第31話 電車に間に合わん
3日目、最終日の朝。目覚めると寝癖がひどかった。これはよく眠れたという証拠かな?と、喜んでいる場合ではない。水で濡らしてヘアオイルをつけ、ドライヤーで乾かした。このヘアオイルは、つけてからドライヤーの熱を加えると、うねりや癖をまっすぐにしてくれるという魔法のような代物。いつもは髪を洗ってすぐにつけているので、癖がついていない状態だった。だから寝癖がつきにくい、くらいの認識だったが、今回ちゃんと本領を発揮していただいた。ちゃんと寝癖は直った。まあ、昨夜このオイルをつけてから乾かしたのに、結局寝癖がついてしまったわけだが。
寝癖を直し、着替えて、また本館のコンビニへ行った。今日は何となくおにぎりの気分だった。おにぎりを1つ選ぶのに結構時間を使ってしまった。結局“広島菜入りちりめん昆布”にした。ここは広島ではないけれど、東京と比べるとすごく近いので、何となく。ちなみにこのコンビニはポプラだ。それから、最近食べていないから食べたいなぁと常々思っていたモンブランを発見。それも買ってしまった。その2つを買い、別館フロント前にあるアメニティのところから、また梅昆布茶のスティックを1本取って、部屋に戻ってきた。
今日はおにぎりなので、梅昆布茶とマッチしていた。そして、コンビニスイーツとはいえ、久々のモンブランは美味しかった。けっこうお腹いっぱいだ。食べ終わると、いつもの朝と同じようにSNSのチェックをした。朝ごはんを食べてから、のんびり座っていれば朝のお通じがやって来ると思ったのだが、いつまで経っても催さないので、朝便は諦めた。ま、私はだいたい便秘気味で、毎日出るわけではない。お腹いっぱい食べていれば毎日出るのだが、太るのを気にして控えめにすると規則正しくいかない。腹八分目が健康に良いと言うが、腸の健康という点で言えば、本当は十分食べた方が良い気がする。私にとっては。
諦めたのはいいが、気が付けばけっこうな時間になっていた。今日は安来市にある足立美術館に行く予定だった。そして割と早めの飛行機に乗って東京へ帰るのだ。今日は終わりが決まっているから、あまりのんびりもしていられない。
安来へ行くには松江駅からJR線に乗る。電車の時間は9:28だという事は調べておいたのだが、気づけは8時半頃になっている。まだ化粧もしていないし、スーツケースは開きっぱなしだ。これは間に合わないのではないか。それで、その次の電車の時間を調べてみた。そうしたら、なんと10:40だった。1時間以上ないとは!これはまずい。絶対に9:28に乗らなければ。
急に焦りだした。化粧をし、そういった化粧道具やら充電コードやら、昨日おとといの服、買ったお土産などなどをスーツケースに詰めた。忘れずに冷蔵庫に入れておいたお土産も。何とか9時頃に支度が終了し、部屋を出た。
チェックアウトをした。自動チェックアウト機がいくつもあるのだが、ホテルマンが待ち構えていて、私からカードキーを受け取ると、機械に入れてくれた。自動チェックアウト機の意味は……。いや、きっとサラリーマンのチェックアウトラッシュ時には活躍するのだろう。慣れている人はさっさと自分でできるのだろう。私は見るからに慣れていなさそうだったか?で、機械にカードを入れてもらったら、支払金額が表示されたので、クレジットカードを入れて清算した。昨夜のレストラン代だ。これでチェックアウトは終了だった。私は、
「松江駅まで、バスでどのくらいかかりますか?」
と聞いてみた。すると、ホテルマンは10分くらいだと言う。ほっとしたのだが、
「ただいま、時刻表をお持ちしますね。」
と言って引っ込んだホテルマン。紙を手に戻ってきたホテルマンの、次の一言に打ちのめされた。
「次のバスは、9:27です。」
なーにー!?それでは電車に間に合わないではないか。それに乗って行ったら、次の電車を1時間くらい待つことになるではないか。というか、今9:00頃で、次が27分って、一体どういう事だ。30分あればレイクラインだって来るのに。朝だぞ。通勤時間には少し遅いかもしれないが、それでも9時半出社の人だっているだろうよ。
……いや、それは自分が普段住んでいる場所での常識だ。つい、バスでも電車でも、10分か15分で来ると思ってしまう。その感覚で、間に合うと思ってしまったのだ。まあ、昨日のうちにバスの時間を聞いておけばよかったのだが、こうなっては仕方がない。
「それだと電車に間に合わないので、タクシーにします。」
と、私は言った。タクシーがあまり好きではない私ではあるが、夫からいつも「無理せずタクシーを使いなさい」と言われているし、今回も家を出る際に「くれぐれも無理しないでね」と言われている。うん、今はタクシーだ。その時だ。
そして、ホテルマンはタクシーを呼んでくれた。タクシーは5分くらいで来て、10分くらいの乗車で松江駅に着いた。つまり、9:20頃に着いたのだ。ちょうど良い時間だった。タクシー代は1010円かかってしまった。例のパーフェクトチケットは、今日もバスに乗ればギリギリ元が取れるかどうかという所だったのだが、元が取れるどころか余計に千円かかってしまった。でもまあ、いちいち乗車券を買わずに済んだと思えばいいか。
松江駅に入ると、改札前にお土産屋さんがあった。ちらっと目に入ったのが、甘えびを殻ごと乾燥させた食べ物。お菓子というか。これ、実家の両親に良さそうだ。魚介類が好きだし、カルシウムも取れるし、2人とも歯は丈夫だし。というわけで、さっと買ってスーツケースの中にねじ込んで、改札口を通った。ああ、JRはスイカが使えて便利だ。
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