寄り道番外編その1
寄り道番外編その1「取っ手の取れるフライパン」
「じゃーん!こんなの買ってきたよ!」
ある日、そう言って上機嫌で帰宅してきたさくらさん。
「何かいいものでも売ってたか」
俺はさくらさんに尋ねる。
「それはね、、、」
そう言ってさくらさんは手に提げていた紙袋をごそごそし始め、すっと一つの調理器具を出してきた。
「フライパン?」
彼女が取り出したのはフライパンだった。取っ手がとれる!!と書かれたタグが取り付けられている。
「そう!なんかCMで見つけて、興味あったんだーっ!そしたら帰りに買い物に寄ったスーパーでたまたま安売りしてて買ってきちゃった!」
「そうか。それは良かったな」
「うん!だから今日の夕飯は、公式のレシピサイトに載ってた焼飯を作っちゃうよー!私、鍋振りだってできるんだから!」
そう言って意気込んでいるさくらさんはなんだか無性にかわいく見えた。
「じゃあ見ててね」
その後。俺はさくらさんに大地さんと一緒にキッチンへと連れ込まれていた。どうやら自慢の鍋振りを見せたいらしい。さくらさんは温まってきたフライパンに具材を投入していく。
「じゃあ見ててね!それ!!」
そう言ってさくらさんは俺たちに鍋振りを披露する。わお、ホントにできてる。すごい。俺なんてかっこいいから練習しようとして中の具材全部ひっくり返したことあるのに。
「すごいじゃん。ちゃんとできてる」
俺がそう言うと、さくらさんは調子に乗ってしまったようだった。
「へへん。こんなのは目をつぶってでもできちゃうんだから!!」
そう言って目をつぶりながら鍋振りをし始めたさくらさん。
「さくらさん、さすがに危ないからやめたほうが、、、」
俺が声を掛けようとしたその瞬間、さくらさんの手が取っ手を取り外すためのボタンに触れてしまい、取っ手と本体が切り離されてしまった!
そのままがしゃんと音を立てて本体は床に落下してしまった。
さらにそれだけではなく、目の前で調理をしていたさくらさんには熱々の焼き飯の雨が降り注ぐ。
「ぎゃあーーーーーーー!!!!!」
あまりの熱さに悲鳴を上げるさくらさん。
「お、おい!さくら、大丈夫か!!」
自分の娘が目の前で大事故を起こして慌てる大地さん。
そして、床に散らばる焼き飯と取っ手とフライパン。
その様子は、誰がどう見ても大惨事だった。
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