羽瘡

小鳥遊 怜那

第1話 羽瘡

 背中を刺した。未来に疲れたから刺した。

 痛い。背中が痛い。ジーと鳴く蝉の声のような痛みが続く。


 数日後背中の傷からできものができた。きっと細菌が入ってしまったのだろう。だがもういい。自分の命に価値を感じない人間が無様に生きようとするものではない。だから俺は放置した。


 またしばらくするとできものは大きくなった。これじゃまるで羽だ。邪魔だから切ろうと思ったがどうやら動かせるみたいだ。だったら飛べるかもしれない。俺は近くのビルから飛んでみることにした。


 ビルの屋上は寒い。だがこのくらい冷たい空気の方が雰囲気は出る。

 本当に飛べるかなんて分からない。でもやらないというわけにもいかない。だって思いついてしまったんだから。

 震える足に渇を入れて踏み出す。夜景が目に入る。

 嗚呼なんて綺麗なんだろう。

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羽瘡 小鳥遊 怜那 @825627473462

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