奥遠の龍・雑記
浜名浅吏
五か月執筆し今思う
先日、友人との話の中でKT社の戦国ゲームが話題に上りました。
大昔からプレーしているシリーズですから、そこは不満は一つや二つでは無いわけです。
私も当然不満は一つや二つではありません。
言い出したらそれだけで一日過ぎてしまうというくらい不満だらけというものです。
その内の一つにヒントを得て、奥遠の龍を書いているわけですからね。
かつて私とその友人はとあるゲームにドハマリしていた事があります。
「Paradox Interactive」社というスウェーデンの会社の「Victoria」というゲームです。
正直、衝撃的でした。
何が凄いって、歴史シミュレーションゲームなのにシナリオがあるんですよ。
それだけ聞くと、KT社のゲームにだってシナリオもイベントもあると思われるかもしれません。
そうではないのです。
ゲームの最中にシナリオの分岐があるのです。
この「Victoria」というゲームは、日本でプレーすると大体黒船の来航の少し後くらいから明治維新を経て第一次世界大戦くらいまでを国家運営するという内容です。
結構頻繁にイベントが発生し、イベントの中には選択肢を選ぶものも多いです。
選択肢の多くは国家のデータが少し変わる程度の些細なものですが、中にはとんでもない分岐を引き起こすものも存在しています。
そうです、明治維新を潰せるんです。
もちろんその後の選択を間違えれば、永遠に近代化せずに西洋列強に飲み込まれてしまいます。
近代化しないから弱いというわけでは無いので、強者の方々はその状況で太平洋に覇を唱えたりされてたみたいですね。
このシステムをKT社の戦国ゲームは取り入れられないのか?というが私たちの大昔からの願望でした。
史実シナリオを大いに利用してあのゲームを遊ぶ事ができないのだろうか?と。
例えば今川家でプレーしていて、CPUの織田信秀が織田信行を跡継ぎに据えちゃう選択を採用しちゃったりといった感じに。
余談ですが、これ実はそうだったのではないかという説もあるみたいなんですよね。
織田信秀の受領名は弾正忠。
織田信長は上総守(上総介)、織田信行は弾正忠。
実は信秀は跡継ぎを正式に信行に定めていて、信長は廃嫡されていたのではないか。
それを武力によって信長が奪い取ってしまったのではないか。
そんな説があるみたいなんです。
もしそのまま信行が当主という事になれば、跡継ぎは津田信澄ということに……
例えば、武田信玄の嫡男武田義信が殺害されなかった未来。
逆に毛利元就が吉田郡山城の防衛にしくじってしまった未来。
こういうIfの世界で有名なのは関ケ原で小早川秀秋が裏切らなかった世界でしょうか。
こういった分岐を各家で多数用意してCPUが勝手に選択をしていくんです。
当然選択肢には確率が用意されていて、可能な限り史実に基づいた選択がされる……はず。
そういうのが嫌な人の為にコンフィグで有無を選ばせれば良いだけの話だと思うのですよね。
三國志だって袁紹が曹操に官渡で負けなかったらというシナリオを組んだりできそうですよね。
友人との話が終わった後で、ふと思ったのです。
ああ、多分これが歴史小説のプロットを考えるという事なのだろうなと。
特に異世界転生するような話はそれが醍醐味なのだろうと。
例えば……
徳の高い坊さんが法事の帰りに交通事故に遭った。
気が付いたら松永久秀でした。
前世と同様、徹底して聖人に徹してやります。
こんな感じの小説ありそうですよね。
このタイトルだと、昨今言われている綺麗な松永久秀像が本当だったら実際にはどんな風になるんだろうってところから着想を得ていると思うのです。
久秀の三大悪事とされているものを全力で止めたら、どんなシミュレーション結果が得られただろうとなる。
最終的には三好政権による幕府ができるんだろうなとか予想するわけです。
そのイメージをプロットに落とし込んでいくと。
奥遠の龍でよくいただく感想に「チート使ってない」というものがあります。
わざわざ現代からやって来たのに、なんでチート使って無双しないんだ?
ごもっともだと思います。
中には、もしかして松井宗信のスローライフなのか?と思っている方もいらっしゃるでしょう。
理解を示していただき(半分諦めか?)、現実だとこんなところだよねという方もいらっしゃると思います。
恵探ルートを選ばなかった事で、それじゃあ桶狭間直行じゃんって感じた方も多いのではと思います。
至極もっともだと思います。
経済学部の学生を転生させて、溢れる経済知識で今川家を富ませて経済で勝つなんて話にすれば良かったのに。
千田先生を転生させてあちこちの城を堅城に作り変えて貰ったりすれば良かったのに。
(千田先生の転生は地味に面白そうですね……)
何で歴史ゲーム好きの高校生なんかにしちゃったのでしょうね。
しかもここまで知識ほとんど生かせて無いし。
奥遠の龍をお読みいただいている中で、松井宗信をご存知の方がどの程度いるのか?
私はさして多くないと思って書いています。
何故ならKT社のゲームに出てこないから。
遠江は石高が低いから征服してもしょうがない土地、あのゲームのせいでそう考えている方もいらっしゃるのではないかと思っています。
今川家は義元と雪斎だけの家。
そういう印象の方が多いと考えています。
徳川家康も山本勘助もそう言い残していますのでそれはそれで間違いでは無いのかもしれません。
じゃあ、今川家の家臣は雪斎以外全員雑魚だったのか?
それは否だと思うのです。
遠江はあんなぺんぺん草も生えてなさそうな土地だったのか?
それも否だと思うのです。
転生先に松井宗信を選んだのは、今川家、特に遠江にもちゃんとした武将はそれなりにいたんだという事を知ってもらいたいと思ったからなんです。
あのゲームは、現代で米が取れていない土地は不毛な地という扱いをしています。
山があり、東海道が通っている、天竜川の水運もある、そんな遠江が不毛な土地なわけがないんです。
そんな土地に家康があんなに長い期間拠点を置くわけないでしょう。
だから恐らく実情はこうだっただろうという事を書こうと思いここまで書いてきました。
あまり書いてしまうと今後の事をぽろっと零してしまいそうなのでこの辺で止めておきましょう。
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