IF② 第1話 本気

【まえがき】

 このルートの分岐点は、第54話で先名さきなさんから彼女にしたい人を聞かれた時です。その時の桜場さくらばの答えが、もし違っていたら……という、分かりやすいものになってます。


 第13話の花見での話と悩みましたが、少し書いてみたところ、13話だと普通にデートして告白して付き合って終わりになるため、物語としての面白さでこちらを選びました。



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桜場さくらばくん、私たち三人の中で誰を彼女にしたいのか教えてもらえないかな?」


「彼女にしたい人ですか」


「答えにくい質問でごめんなさい。これは私のわがままな質問だから、答えなくてもいいのよ。でも今日はそれを聞きたくて来たから、やっぱり教えてほしいかな? ……ダメね、私。何を言っているのかしら……」


 俺は少しの間考えた。人生の決断とまではいかなくとも、大事な決断だ。誰かを選ぶということは誰かを選ばないということ。


「俺が彼女にしたいのは……先名さんです」


 俺は先名さんの目を真っ直ぐに見つめてそう答えた。先名さんの表情は変わらない。


「桜場くん」


「はい」


「お姉さんをからかったらダメよ」


 先名さんはいつものように、お姉さんの余裕で受け流そうとしている。でも今日ばかりはそうはさせない。


「先週四人で会った時に先名さん、俺と同島どうじまのことお似合いって言ってくれましたよね。その時の先名さんのはかなげな表情がずっと気になっているんです」


 先名さんの表情は今も変わらない。


「それにさっきだって、とっても寂しがり屋だって言いましたよね。それに俺が気になるようになったとも言ってくれました」


「フフッ、よく覚えてるのね。偉い偉い」


「それですよ。俺には先名さんが無理をしているように見えるんです」


「そう? そんなことはないわよ」


「それなら、俺に彼女にしたい人を聞いた理由を教えてくれませんか?」


 俺がそう言うと先名さんは、一呼吸おいてから静かに話し始めた。


「それはね、桜場くんに同島さんとお付き合いする決断をしてもらうためよ。だって二人だけに任せてたら、いつまでも告白しなさそうなんだもの。ごめんね、私おせっかいでもあるみたい」


「先名さん、さっきも言いましたけど花見の時、俺は本気で先名さんと付き合えたらなと思ってました。でも俺は同島をデートに誘いました。間違いなく同島はいい子です。少しいい雰囲気にもなりました。でもだからこそ分かりました。俺にとって同島は友達なんです」


「そうね、デートってお互いの気持ちを確認するものでもあるわよね。そこでお互いの気持ちが合わさって初めて、お付き合いすることになると私は思うの。だからデートをした結果、気持ちが向いていないことに気がつくこともあるんじゃないかな」


 我ながら勝手な話だと思うけど、決していい加減な気持ちで同島を誘ったわけじゃない。先名さんは理解を示してくれたようだ。


「それでも私はやっぱり桜場くんと同島さんはお似合いだと思うわ」


「先名さんは俺を男として見られませんか?」


「そんなことはないけど……。でもダメなの」


「一回だけ、俺とデートしてくれませんか? それで駄目なら諦めます。その場合でもやっぱり同島がいいなんてことは言いません」


 先名さんは黙ったままだ。きっと先名さんは誰かに遠慮している。だったら多少強引でも強気でいかないと、先名さんは振り向いてくれない。


「私がしっかりしてればいいだけよね。桜場くん、分かったわ。デートしましょう」

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