残りも幸せに

いぎたないみらい

騒がしっ

「落ち着いて聞いて欲しい。ラフレ。君の寿命は、残り…、10年だ……」

「 …っ!そんな!嘘だと言ってくれ!!」

「グラッグ!何か治療法は無いの!?」

「 …っすまない。私には何も………!」

「「 ………!!!」」


泣き崩れる養母。

それに寄り添う養父。

己の力不足を悔やむ医師。

そして、余命宣告をされた私。


「 …いや。10年ってわりかしあるから。皆はエルフだから1年無いぐらいに思えるかもだけど、人間の私からすれば割りとあるから」



ここはエルフの里。幼い頃、この近くの森を彷徨っていた人間の私は、エルフの新婚 (といっても5年目の) 夫婦に拾われた。


拾われてからは、つつがなく暮らしていた。家事も、狩りも、魔法も。一人暮らしが出来るように、身の回りのことを教えてくれた。おとうさんとおかあさんは、人間である私の成長に驚き、喜び、寂しく思っているらしい。

それでも、私のことを自分たちの本当の子供として大切に育て、愛してくれた。


「ラフレ~…死なないで~…」

「まだ死なないよ、おかあさん」

「ラフレ、大聖女様のところへ行こう」

「おとうさん。大聖女様は去年、お亡くなりになったわよ。忘れちゃったの?ボケた?」


……ちょっと過保護なくらいに。


「「ら~ふ~れ~…」」

「良い歳して泣かないでよ。304歳でしょ。それと、 私の話を良く聞きなさい」

「「はい」」


にっこりして言ったら、素直に黙ってくれた。よしよし。


「私は人間なの。拾ったときに覚悟はしてたよね?2人より先に死ぬのは」

「「…………」」

「確かに、あと10年で死んじゃうのは悲しいし、寂しい。32歳で死ぬのは早いと思う。でもね、10年あれば結婚して、運が良ければ子供できるかもしれないし。…うん、いけるいける。頑張れば全っ然いける。うん、私の願望願う、願う」


そう。私は結婚がしたいのだ。

10年もあればきっと、恋愛の末、辿り着くことができるだろう。


両親がぽかーんとしてる。意味不明、みたいな顔。何故だ。やがて鼻で笑い、口に出して笑い始めた。なんなんだ、失礼な。


「ふふふっ。ラフレらしいわね」

「ナハハッ。そうだな、そうだよな。それでこそおとうさんたちの娘だ」

「フフーン。もっちろん。おとうさんたちに負けないぐらい、ラブラブ仲良しな夫婦になっちゃうもんねー」

「あらあらまあまあ。おかあさんたちに勝てるとでも?」

「大丈夫よ、きっと!」

「ちょっ、あの、恥ずかしいんですけど…」

「ふへへっ」

うん。大丈夫。この人たちなら、ずっと笑っていられる。ずっと仲良しでいられる。




…………………寂しいなぁ。




ドンドンドン!!!


激しく家のドアを叩く音がする。急すぎてびっくりしちゃった。あーもー、おかあさんがフリーズしたー。

外へ出てみると、昔から私の面倒を見てくれたファルケにいちゃんがいた。


「っラフレ!!体は大丈夫なのか!?」

「ちょっ、うるさいうるさい。近所迷惑だから。取り敢えず中入って」


彼は自分が大きな声を出していたことに、今気付いたようだ。慌てておかあさんに謝っている。


「ファルケ君、こんな時間にどうしたんだい?珍しいね」

「す、すみません。ラフレが余命10年と聞いて、いてもたってもいられなくなって…」


へー、もう里中に伝わっているのか。早いなー。それにしてもファルケにいちゃん。そんなに私のこと、心配してくれてるんだ。優しいなあ。さすが里のプリンs…


「ラフレを、…娘さんを僕にください!!」

「「「ぬぁぁぁにぃぃぃ!?どーゆーこっちゃああぁぁ!!」」」


ハッ!!近所迷惑!!一家揃っておんなじこと言っておんなじ反応して驚いちゃったよ!


まあまあまあ。一旦落ち着いて、ね?はい、深呼吸~し~んこきゅ~~。ふ~~~~…。よし。全員落ち着いた!


「で、え?ファルケにいちゃん、もう一回言って??誰を、誰に、なんだって????」

「ラフレを、僕に、ください」

「え?え?え?ファルケ君?ファルケ君?いつから?いつからなの?お義母様に言ってごらんなさい?」

「10年前ですね」

「「きゃあ~~~~!!」」

「お、おとうさん、おかあさん!なんでそんなにはしゃいでんの!?若者!?」


びっくりだよ!!!娘が求婚されてハチャメチャに騒いでる親!うちぐらいじゃない!?


「ラフレ」

「うひゃあい!!?」

「ずっと好きだった。余命10年って聞いて、絶望した。もう二度とラフレの笑った顔を、見られなくなるんだって。すごい、嫌だ。ラフレには、ずっと、笑っていて欲しい。誰でもなく、僕の側で。

ねえ、ラフレ。僕と結婚して?」


跪かれて、手を取られて、愛を囁かれてる。里のプリンスに。


なになになに?どゆことどゆこと?

私、恋愛小説のヒロインじゃないんだけど。

え、意味わかんない。

え、なにこの超展開。

え、ドッキリ?

あ、ドッキリ?

そうか、ドッキリか!

なるほどなるほど。

私のために思い出を作らせてあげようとしてるんだね?把握。

そうか、そうだよね、だよね。

ホンキな訳ないもんね。

そっか、そっかーー。

…………………。


………………………………。





…大丈夫、…傷つかない。



悲しくなn…


「なんか横に逸れたこと考えてそうだけど。本気だからね?僕。嘘下手だし」


現実逃避させてくれないっ!なんでっっ!!


「え?うえぇぇ?本気?本当に?ホントにホント?ファルケにいちゃん、本気なの?」

「うん、本気。ホントのホントの本当に」

「……………………………。そっ、か……」


残り10年。今から、好きな人を探して結婚するより。ファルケにいちゃんと、結婚して、恋愛したほうがいいよね?効率いいよね?私、間違ってないよね?



「ラフレー!さっさと決めちゃいなさーい!」

「そうだぞー!こんな条件のいい男、そうそういないぞー!」

「「ファルケ君、がんばってー!!」」




「「……………………………………」」


………………。


おーきく、息を吸ってぇーーー………




「娘のいいシーンに口出すなあぁぁ!!!」




い~い、ご近所迷惑!!!








「って感じかなあ。パパとママの馴れ初め」

「なんか、らしいね」


いやあ。それ褒めてんの?



あれから15年経ちました。

私は元気です!!!!!



なぜなら私の親、エルフだから。人造人間を造る魔法を教えてくれる。造った身体に憑依する魔法も教えてくれる。私はそれを10年もあれば、習得できる。成功もできる。


なぜなら私、エルフに育てられたから!ドヤ



過剰反応、って言ったでしょ?

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残りも幸せに いぎたないみらい @praraika

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