第40話 やばすぎる!我慢の限界

 羽田空港に無事着陸した。遅れたからなのだろう、着陸してからバスで空港の建物に行くという事だった。そのアナウンスがあった時、前の座席の人が、

「バス!?」

と驚いた声を出していた。私にはこういう経験が何度かある。考えてみたら、札幌とか博多とか大阪とか、主要空港からの帰りにはなかったような気がする。徳島とか鳥取とか、利用者の少ない路線での帰りにバスになったような。ヨーロッパでもあったが。それにしても、今回は羽田の都合で遅れたのに、それでこんなに端っこに追いやるとか、米子を軽く扱っていないか?満席なのに。

 ずっと座っていたので、少しお腹が張っているような気がした。飛行機を降り、バスに乗り換え、空港の建物に入った直後、トイレの前を通ったので、トイレに寄った。そこで小を済ませると、張っていたお腹もすっきり。さっきまでのムカムカも治まった。気分が良くなり、荷物受け取りの場所へ行くと、ちょうどよく自分のスーツケースが出てきた。スムーズに空港を出て、電車に乗ろうと駅の方へ移動した。

 そこまでは良かったのだが、電車に乗って座っていると、急にお腹が痛くなってきた。これも、ずっと座っていてお腹が縮まっていたからだと思った。だったら立てばいいのだが、ちょっと迷った。もし、立っても治らなかった場合、この痛みに耐えながらずっと立っているのはつらい。それなら痛くても座っていた方がましだ。

 痛みは時々波が引き、また差し込んできた。乗っている時間は20分くらいで、その後乗り換えて1駅で家の最寄り駅だ。だから、何とかなると思っていた。

 ところが、痛みが治まってくると今度は催してきた。大の方だ。私は便秘気味なので、そうそう急激に催したりはしない。我慢していればすぐ治まると思って、気分を紛らわすために本を読んでいた。

 しかし、どんどん催す。もう本を読んでいる余裕はなくなり、片づけた。どうしようか。乗り換えの駅のトイレに行くか。でも、スーツケースを個室内に置けるくらいの広いトイレがあるだろうか。分からない。どうしよう……。

 いや、乗り換えまで待てない気がしてきた。手前の駅で降りて、トイレに行くか?いやでも、どうだろう。途中の小さい駅だと、改札を出てからしかトイレがない可能性もある。その場合、タクシーで帰るか?いやでも……やっぱり個室狭そうだな。

 かなり迷ったが、やはり途中で降りるのは辞めた。あと1駅で乗り換えだという時には、もういてもたってもいられず、立ち上がってドアのところへ行った。立ってウロウロしていれば治まるかと思ったのだ。意外にも治まらない。早く、早く着け!

 着いた。乗り換えの駅だ。だが、乗り換えればあと1駅なのだ。ここでトイレに行くよりも、家に駆け込んだ方がいいのではないか。電車もちょうどよく来るのだ。よし、次の電車に乗ってしまえ。ということで、乗り換えた。あと1駅、あと1駅。呪文のように頭の中で唱えながら、電車の扉の所に立っていた。駅に着いたら歩いて帰れるか?近くにマックがあるからそこのトイレ?いや、間に合わないか。駅のトイレか。駅のトイレ、汚いイメージがあるけど……。

 最寄り駅に着いた。脂汗が額に滲む。もうダメだ。たとえ個室が狭くても、スーツケースはその辺に放り出して、トイレに入ろう。空港やターミナル駅に比べたら、こっちは治安が悪くないという感覚もあった。スーツケースを転がし、エレベーターに乗るのももどかしく、改札を出た。トイレに駆け込む。

 幸い、個室が広かった!そうだった、最寄り駅のトイレなんて全然利用しないから忘れていたが、少し前に改修されてきれいになっていたのだ。しかも誰もいない。これで解放される!ありがとうトイレ!

 だが、あまり気分の良い結果ではなかった。いや、間に合ったのだ。幸い何も困った事にはならなかった。だが、思ったよりも良くない状態の大だったし、用を足し終わったのにすっきりしない。まだお腹が痛いし、そこに何かがあるような気がする。途中1人トイレに入ってきたようだが、空(す)いているし問題ない。個室を出るのにけっこう時間がかかってしまった。やれやれ。結局ちょっと下痢気味になってしまった。

 前回の一人旅の最後には、歩き過ぎて、疲れ過ぎて、腸が活発になり過ぎたのだった。病的な下痢ではなかったものの、しょっちゅう催して、家に帰ってからもそのまま翌日まで引きずった。今回は、そうならないように歩き過ぎないように気を付けていて、最後まであまり疲れなかった!下痢にもならなかった!と思っていたのに……やっぱり下痢か?

 でも、疲れたからではないと思う。甘い物の食べ過ぎか?いや、そうだ。冷えだ。あの、米子駅でベンチに座っていた、あの時の足の冷えだ。私は冷えに弱い。昔は冷えてお腹が痛くなったとしても、冷えた時に痛くなって、その時に対処すれば治った。けれども、40代になった辺りから、寒い思いをすると翌日とか、後になってお腹が下るようになってしまった。だから、対処が遅れるので酷くなるのだ。今回も、昼間の冷えが今来た可能性が高い。あーあ、今日は帰ってビールを飲みながら夕飯を食べようと思っていたのに。金曜日なのに。またダメか。

 それから、無事に家に帰りついたものの、家でも夜寝るまで、何度も大を催した。でも、もう出切ってしまって無いのだ。何も出ないのに、催すのだ。もう、何が何だか。正露丸を飲み、少しご飯を食べたが、食べるとすぐ催すので、当然酒はなし。荷物の片づけも最低限にして、寝た。最後はなんというか……後味最悪。

 どうすれば良かったのだろう。米子駅でもっと早く電車に乗れば良かったのだろうが、それでもしばらくは寒い思いをする羽目になった。着るものがいけなかったのだろうか。確かに、ウインドブレーカーにベスト、ヒートテックまで、上半身のためにはいろいろ防寒着を持って行ったのだが、足元の方はなかった。巻きスカートとか、もっと温かい冬物のズボンを持って行けば良かったのだろう。

 つい、暑い時には寒い場合の事が想像しにくい。夏なら、せいぜい長袖1枚持って行けばいいし、冬なら全力で暖かくすればいい。暑かったら脱げばいいから。でも、春や秋というのは毎日の寒暖差が激しいのだ。さほど寒くも暑くもなく、旅行には最適な時季である事は間違いないのだが、3日先の服装を考えるのが難しいのも事実だ。天気予報で天気や気温を見るだけでなく、風向きや風の強さも考慮して、かなり寒い事も想定して服を持って行かなくてはならない。

 今後の教訓としよう。

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