地下鉄が 耳を引っ掻き 君攫う

地下鉄を降りて数拍の間。


忘れ物に気がつき、慌てて戻るも時遅し。


無情にも閉まる扉。

その向こうにキミがいる。


『発車いたしまーす、黄色い線の内側にお下がりくださーい、危ないですよー、お下がりください発車しまーす……』


きぃぃんと金属を擦る音を立てて、列車は徐々に徐々に、動き出す。


後部車両から、くぐもった闇の重みと、つんざくような金切り声が遠くに響いて、消えた。


線路に踏み込めないから、改札へ走る。


必ず……必ずキミを助けるよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る