嫌いだったはずなのに。。。

すずりん

prologue

第1話 涼白愛莉の場合 

        —私、涼白愛莉すずしろ あいりは幼馴染の鐘白蒼唯かねしろ あおいが嫌いだ—


私たちが家族同士仲良くなったのは、まず家が隣同士で、どっちも名前に白が入っていること。私たちが保育園も同じところで趣味など共通点が多かったからだとお母さんが言っていた。

私は蒼唯と初めて出会ったとき女の子かと思って可愛がっていた。

蒼唯が私のお母さんと一緒にへたっぴだけど頑張って編み物をしていた時もあった。


「あおいちゃんへただけどがんばっててかわいい!」


「えへへ、あいりちゃんもいっしょにやろ~!」


初めてお泊まりに行ったとき一緒にお風呂に入ったとき自分に付いていないものが蒼唯にあったのを見たときに男の子と気づいた。


「うそぉ!あおいちゃん、おんなのこじゃないの!?」


「あいさつしたときにあいりちゃんにぼくおんなのこじゃないっていったよ!」


大きくなってもそんな可愛かったら、私と可愛い服着て遊びたいねと心の中で思った。

自分の家にあるぬいぐるみみたいなかわいさのインパクトであの時話を聞いてなかったんだと思う。

あの時までは仲が良かった。

今では蒼唯のこともあって鐘白家に長らく行っていない。行きたいけどとは思う。


何故私が蒼唯のことが嫌いになったのかは、何故かはっきり覚えてる。

それは、保育園の年長さんの時に遡る。


「あいりちゃん!いっしょにおままごとしよぉ!!」


そう言って蒼唯はニコッとかわいい笑顔で微笑んできた。


「うん!じゃあきょうは、わたしがおによめけいさつかんさんになって、うわきしたあおいちゃんをつかまえるね!」


「なにそれ、すごいおもしろそう!」


先生が私たちの会話を聞いて笑ってたから先生も混ぜて遊んだ。

そうやって色んなことをして私たちは保育園の日に楽しく遊んでいた。


ある時、蒼唯が他の女の子に誘われて砂場で遊んでいるのを見た。

その時何だか胸が痛かったのを今でも覚えている。


「あいりちゃんだいじょうぶ?」


「あおちゃんなんかここずきずきする」


胸の痛みを意識の外に置き、その日は蒼唯と女の子に混ぜてもらい遊んで終わった。

その出来事から次第に自分以外の男の子や女の子と蒼唯が話していたり遊んでいたりすると胸がまた痛くなりだした。

この胸の痛みは止むことなく、あまり蒼唯ともだんだん遊ばなくなっていた。


お母さんに相談したほうがいいのかもしれないと思う前に私は幼さ故にその胸の痛みに必ずいる蒼唯が原因と思って嫌いと定義してしまった。

これが私が蒼唯を嫌いになった理由になった。


蒼唯のことが嫌いになったあの日から私は蒼唯に対して冷たくなっていった。


「ねぇあいりちゃん。いっしょにいちりんしゃのろ?」


「あおいちゃんときょうはあそびたくないの!」


「そっか~。じゃあおはなししよ!」


「おはなしもしたくない!!」


突然の私の大声に蒼唯はビクッとして、


「わかった。おこらせてごめんなさい!またあしたあそぼうね!」


ニコッとしながら蒼唯はそう言って近くにいた男の子を誘って走っていった。


ちょっと悪いことしたかもと思って少し罪悪感が芽生えた。

違う日にまた蒼唯がめげずに遊びに誘ってきた。


蒼唯は私以外ともちゃんと仲がいい。わざわざなんで私を誘ってくるんだろう。

そう思いながらまた断り、次の日も次の日も断り続けた。


そしてあの出来事が起こる日になった。

一日に一回は遊ぼうと誘ってくる蒼唯に私は、


「わたしはもうあおいちゃんとあそばないから、はなしかけてこないで!」


そう素直に言った。


「ぼくのこときらいになっちゃったの?わるいところとかいやなとことかなおすからまたいっしょにあそぼ?」


「だからもうあおいちゃんとあそびたくないの!あっちいって!」


パシンッ!


気が付いたら蒼唯のほっぺをビンタしていた。


「ご、ごめ...んね。」


「・・・・・る」


驚いてうまく謝れなかった。

蒼唯の顔に涙が流れて顔が赤くなっている。

蒼唯が何か言っていたけどそれどころじゃなかった。


頭が真っ白になってその後のことは、迎えに来たお母さんに怒られたことしか覚えてない。

その夜お母さんとお父さんと蒼唯ママと蒼唯パパに謝りに行った。


「あおいちゃんを・・ぅぅきずつけちゃって・・・ごめんなさい・・ぐすっ」


「愛莉ちゃん!蒼唯は大丈夫だから元気だしてね。あとはい、これ今日作ったくまさんのぬいぐるみ!あげるふふ」


「愛莉ちゃん人からプレゼントされたらどうするのかな~」


「ありがと」


蒼唯ママは優しく許してくれたけど・・・


そんなこともあって、私は蒼唯と気まずくなって仲直りすることもなく、ただ嫌いというものが残った。


小中同じ学校を通ってもたまに同じクラスになったりしただけで、何も関係性が変わらないまま私たちは中学校を卒業し今月高校一年生になる。


この時はまだ、私のあの胸の痛みの理由と自分の本当の気持ちを知るなんて、蒼唯とまた仲良くなれると思ってもなかった。

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