中の人間は輝いて見えるのに、僕だけが黒い塊に見えるようになった。

 時々甲高い笑い声のようなものも毎日のように聞こえるようになった。

 聞き覚えのある声。

 あの人間達に、ただ笑われている感覚だった。

 

 どうして。どうして。どうして。


 僕は外が怖くなった。自分自身が分からなくなった。

 

 高校を辞めて数ヶ月、普段で言う夏休みの終わり頃。

 僕は、自分が狂ったと確信した。

 深夜3時頃になると無性に外に出たくなる。

 「あ、僕が外に出たくないのってただのわがままなんだ?」

確かに僕は、外に出たくない。

でも、深夜3時頃になると外に出たくなる。

僕は何も分からなかった。

全く自分の意思じゃない。何も頭が回らない。

 自分の意思は学校に行きたいし、外で遊びたいし、何でもしたいけど、

 自分の意思は外に出たくないし、教室も人間も全部怖い。

 自分の体は、自分じゃない。

 

 進学するため、僕は意思を持って、通信高校に転校した。

 週に1回の登校で、課題さえ提出すれば単位が取れる。元々の僕なら、余裕だと思った。

 それなのに。

 初めの学校は頑張ろうと思えた。

 人間が怖い。視線が怖い。

 イヤホンは外せないし、先生の質問を答えようにも声が出ない。


 「僕はもう、この黒い塊のままなんだ」


そう思うことにした。

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