S級冒険者 今川氏真~戦国最弱の暗愚と呼ばれていましたが、異世界ならもう実力隠さなくても大丈夫っぽいです

鈴ノ村

プロローグ S級冒険者、ウジザネ・イマガワ

 ◆◆◆ ご挨拶 ◆◆◆


 お久しぶりです、鈴ノ村です!!


 最新作を投稿しますので、応援よろしくお願いします!!


 主人公は、あの有名な最弱武将です!!









「ドラゴンの群れが現れたぞーーーっ!!」




 都市の監視塔の鐘が鳴らされ、人々が往来を逃げ惑う。

 現れた飛竜の群れは空を覆い尽くしている。

 炎ブレスを吐きつけたり、逃げ遅れた人に直接食らいついたりしている。




「うぉおおおっ!! 射て、射てぇええっ!!」

「盾を構えろ! 炎ブレスに焼かれるぞ!!」



 武器を持った衛兵たちが、飛竜たちに立ち向かう。

 隊列を組んで防御して、弓矢による一斉射撃を放つ。



火炎弾ファイアバレット!!」


「うっ、風矢ウインドアロー!!」


水流弾ウォーターガン!!」



 街に滞在していた冒険者たちも魔法で応戦している。


 だが、焼け石に水。

 

 それどころか返り討ちにされて、ドラゴンのエサとなってしまう人間が多い。

 


 ここは城塞都市ウォールバーグ。

 10万匹の魔物の軍勢が押し寄せようと防衛できる、巨大な城壁に守られている中堅都市だ。


 ただし、街自体が強固だったゆえに、強い冒険者はそれほど滞在していなかった。

 また城壁に守られているという油断ゆえに、飛行型の魔物に弱い。

 そもそもこの地方には飛行型の魔物はほとんどおらず、強くても巨人族の魔物くらいだった。



 つまりこのドラゴンの群れの襲撃は、空前絶後の非常事態なのである。




「うぁあああっ! もう駄目だ、逃げよう!!」


「そ、そんな、あんたら冒険者だろう!?」


「うるせえ! 金も払っていない一般市民ふぜいが、俺たちに指図するんじゃねえよ!!」



 

 街の中では、退却しようとする冒険者たちと、彼らをなんとか引き留めようとする住民たちのイザコザが繰り広げられる。

 そうこうしているうちに、街は次々と焼かれ、破壊され、人々は蹂躙されていく。

 

 これでは街は保たない。もう、おしまいだ。


 誰もがそう思った時、





 同時に飛んできた3本の矢が、3頭の飛竜の『眼球』を貫いた。


 その光景を見て、人々が呆然とした束の間。

 矢継ぎ早に矢が飛んできて、次々と飛竜を撃ち落としていく。

 



「な、なんだぁっ!?」


「たった1本の矢でドラゴンが殺されている……!?」




 にわかには信じられない光景。

 鉄のごときウロコを持つドラゴンは、強力な剣や魔法、もしくは大砲などでなければ殺せぬ魔物だ。


 しかし、今起こっていることは現実である。

 圧倒的なまでの矢の威力と精度があれば、矢一本でも、眼球の奥にある脳髄を貫いて仕留めることができる。それだけだ。




「おーおー、こりゃひでえな。急いで全滅させてやらねえと」




 そうつぶやいたのは、黒い外套をまとった長身の男。

 彼は馬に乗り、手に弓を持ち、腰には刀を差している。


 彼は美男だった。目元は涼やかで、輪郭も細く、戦士というよりも上流階級の貴族の方が適しているような顔立ちだ。

 長い黒髪を後ろで束ねており、髪を下ろせば女性のようにも見えるだろう。




 馬に乗った男は、突如として街の広場に現れた。

 駆けつけた彼を見た街の人々は、こんな細身の美男が、ドラゴンを弓で仕留めているのかと驚く。




「行くぞ、鬼鹿毛おにかげ




 男はそう告げて、馬を走らせる。


 鹿毛の馬は快速を誇り、街中を疾駆しっくする。

 その速さは風のごとく、天を舞うドラゴンですら捕捉できない。




「よっと、そいそいっと」




 のんきな掛け声だが、ほとばしる矢の威力は強烈無比。

 しかも素早く駆け回る馬の上に乗っているというのに、寸分たがわず、男はドラゴンの眼球を射抜いて殺していく。


 これぞ日ノ本に伝わる騎射技術、『流鏑馬やぶさめ』の応用である。


 


らちが明かねえな」



 

 しかし男は不満だった。


 ドラゴンを順調に仕留めていることは何も問題ない。

 だが、こうしている間にも多くの家が焼かれ、人々が殺されている。


 自分が仕留めているのは、自分が発見したドラゴンだけだ。

 当然、別の場所で人々を襲っているドラゴンはまだまだ大勢おり、そのせいで無辜の民が死んでいく。




「鬼鹿毛、離れていろ……かつっっ!!!!」




 男は馬から降りて、馬を一旦安全な位置まで逃がすと、

 大地が震えるほどの怒号を上げた。

 

 その大喝は、街中に轟いた。

 それどころか男の近くにあった店のガラスにもヒビが入るほどだ。




 そして、上空にいた大勢のドラゴンたちの視線が、男の方に集中した。





「よしよし、それで良い」




 男はニンマリと笑い、矢を同時に3本、引き絞る。

 人差し指、中指、薬指、小指で3本の矢を挟む、その凄まじい握力。




「そうらっ!!」




 矢を放つと、その矢は唸りを上げて空を駆け、3頭の竜の眼球を射抜いた。

 ゴギャアアッという悲鳴を上げて、竜たちは地面に落ちていく。


 この攻撃で、全ての飛竜たちは男を標的とした。




「上等上等」




 黒髪の男はニヤリと歯を見せる。


 飛竜たちは咆哮を上げて、空から襲いかかってくる。

 男からすれば、まさに入れ食い状態だ。




「そらそらそらぁあっ!!」




 単純な射撃速度も、凄まじい。


 矢をつがえ、引き絞り、放つ。

 放つ、放つ、放つ!!


 たったそれだけの工程だが、その工程を素早くなめらかに行い、迫りくるドラゴンたちの眼球を次々に射抜いていく。



 一向に、飛竜たちは近づけない。

 全速力で男に向かって滑空しているというのに、その途中で必ず射落とされてしまうのだ。 




「……あ、やべ、矢が切れた」




 男は背負っていた矢筒に手を伸ばしたが、もうそこには矢が残っていなかった。


 その間も残っていた飛竜たちが襲いかかってくる。

 残り5頭なのだが、矢が無ければ射殺すことはできない。




「やれやれ、じゃあ蹴るか」




 男は弓を戻し、近くにあったガレキをそっと蹴り上げた。

 ふわっと男の頭上に、ガレキが浮き上がる。

 



「そりゃっ!」




 男は落ちてくるガレキに向かって、豪快な蹴りを浴びせた。

 ガレキは砲弾のごとき勢いで飛翔し、飛竜の頭部に風穴を空けた。


 その人間離れした光景に、冒険者たちも、あんぐりと口を開ける。


 これであと4頭。

 男はその4頭を仕留めるため、またもガレキを足で浮かせてから、4連続で強烈なボレーシュートを放つ。




「そりゃそりゃそりゃああーーっ!!」




 ボギュッという肉と骨がつぶれた音が、同じく4連続。

 そして直後に、重いドラゴンの死体が地面に落ちた轟音が鳴り響く。

 

 空の王者とも呼ばれるドラゴンたちが、人間が蹴り飛ばしたガレキで殺された。

 何度見ても現実とは思えない、非常識すぎる光景。

 それを現実に起こした黒髪長身の男の後ろ姿を見て、冒険者たちはつぶやく。




「あ、あいつだ。この国の歴代最速でS級冒険者になった異形の天才……!!」


「っ……あれが国内唯一の『魔力不能者』のS級か!?」


「ばっ、馬鹿、声が大きいって! 殺されるぞ!」


「まさかこの男がここに滞在していたとは……ははっ、俺たちはなんてツイていたんだ……!」



 

 ドラゴンに押されていた冒険者たちは、長身黒髪の男によってドラゴンたちが全滅したことを喜び、安堵していた。


 しかし、事態はこれだけでは終わらなかった。




「おーい、あんたら、早く逃げな」




 長身黒髪の男は、遠巻きにいる冒険者たちの方に振り返った。

 冒険者たちはその言葉の意図が分からず、目を白黒させた。




「え、だって、もうドラゴンたちはあんたが全滅させたんじゃ……」


「いやいや、まだいるぞ。とびきりヤバいのが」




 黒髪の男がそう言った直後、

 都市を守っていた城壁の門が、吹き飛ばされた。


 門を破壊して侵入してきたのは、巨大な四足歩行のドラゴン。

 飛翔するドラゴンの数十倍の体躯を誇る、山のような陸上歩行型の竜。


 S級災害指定生物、エンシェントドラゴンだ。



 

「ひ、ひぇええええーーっ!?」



 

 山のごとき巨竜を目にして、冒険者たちは悲鳴を上げて、腰を抜かす。

 通常の飛竜でもB級~A級に相当する危険な魔物なのだが、エンシェントドラゴンはそれをはるかに上回る体力、破壊力、凶暴性を併せ持っていることから『S級』の魔物として指定されている。


 当然、これを討伐するためには軍勢が派遣され、S~A級相当の実力を持つ騎士や冒険者たちが連携をとることになる。




 ゴガァアアアアーーーーッ!!!




 エンシェントドラゴンが後ろ足で立ち上がり、天に向かって吼える。

 それだけで大地が震え、周辺の建物が吹き飛び、雲が割れていく。



 

「そうらっ!!」



 

 黒髪の男はひと際大きなガレキを蹴り飛ばして、エンシェントドラゴンの腹にぶつけた。

 しかし、ガレキは巨竜の腹を貫くことなく、あっけなく砕け散った。


 ギロリ、とエンシェントドラゴンの視線が、黒髪の男の方に向く。


 互いに大通りに立ち、向かい合っている状態となる。




「しゃあねえな。こいつの出番だ」




 男は腰に差した刀を抜いた。

 何の変哲もない、ただの刀だ。



 しかし見る目のある人間ならば、大業物おおわざものだと理解できる。



 その刃は鋭く、玉鋼の刃は陽光をきらりと跳ね返している。

 にもかかわらず、なぜか、黒色の禍々しいオーラを醸し出している。

 

 黒く輝く刃の腹には『左』と刻まれていた。




「さあ、行こう……左文字さもんじ




 ふわり、と黒髪の男は微笑む。

 巨大な怪物を前にしているというのに、彼は美しい顔をほころばせた。


 エンシェントドラゴンが四足歩行に戻り、大口を開けて突撃してきた。

 牙一本が人間よりも大きく、口腔は家すら丸呑みにできるほど。

 このままでは、黒髪の男も、冒険者たちも、ひとたまりもない。



 ズン、ズンと、エンシェントドラゴンが大地を揺らしながら迫ってくる。

 その衝撃で冒険者たちは立っていられない。もちろん逃げて走ることなどできるはずもなく、中には恐怖で失禁している者もいた。




「すぅーーー……」




 だが、ただ一人。


 その黒髪の男だけが、激しい地揺れをものともせず、刀を上段に構えた。





「鹿島新当流、ひとつ太刀たち





 まだ刀の届かない距離にいるというのに。

 彼は上段の構えから、刃を振り下ろした。

 


 そして次の瞬間、


 エンシェントドラゴンの体が左右に割れた。





「「「……………はっ?」」」


 



 後方でながめていた冒険者たちは、言葉を失った。


 山のような体躯を誇る、あの巨竜が。

 存在そのものが災害とも言うべき、あのエンシェントドラゴンが。




 頭部から尾の先まで、真っ二つにされた。




 あり得ない、こんなの夢だ。

 ……と、目の前で起こった現実を、脳が理解しようとしてくれない。


 そんなこと、たった一人の人間にできるはずがない。

 一振りの刀で厄災の竜を両断するなど、人間にできるはずがない。




「よっしゃ、討ち取ったり」




 黒髪の男は刀を納めて、エンシェントドラゴンの死体に近づく。




「さーてさて、お待ちかねの分捕りだ。牙と、爪と、背骨に目玉、あとは生き胆かな……これほどの素材を売っ払えば、しばらくのんびり暮らせるだろう」


 


 そうつぶやきながら、彼は嬉々としてエンシェントドラゴンの死体から素材を剥ぎとっていく。

 これは冒険者としては自然な行いなのだが、倒した存在の規模があまりにも大きすぎるがゆえに、逆に不自然な行動に見えた。
















「ーーーあ、あれが異端のS級冒険者、ウジザネ イマガワ、か」


 腰を抜かしていた冒険者が、そうつぶやいた。











 ◆◆◆お礼・お願い◆◆◆



 最新作のプロローグを読んでいただき、ありがとうございます!!



 この作品では、あの最弱武将の今川氏真を異世界に飛びこませて、思う存分に無双させていきます!!


 あのザコ武将の氏真が主人公なんてクセが強い!


 実は強かった氏真をもっと見てみたい!


 

 と、思ってくださいましたら、


 ★の評価とフォローをぜひぜひお願いします!!


 皆様の温かい応援が、私にとってとてつもないエネルギーになります!!



 鈴ノ村より

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