炎上系YouTuberになったら、何故かモテ始めた件
黒兎しろ
第0話 何者かになれないやつはゴミだ
「何者かになれないやつはゴミだ」
俺は自分に言い聞かせるように呟いた。
何者かになった奴が使う言葉なら一定の説得力がある。
しかし、何者でもないゴミの俺が言っても、当然説得力は塵よりも少ない。
そもそもに、ゴミに失礼なのだ。
ゴミは、もともと何かの使い道があり、使い果たされた。
俺はなにかの使い道なった事さえない。元々壁にあった黒い染みのような存在で、後にも先にも無意味なものなんだ。
自己否定は眠りにつくまで頭の中で目まぐるしくかき混ぜられていた。
そしてようやく眠りにつくのは正午過ぎ。
ニート生活で洗練された昼夜逆転ルーティンだった。
こんな明日にでも終わらせる。
その言葉を、なんども口の中で咀嚼して何ヶ月も過ぎてた。
ただ生きるためにバイトして。昼夜逆転も治らなくて。生きてる意味を見つけたいのに、それすら考える気力も無くなって。
俺は線路をずっと見つめていた。
均等に並んだ枕木は美しく、そこを歩きたいと思った。
枕木に歩幅を合わせ、優雅に歩いていると、急に曇天が、晴天に変わる。
導くような、あるいは包み込むような光を浴びた瞬間に俺は弾け飛ぶのだ。
急に女性の声が耳を刺し、俺の妄想は破かれた。
視界が全て、枕木に吸い込まれていたことに気づき、くらくらとする。
そのまどろみの中、女神はずっと俺に話しかけていた。
聖母マリアは、みにくいアヒルの子をも見捨てない慈愛の心を持っていた。
俺を救った彼女は、幼馴染の織部 実癒。
彼女と再会するのは大学以来であり、あの思い出したくもない事件以来だった。
久しぶり?
元気にしてた?
変わってないね
今何してるの?
そうなんだ
それは大変だね
それじゃあ頑張ってね
また会えたらよろしく
彼女が言ったかどうか分からない。でも、俺の中ではもう、会話は完成されていた。
どうせ、テンプレートのようなことしか取り繕えない。人間は思った以上にステレオで、それを自然に押し付けて、押し付け合って、完成させる。それでいい。それでこそ馬鹿な人間にふさわしい。
だから会話なんて意味をなさない。くだらない。つまらない。イライラする。煩わしいだけ。
そんな俺の失望の期待は、裏切られた。
「桐原くん、そんなこと言うんだったらさ……YouTuber、やってみない?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます