第18話 後輩と同期と同じ部屋で寝た

 今夜、俺は同島どうじまの部屋に泊まることになった。同島と加後かごさんの二人から誘われておきながら、断るのは男として草食すぎるような気がしたからだ。


 でも同島と加後さんは、俺が二人に手を出すことは無いと、なぜか俺に全幅ぜんぷくの信頼を寄せている。


 なので、もし二人に手を出そうとするようなら、二度と口をきいてくれなくなるかもしれない。だからといって、本当にただ寝て帰るだけだと、さらに無害認定されて男として見てもらえないだろう。


 詰んでますね、これ。どうあがいても俺にプラスになることが無い。強いて言うなら、同島と加後さんからの信頼度がさらに上がることくらいか。


 さすがに二度と口をきいてくれないのは嫌なので、余計なことは考えずに過ごすしかない。


 そんなに悩むなら帰ればよかったのに。と、どこかから聞こえてきそうだが、今まで草ばっかり食べてきたんだから、たまには肉食になってもいいんじゃないかと思ったんだ。


 でも結局寝て帰るだけになりそうだ。俺が草食すぎて草生える


 いかん、笑い事ではない。ただ、そう思うということは、俺は同島と加後さんから男として見られたいと、考えている証拠でもあった。


「お風呂の用意ができたけど、どうする?」


 同島が俺と加後さんに聞いてきた。風呂の順番をどうするかということだ。


「私、先に入ってもいいですか?」


 加後さんが一番風呂に立候補した。


「じゃあ最初は加後ちゃんだね。桜場さくらばはどうする?」


 女の子の家でのお風呂問題。これは本当に困る。女の子より先に入ると嫌がるんじゃないだろうか? 後に入っても何かしてそうで嫌がるんじゃないだろうか? そんなことを考えてしまう。

 だからって入らないのも申し訳ない。考えすぎだろうか?


「俺は外で入ってくるよ。ついでに着替えを買ってくる」


「着替えなら心配しなくていいよ。男性用のものがあるからね」


 同島はそう言うとタンスの中から、黒いスウェットの上下とボクサーパンツを取り出した。


「ずいぶんと用意がいいんだな」


 俺がそう言うと、同島は何やらハッとして何かに気がついたようだ。


「かっ……勘違いしないでよね! 私は彼氏いないんだから! これは防犯のために持ってるだけだから!」


「あー、あれか? 男性用の衣類も一緒に干していれば、男と一緒に住んでると思われるってやつか」


「そう! そうだから!」


 またもや慌てる同島。最近になって同島の新たな一面を見ることが増えている。



 俺が外でリフレッシュして帰ると、同島と加後さんはすでに寝る時の服装に着替えていた。


 同島はTシャツにショートパンツ姿。加後さんはルームウェアで少しもふもふしている。加後さんもショートパンツ姿だ。


 加後さんは見たことがあるから知っているが、同島も透き通るような白い肌をしている。今まで意識していなかった。

 それにしてもその服装、わざとなんですかね?


 それからしばらくの間、雑談したりゲームしたりと、時間を忘れて楽しく過ごした。


「それじゃあ、そろそろ寝ようと思うけどみんなそれでいい?」


「了解だ」


「私もちょうど眠たくなりました」


 そしてそれぞれの寝床へと向かう。俺は床に布団を敷いて、そこで寝る。いつもは加後さんが使っている布団らしい。……気にしない。


 同島と加後さんは二人で同島のベッドへ。なかなか密着しているじゃないか。あっ、加後さんが同島に抱きついた。……気にしない。


「電気消すね」


 同島の声とともに、部屋の中は一瞬で暗闇になった。ただ、外から若干の光が入ってくるため、全く何も見えないというほどではない。


 今この部屋には誘惑が多すぎる。ただそれも寝れば何も感じない。俺は目を閉じて早く睡眠に入ろうとした。


 眠れない。場所が変わって、しかも同島と加後さんと同じ部屋だからなのは間違いない。


 どのくらい時間が経ったのかは分からない。俺はテーブルの上にあるスマホを見るため体を起こした。ふと同島たちに目を向けると、加後さんの姿が見当たらない。

 ちょうどその時、キッチンへのドアが開いた。そこから姿を現したのは加後さんだった。


 加後さんはキッチンから戻ると、俺に気がついたようだ。


「桜場さん、眠れないんですか?」



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