第6話 決めろ!必殺技!!獄炎!!
炎の刻印……メサに記されていた謎の特殊スキル。だがシーカーにとってはもう意味のない事。それは自分は目の前の大型デスワームによって食べられ、データを消されてしまうと。
「……」
デスワームが飲み込もうとした瞬間、シーカーの背中に赤く光り輝いたある絵が刻まれた。その絵はまさに燃え盛る赤い炎の絵だった。
そしてシーカーの身体を薄い赤い膜が覆った。デスワームがその赤い膜に触れた瞬間、熱いものに触れた時のように跳ね上がり、叫び声を上げながら別の空間に逃げて行った。
シーカーは痛めた腕を無理矢理動かし、メサを操作してボードを呼びつけ、ボードにしがみついた。膜は一旦消滅した。
「……何が起こったんだ一体……」
ボードでなんとか移動して近くのビルの屋上に寝転がり、息を荒げながら、空を眺めて身体を休めた。
「はぁ……はぁ……まずは回復薬を……」
メサから瓶状の回復薬を出し、一気に飲み干して、瓶を投げ捨てた。傷ついた身体は少しずつ治っていき、立てるくらいには回復した。
「何とか体力は回復したか……」
一度深呼吸し、メサを操作してもう一度スキルを確認する。
「刻印、タイプ炎?……初めて見るスキルだ」
タイプ炎、その事にふと不思議に思った。そんなスキル今まで見たことないからだ。
「タイプ炎……って事は他にもいるのか?炎の刻印以外に」」
まだまだ疑問は沢山あり、調べようとした。
すると、再びフィールド全体に地鳴りがなった。シーカーはすぐに警戒し、刀を出した。
「来るか……ってえ?」
手の先から暖かい違和感を感じた。それは刀に炎がメラメラと纏い、以前の刀とは違う状態になっていた。その刀を見て、即座にスキルを理解してニヤリと笑った。
「これは……スキルの影響か。なら、さっそくあのデカワームをやるしかねぇ!!」
意気込みを言いながら左手を強く握りしめると、身体全体が燃える炎のようなオーラを纏った。だが自然と熱く感じず、いつもと変わらない体温を保っている。
そしてメサからボード出すと、全体が赤くコーティングされ、炎が描かれていた。そして燃え盛る炎の装飾物が後方左右に付属されていた。
「行くぞ!!ワーム!!」
するとデスワームが頭上から現れ、三度飲み込もうした。だが、シーカーは余裕の表情で避けた。先程とは比べ物にならない程早い速度でデスワームに当たる事なく、回避した。
「おらぁ!!」
避けてそのままデスワームの上に行き、皮膚に炎が纏った刀を振り下ろした。先程よりも深く攻撃が刺さり、緑血を噴出した。そして数秒経つと切られた部分が爆弾のように爆発した。ワームの肉片が飛び散る。切られたデスワームは悲鳴をあげながら、真下のビルの上に落ちた。
「ふぅ……!?」
安心したのもつかの間、周りには5mほどの幼虫ワーム20匹ほどがシーカーを四方八方囲まれていた。
だがシーカーは余裕のある顔だった。
「親もデカければ子もデカイって事か!!」
腕を×状に組み、少し足を曲げ身体全体に力を入れ始めた。するとシーカーのオーラは消え、赤い膜が囲み始めた。膜はマグマのようにグツグツと音をだしながら沸騰している。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
思いっきり身体を大の字に開くと膜は破裂した。そして破裂した膜が幼虫達に当たると、幼虫達は黒焦げに燃えて跡形もなく無くなった。
自分の両手を軽く動かし、自然に動く身体を実感した。
「……身体が柔軟に動く。まるで自分の思い描いたように……」
真下のビルを見ると、そこにはデスワームはいなかった。近くには空間が割れた跡があった。絶対にまた来る……そう確信したシーカーは刀をしまい、右手拳に力を入れ始めた。
右手の甲から炎の文字が浮き出て来て、背中の炎の絵も更に赤く輝き始めた。そして右手拳から炎が身に纏い、目を瞑り精神集中を始めた。
地鳴りが聞こえると、更に力を込めて炎の勢いが増す。シーカーの真後ろの空間が静かにヒビが入り、その中からデスワームが現れ、口の中にシーカーが入った瞬間、真後ろに振り返りながら握った拳を一気に開き、声を荒げて叫んだ。
「
その技を放つと、手の平から一気に巨大な炎の渦を放った。その渦はデスワームの口の中から、体内全てに灼熱の温度を誇る熱が身体を一気に赤く膨れ上がった。そしてデスワームの動きは止まり、体温が異常なまで上昇し、外の皮膚からは黒い煙が蒸気機関車のように噴出した。
デスワームは黒い灰の塊とになり、そのまま下に落下していった。
「……勝ったぞ。炎の刻印で……勝った」
実感が湧かない勝利。いきなり謎のスキルを手に入れて勝利した事に自分の身体を見るが、謎ばかり浮かび上がった。
そして自然と身体の力が抜け、ボードの上で膝をついた。オーラは消え再び手の甲を見ると炎の文字は消え、背中の炎の絵も消えていた。ボードも元の姿に戻っていた。
「……これで、戻れるのか」
この戦いを仮面の男はビルの上で、透明の姿で目撃していた。
「あいつが炎の刻印を手に入れるとは……まぁいい。約束だ。返してやろう……」
メサを操作し、シーカーの転送先を選ぶ。その場所に仮面の男は軽く笑った。
「ふっ……ここでいいか」
画面をタッチした瞬間、シーカーはこのフィールドから消滅した。
ーーーーーーーーーーーーーー
場所は代わってとあるライブ会場。会場で1人のキラキラとしたドレスを着た、ぱっちりお目目の左右白黒の髪をした長いポニーテールの女の子が虹色のライトを浴びながら、綺麗な透き通る声で歌っていた。
この女の子こそSyoがライブに行こうとしたAlterFrontierアイドルのアルちゃんだ。
彼女の前には静かにペンライトを息の合ったようにゆっくりと振るファンが何万人もいた。更にこのライブは、テレビ中継もされており、全世界に配信されている。
そして歌い終わると一礼し、ファンのみんなに挨拶をする。
「今日はライブに来てくれてありがとう!!」
「ア・ル・ちゃぁぁぁん!!」
その言葉を言っただけで、多くのファンが歓声を上げた。
「さぁーて!!次の曲は──」
と言いかけた瞬間、彼女の目の前にシーカーが頭から落ちて来た。アルは驚き、ファンも驚き会場は静まり返った。
「痛てててて……何だここは?」
シーカーが頭を抑えながら後ろを振り向くと、驚いた様子のアルがいた。彼女を見た気づいた、Syoが言っていたアイドルアルちゃんだと。そしてここがそのライブ会場だとゆう事を……
「だ、誰?」
シーカーのアルにニコっと作り笑いを見せた。
「す、すいませんでした……」
「……」
シーカーは慌ててログアウトしてその場から消え去った。アルがいきなりの乱入に唖然とする中、会場はブーイングの声でイッパイになった。何だ今の男は⁉︎、ライブの邪魔しやがってなど、即刻ライブは中止になった。
「え……何?」
ーーーーーーーーーーーーーー
慌ててAlterLinkを外す悠斗。身体から異常なまでの量の汗が流れ、自分の身体を咄嗟に確認した。だが、何も異変はなく、軽くジャンプしたり、するもやはりいつもの自分であった。
それよりも、何故か体力が柄著しく消費されているのか、少し動いただけで、息が荒くなった。
「はぁ、はぁ、何でこんなに疲れているんだ。俺」
普通にプレイしている分にはこんな事はありえない。こんな事は初めてであり、とても不思議な感覚だった。ともかく、一度ベッドに座り、息を落ち着かせた。
だが、机を見ると、Zackが鳴っていた。確認すると将呉からの連絡だった。
「お、おい将呉!!」
「悠斗大丈夫だったのか⁉︎それに今のライブ……」
「あぁ……話す事はいっぱいあるが、少し休憩をくれないか……」
悠斗の焦った言い方に、何かを察した将呉。
「……分かった、詳しい明日学校で聞くよ……」
「済まない……」
悠斗は申し訳なさそうに言い、電話を切った。そしてベッドへと横たわり、深い眠りについた。
炎の刻印がなんなのか、そして仮面の男の目的とは?多くの謎を残したまま、悠斗の奇妙な1日が終わった……だが、これは始まりに過ぎず、更なる戦いが明日から待っているのだった。
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