第三章 所謂、ゴールデンウィークと言うやつです。

第11話所謂、ゴールデンウィークと言うやつです。

「申し訳ない。せっかくのゴールデンウィークなのに、前日から潰してしまって、、、」


「いえ、俺はあくまでバイトとして住まわせて頂いてるので、全然大丈夫ですよ!」

4月下旬、明日からゴールデンウィークという、あらゆる社会人や学生が、いつもよりちょっとだけやる気を出したり、授業で寝なかったりする、そんな日の朝。俺は大地さんと常陽さんと3人で、明日からのかき入れ時に向けての準備をしていた。


「私も、全然大丈夫ですよ♪せっかくのゴールデンウィークですから、たくさんのお客さんに来てもらいましょう♪」

常陽さんも例の如く満面の笑みを崩さない。


「まあ、うちはそんなに変わらないんだけどね。それでも、いつもよりはお客さんも多いから、お昼もみんな別々に取ってもらうことになると思うけど」

大地さんは明日の分の準備を進めながら言う。


「でも、ゴールデンウィーク最終日は1日休みにするって言ってくれましたし、大丈夫ですよ。その代わり、その日は1日ゆっくりさせてもらいます」


「助かるよ。よろしくね、桜木君、常陽さん」


こうして俺達のゴールデンウィークが始まった。


● ● ● ●


「いらっしゃいませ」

そして迎えた翌日、ゴールデンウィーク初日の昼下がりピークタイムは、思いの外落ち着いていた。席は埋まって、待ちはいるけれど、土日祝のこの時間ならこれくらいの混雑は普通だった。


「いつもとあんまり変わりませんね」

俺がとってきた注文を伝えるついでに大地さんに言うと、大地さんはコーヒーを用意しながら答える。


「まあ、ゴールデンウィーク初日だしね。一地方都市の喫茶店はこんなもんだよ」


「そうなんですか」


「まあでも、2日目以降はそうも言えないと思うよ」


「そうなんですか、、、?」


「この街はゴールデンウィークに帰省される側だからね。正月は休みだからないけど、お盆と、ゴールデンウィークはそれなりに混むんだよ。だから頑張ってね、桜木君」

大地さんはそう言うと、今度は軽食のサンドウィッチの準備に差し掛かった。


「ちょっと桜木くん!ボケっと立ってないで戻ってきて!」


「今行く〜」

大地さんとの話を終え、さくらさんに怒られてしまった俺は、自分の持ち場に戻るのだった。


● ● ● ●


「今日から助っ人に来てもらいました」

ゴールデンウィーク2日目。さくらさんは大地さんとともに俺たちにそんな宣言をした。


「じゃあ、こっち来て!」

さくらさんが呼ぶと、その「助っ人」は現れた。


「し、四季神翔子です!よろしくお願いします、、、」

そこには、やけに恥ずかしそうな様子の四季神さんの姿があった。


「で、なぜメイド服!?」

そして、何故かメイド服姿だった。

更に言うと、常陽さんはどれだけメイド服がトラウマなのか、苦虫を噛み潰したような表情を見せている。一応、笑顔を作って耐えようとしている努力は分かるが、隠せてない。彼女の「ああ?」事件から、やっぱり俺は彼女に対しての距離感をなかなか掴めない。


「あー、実はウエイトレスの服が足りなくてさ、でも、ゴールデンウィーク正直2日目以降は4人じゃ厳しくて、仕方なく、、、」

メイド服手に入れるほうがよっぽど難しいと思うけど、、、


「は、恥ずかしので、、、あんまり、見ないでくださいっ!、、、」

四季神さんは両手の指先を合わせてもじもじと動かし、恥ずかしそうにしている。


「じゃあ、私も着替えてくるよ」

そう言うとさくらさんは控室に入っていってしまった。


● ● ● ●


「じゃーん!」

数分後、再び控室から出てきたさくらさんはメイド服姿だった。


「ん?どうしたの桜木くん。お前もか〜って顔してるね」

うん、正解。だってさくらさん、ウエイトレスの服あるじゃん。

と、そんなふうに思って聞いていたところ、隣からただならぬ闇のオーラを感じたので、ふと横を見ると、常陽さんからどす黒いオーラが溢れ出ていた、、、ように見えた。淡いピンク色のツインテールは重力に逆らって、地面と反対方向に向かっている。この人、コンカフェいる時ホント何があったんだ、、、


「いやー実はね?翔子にメイド服しかないって言ったら「恥ずかしので絶対に嫌だー!!」って言われて、仕方なく、じゃあ私も着るからーってなって」

さくらさんが事の経緯を説明している。


「それなら良かったんだ、、、」

乙女心は難しいな、、、


「楽しそうにやってるところ申し訳無いけど、もうそろそろ開店だから準備始めようか」

そう言えばここ大地さんいたんだった。俺達に気を使って空気を演じていたのだろうか、、、


大地さんは続けて言う。

「じゃあ、ゴールデンウィーク2日目も頑張ろう!」


「「おー!!」」

こうして、ゴールデンウィーク2日目が幕を開けた。

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