第5話 日本語でおk
前回までのあらすじ。王国からの使いである令嬢が戦争が起こるというので話を聞いてみる。
「私もこれ以上は知らないわよ。起きると言ったら起きるの」
いいかげんキレそうだ。私は短気なんだ。
「……では、こちらからはどうすることもできません」
「えっ!? 待ちなさい! 戦争になってもいいの!?」
「ですからぁ! 私もそれは避けたいですが、情報がそれだけではどうしようもありません!」
「はぁ〜〜!? わかってない分際でなんで偉そうにしてるの!? むかつく!」
「……だから偉そうなのはそっちだろうが!! 殺すぞ!」
後ろの文官はドン引きである。
「その、黎音様、流石に殺すぞというのは……」
しかしそれもすぐさま令嬢の声にかき消される。
「うっさいわね戦争が起こってあんたも死ぬって言ってるでしょ! 日本語わかる!?」
「わかる!」
「え?」
「え?」
え?
日本語が、わかる?
- - - - -
この世界には、日本語というものはない。
あるのは「共通語」という東西で話されている言葉だけだ。
が、しかし今 目の前のお嬢様は私に「日本語がわかるか」と聞いてきた。
そして私は「わかる」と答えた。
一体何が起こっている?
まさか……
確認する前に、後ろの文官と近くで見張っている武官に声をかける。
「すいません。一度席を外してもらえますか」
文官が戸惑ったように答える。
「しかし黎音様、安全のために護衛を任されているのですが」
「少しでいいのです。国家の機密に関わる話ですので」
「わ、わかりました」
──全員が出て行ったのを確認して、私は組み手に顎を乗せ令嬢を見据える。
「さて、日本語がわかるというのはどういうことでしょう?」
すると令嬢はそっぽを向いて言った。
「わかるって言ったのはあんたでしょ? 私は知らないわよ」
「はぁ!?」
私は机を叩く。一体どういうつもりなんだ。
「ふん、さっきあんな舐めた口聞いたやつに何も教える筋合いないわよ」
「おい。くだらない意地でシラを切るつもりなら今度こそぶち転がすぞ」
「やれるものならやってみなさい」
プチッ。
その瞬間、令嬢の顔を目掛けて私の足が突き上がる。
しまった、思わず特技の
が、しかし令嬢は体を反らせて避けた。
な、避けただと!? 幼少期から叩き込まれた私の拳法は帝国内でも指折りの実力のはずだというのに。
令嬢は体のバランスを戻してバカにしたように笑う。
「はっw、だっさ避けられてやんの。舞踏で
舞踏。どうりで俊敏に動くわけだ。
「ほら、きなさいよ」
令嬢が再び挑発する。
……こうなったらもう何がなんでも仕留めてやる。
■あとがき - - - - -
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