奴隷の身分に生まれし女装ショタはクレオパトラも見惚れちゃう魔性の男の娘

リヒト

魔性の男の娘

 未だ世界が神話であった時代。

 その時より永久に世界に冠するローマを建国したロムルスの予言。


『今より753年後。太陽が昇り日に世界を照らす神が産声を上げる』


 700年弱経った今でも残っている予言を基準として定められた神誕前歴。

 これまた700年弱経ってもなお、存続し続けているローマ。

 驚嘆すべきことに700年弱たってようやくローマ史上最高に近い英雄が、英雄カエサルが台頭し始めていた神誕前69年。

 世界を揺るがすような赤ん坊がこの世界に生まれた。

 その赤ん坊は、生まれた時すらも鼻が長かった。

 鼻が長く、赤ん坊でありながらも既に絶世の美女と言われ続けていた子。

 その名をクレオパトラ。

 絶世の美女がエジプトに生まれた。それが世界に大きな驚きを与えたこの年……。


「あぁ……」


 だが、それよりも更に大きな年が。

 神誕前69年より時が進んで神誕前53年。

 赤ん坊の頃から順調に、正当に美しく成長し、齢18歳にならない身でありながらも歴史上最も美しき人物と言われるようになったクレオパトラ。

 そんなクレオパトラさえも霞ませてしまうような少女が今。

 

「クレオパトラ様」


 クレオパトラも見惚れちゃう。

 魔性の女。


「こちらのお仕事のほど、終わりました」


 そんな少女が今、エジプトの地に存在していた。


「ふふんっ。僕の手にかかればこんなのお茶の子さいさいだよ?」


 フェイスラインがマドンナ。


「も、申しわけございません。クレオパトラ様。貴方様が愛用しているカップを壊してしまいましてぇ……」


 上目遣いがたまんないや。


「許しちゃう」


「ほんとですかっ!?……愛してます」


 君の虜。愛している。


 ■■■■■


 魔性の女?


「ふへへ、ちょろい、ちょろい、クレオパトラも。所詮は小娘。存外簡単に落ちる」


 色気フェンスラインが。


「……君が相手じゃ仕方ないと思うけどね。世界中で、君に見惚ぬ者なんていないよぉ」


 世界中釘付けよ。


「あははっ!まぁ、でも……僕ってば男の子だけど。おちんちんびろーん、びろーん」


「ちょ、ちょっと……み、見せないでよ、それぇ」


 君は魔性の男の娘。


「良いじゃんかー、ずっと奴隷として一緒にいる仲でしょー?アグリッパぁー」


「わ、私はちゃんと女の子なんだよぉ……詐欺の君とは違って」


「はっはっは!詐欺、詐欺かっ!いいね!ローマを手中に収める未来の男に相応しき名だっ!」


 世界中を釘付けにする魔性の男の娘は今日も、世界の視線を飲み干してかき消すほどの野望を胸に抱き、己の言葉を思いを天にまで響かせるのだった。

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