第三十四話 その頃の残念機構では

「まだ、あの機影の艦は見つからんのかっ!」


この怒鳴り散らしているのは、開拓機構の小隊長名をロバルという。


「本当に居たんですか? すぐ消えたって話ですし。何かの見間違いや幽霊でもみたんじゃないですか?」


「そこに居た事は間違いない、幽霊はレーダーに映る訳がないからな」


なるほどと、部下が顎に手を当てながら納得した。



「しかし、そんな変な飛び方する艦って事は正規品じゃないですよね。恐らくは野良の艦族の自作か改造品じゃないですか?」


「あの船はこちらの攻撃をすり抜けて、ワープまでしたんだぞ?。野良の艦族どもにそんな高度な技術があってたまるか!!」


そこが本題かぁと部下は苦笑いしながら、ロバルに苦言を呈した。


「本当だとしたら、凄い技術ですね。是非、艦族なんてやめてうちら開拓機構でその腕ふるってもらいたい位だわ」


ふんっ、と鼻を鳴らし。艦族どもは喜んで技術を提供すべきなんだといらだちを隠そうともしない。


そんな、ロバルをみて部下ははぁと溜息をついた。


(そんなんだから、うちは優秀な技術者に逃げられるんだよバカか)


そう思わずにはいられない、次の働き口が直ぐ見つけれるものや。独立できるような技術者は、基本宮仕えなんてしない。ましてや、革新的な技術をもつものは引く手数多だ。


結果として、役立たずや中抜き目的のゴミだけが大量にしがみついて。そのしがみついたもの達の重みで組織というのは沈んでいく。沈み始めた船からはそれを見てヤバいと思ったそこそこの人員が離脱し最後まで残るのは傲慢なロバルの様な人物や役立たず等と相場は決まっている。



技術屋とは技術で食っていけるレベルに達しているからこその技術屋であり、それを手に入れるのは安くはない。何故なら、技術とは積み上げや経験に勤勉で培うものだからである。そこには、少なからず費用も時間も発生しているので当然安売りなんかしない。


そうじて、どの様な分野でも高いレベルのものは自分で考えて追及する頭を持っている。だから、割に合わないと見限られる。


(全く、それでメンテナンスがやっとこさになってれば世話ないよなぁ。幾ら、そこそこの艦を多数所有しているからといって。最近では、グラントを宇宙生物にたかられて失うなんて。メンテナンスだけじゃなく、航路を読める人員もいないのかよこの組織は)


とは思っていても、自分がそんな所に抜擢されようモノなら仕事だけ増え給料は増えず。税金という名で没収されるのが判りきっているので、こうして上司のコバンザメをやりながら無能を装って日々無意味と判る仕事を出来るだけ長い時間をかけて行いつつ。離脱の機会をうかがっている有様だ。


俺も、艦族やりてぇなぁ。艦さえ手に入れりゃ登録だけだが、その自分の艦を持つというのは並大抵ではなく。大枚をはたくか、自作しかない。艦を自作するというのは、制御プログラムや回路やハードに武装ととにかく一人で会得できる訳が無い程多くの技術で間違いなく作らなければ空の流れ星となって消えてしまう。


だからこそ、艦を作る企業などは基本的に分野ごとに分業。

モブ達の様に、二人で何とかなる艦族など殆どこの宇宙には居ないのだ。



開拓機構は巨大組織特有の病に侵され、結果としてモラルもへったくれもない人間が大量に所属する事になるのである。

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