第2話 D級ダンジョン
今から五十年前、突如世界に天にまで昇る塔が現れた。
それを機にダンジョン、ゲートが発生しモンスターが人類を襲った。
人類はモンスターを倒そうと立ち向かったがなす術もなく負け、人口は激変し領土は半分も失った。
そんなある日、超人的な力に目覚めた少数の人達、覚醒者が人類の希望となりモンスター達から平和を取り戻すため戦う日々が始まった。
そして実も今はその覚醒者となりモンスターと戦う日々を送っている。
「おーい、実君。こっちだ、こっち」
「お久しぶりです、晃(あきら)さん。今日は誘っていただきありがとうございます」
「いいよ。君には前回助けてもらった恩があるしね。お互い頑張ろう」
晃は前回のゲートで実に助けられた恩をいつか返そうと思っていた。
実の養父が9年前にゲートブレイクでモンスターが出てきたせいで行方不明になり、捜すためにお金が必要だと知っている。
晃はB級で実はE級。
本来なら一緒にゲートやダンジョンに潜ることはないが、ごく稀に協会が等級関係なく人数を集めてダンジョンに潜って欲しいと依頼することがある。
今回はそれだった。
「はい」
二人が時間までたわいもない話をしていると協会の人が集合をかける。
「皆さん。今日は協会からの依頼を受けていただきありがとうございます。今から皆さんに入ってもらうダンジョンは先日確認されたまだ誰も入ったことのないものです。協会の調べだとD級ダンジョンと判明しましたが、何があるかわからないのがダンジョンです。くれぐれも注意して進んでください」
D級、その言葉を聞いた瞬間、ハンターの目が変わった。
D級ダンジョンはそこまで強いモンスターがいない割にいいお宝があるときがある。
勿論当たり外れもあるが当たりの場合、一回で一億円稼ぐことができる。
「それでは、今からチーム分けをさせていただきます。一人ずつこちらの箱から紙を一枚引いてください。紙には番号が書かれてあります」
ハンター達は言われた通り箱から紙を一枚引いていく。
「実君は何番だい?私は3番だった」
「7番です」
紙を見せ合いっこする。
「別だな。充分注意するだぞ。ハンターの中にはあまりいい噂を聞かない者も多くいる。今日も何人かそういった者達がいるからな」
「はい。充分気をつけます。晃さんの方こそ気をつけてください」
「ああ。じゃあ、あとでな。終わったら飯でも食いに行こう」
「はい」
「俺が一番ランクが高いのでリーダーでいいですか?」
寄せ合わせのチームだと一番ランクの高い者がリーダーを務めることが多い。
実のいる七番でA級は一人。
そうなると必然的にA級ハンターの風間がリーダーを務めることになる。
全員そのことは理解しているので誰も反対せずそれでいいと言う。
「じゃあ、お互い名前と能力を教え合おう。最初は俺からしよう。俺は風間俊(かざましゅん)、能力は炎を自由に操り攻撃すること」
炎を出してみせる。
「じゃあ、次は私ね。藤里美波(ふじさとみなみ)。B級ヒーラーよ。よろしくね」
誰が見ても頼りになるお姉さんって感じだ。
「俺は町田隼人(まちだはやと)です。B級タンカーです。よろしくお願いします」
「僕は後藤晃(ごとうあきら)です。C級魔法使いです」
「私は深月真里(みづきまり)です。D級ヒーラーです。よろしくお願いします」
ペコッと頭を下げる。
この中では一番最年少のため少しでも礼儀よくしていようとする。
「俺は新庄隆也(しんじょうたかや)。C級アタッカーだ。剣でモンスターを倒すのが得意だ。よろしく」
「俺は花王実(かおうみのる)です。E級です。よろしくお願いします」
実がE級と言うと空気が変わった。
ーー何でE級がここに?
ーー嘘?本当にあの人E級なの?体格はいいのに信じられない。
声には出していないが態度で何を思っているのか丸わかりだ。
いつものことだから慣れているが、隠そうともしない態度に実は苦笑いするしかない。
嫌な空気になったなと申し訳なく感じていると、パンパンと誰かが手を叩き空気を変えようとしてくれた。
「自己紹介は終わったし、これからどうやって進むか話し合わない?」
藤里が実を助けようと話題を変える。
「そうだな。とりあえず、俺達が入る場所を観に行こう」
今回のダンジョンは何箇所も入り口がある。
実のいる七番隊は二体の石像が守るようにして立っている扉から入る。
「……特にこれといった罠はないですね」
全員で罠がないか確認するが、特に実が率先として調べた。
E級である以上戦力面では力になれない。
せめて知識だけは誰よりも持っていようと率先してダンジョンの罠のことを調べ、見つけていくうちに簡単な罠なら一目見ただけでわかるようになった。
「実君。君凄いね。お陰で助かったよ」
風間は実の肩をポンポンと叩き礼を言う。
「いえ、お役に立てて良かったです」
A級の風間に褒められ嬉しくなる。
E級の自分でもA級の役に立てると。
「入るまでまだ少し時間がある。各自で準備を整えてくれ」
風間の指示に従い全員荷物を確認したり体を動かしたりして、各々のやり方で気合いを入れていく。
「あの、藤里さん」
荷物の確認をしている藤里に話しかける。
「あら、どうかした?」
「さっきはありがとうございました」
さっきの嫌な空気を思い出し本当に助かったとお礼を言う。
「気にしないで。今は私達仲間なんだから。助け合うのは当然よ。一緒に頑張りましょう」
「はい!」
藤里の人柄にすっかり魅了される。
B級なのにE級の自分を見下さず、対等に接してくれる。
晃以外では久しぶりで涙が出そうになった。
「それでは皆様、お時間になりましたのでお入りください」
運営が入るよう指示をする。
「よし、行こう」
一番に中に入った風間の後を皆ついていく。
「思ったより暗いな」
新庄の呟きに藤里が同意する。
「そうね。こんなに暗いとは思わなかったわ。明かりがいるわね」
何か照らすものがあったかと鞄の中を探そうとすると、ブァッと音がし周囲が明るくなった。
どうして急にと明かりのする方に目をやると、風間が手の上に小さな炎を出したからだと気づく。
「風間さん。ありがとうございます」
深月がお礼を言う。
「ん?何だこれは?」
風間の炎のお陰で下に何かがあるのに気づく。
町田が気になったものを手に取り確認する。
ただの白い何かかと思ったが、反対側にした瞬間ゾッとして絶叫する。
「ギャアアアッ!」
町田の叫び声に驚き皆が「どうした」と声をかける。
町田は白い物を指差しながら「あれ」と震える声で言った。
「あれがどうした?」
新庄が町田が指差す物を手に取る。
「何でしたか、それ」
深月が尋ねる。
「……骨だ。人間の頭の」
新庄は皆んなに見えるように顔の部分を見せる。
「キャアアアッ!」
「うわああっ!」
ハンター達が悲鳴を上げる。
「誰も入ったことないダンジョンにどうして白骨した死体があるのよ!」
深月が震える声で叫ぶ。
「確かに、おかしいわね」
藤里は周囲を見て白骨死体が二十体近くあるのを確認する。
「どうする?このまま進む?引き返す方がいいと思うけど」
藤里がリーダーの風間にそう言うも風間は聞く耳を持たない。
「いや、行こう。ここで引き返したら報酬は貰えない。そうだろ?」
風間の言葉に藤里と実以外は賛同し先へ進む。
多数決で決まった以上二人は文句など言えず風間達の後についていく。
「ここは一体どこだ?」
ダンジョンに入ってから一本道を歩いていたのに行き止まり。
「さあ?それより何かおかしくないですか?ここにくるまで一体もモンスターに合わなかったし、罠もなかった……何かおかしいですよ」
後藤は風間の問いに適当に答え、ずっと気になっていたことを皆に尋ねる。
「俺もそう思っていた。ダンジョンに入ってもう3時間以上経っているのに……こんなことあるのか?」
町田も同じ意見だと言う。
ゲートと違いモンスターにすぐ合わないことはダンジョンではありえるが、罠が一個もないのはおかしい。
普通ダンジョンは攻略されないために罠があるのだが……
全員今の状況が異常であることに気づいている。
来た道を戻った方がいいと何となく皆わかっているのに、誰一人として戻ろうと言う者はいない。
当然だ。
ここまできたのに手ぶらで帰るなどあり得ないからだ。
せめてモンスターを倒して結晶だけでも手に入れたい。
「……あの、もしかしたら仕掛けがあるんじゃないですか?前に入ったダンジョンで隠し通路があったんですけど、ここもあるじゃないですか?」
深月がそう言うと風間の目の色が変わり隠し通路を探せと全員に指示をする。
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